第5話『球技大会の結果』
それからも、俺は西山と一緒にサッカーの試合に出場し、時間が合う限り、優奈と井上さんと佐伯さんが出場する女子バスケットボールやクラスメイト達の試合を応援していった。また、昼休みには優奈が作ってくれた美味しいお弁当を食べてパワーを付けて。
男子サッカーは順調に勝ち進んだが、準決勝でサッカー部の部員が複数人いる3年生のクラスと戦い、1対2で敗北。決勝には進めず、去年と同じく3位決定戦に廻ることに。
去年は3位決定戦でも敗北してベスト4に終わった。今年も去年と同じく連敗では終わりたくないし、何よりも過去最高の結果を出そうという目標がある。だから、俺達は全力で3位決定戦に臨んだ。
相手のクラスは3年5組で、西山と同じくミッドフィルダーを担当するサッカー部員が1人いる。なかなか強い。
優奈達の応援を受けながら、俺達3年2組は3位決定戦を戦い抜き――。
「男子サッカー3位決定戦は、2対1で3年2組の勝利!」
3位決定戦で勝利を収め、これまでで最高の3位という結果を掴み取ることができた!
「やったぞ、長瀬!」
「ああ! 3位になれたな!」
――パンッ!
試合が終わって、西山と俺は右手で全力のハイタッチを交わした。
「和真君、西山君、みなさん3位おめでとうございます!」
「3位凄いよ! おめでとう!」
「凄いわね! あっぱれだわ!」
「サッカーが3位になって先生嬉しいよ! おめでとう!」
「3年2組はサッカーも強いね! おめでとう!」
優奈、佐伯さん、井上さん、渡辺先生、百瀬先生はもちろんのこと、応援しに来てくれた多くのクラスメイトや生徒が祝福の言葉を送ってくれた。そのことがとても嬉しい。
「よーし! 男子サッカーに続いて、あたし達も3位決定戦頑張らないとね!」
佐伯さんがやる気に満ちた様子で言うと、佐伯さんと一緒にいる優奈、井上さん、菊池さん、吉田さんの女子バスケットボールのメンバーは元気良く頷いていた。
そう、女子バスケットボールも順調に勝ち進んだが、準決勝で惜敗してしまい、3位決定戦に廻ったのだ。
優奈、佐伯さん、井上さんにとって過去最高はベスト8だったので、準決勝に進出したときに大喜びしていた。ただ、準決勝で負けたときにはちょっとがっかりした様子になっていた。だから、彼女達に元気を与えられたようで良かった。
男子サッカーの3位決定戦が終わってすぐに、女子バスケットボールの3位決定戦が実施された。相手は3年1組だ。
同じ3年生だし、準決勝まで進んだクラスなので3年1組は結構強い。序盤はシーソーゲームとなる。
奮闘しているうちのクラスを、西山や渡辺先生や百瀬先生達と一緒に応援していく。
時間が経っていく中で、さすがはバスケ部な佐伯さんと、胸を堪能して覚醒している井上さんが安定してシュートを決めたり、優奈、菊池さん、吉田さんが相手の攻撃を止めたりすることで相手を少しずつ離していき、
「そこまで! 3位決定戦は18対10で3年2組の勝利です!」
うちのクラスが勝利し、女子バスケットボールも3位になることができた!
「やった! 3位になれたよ!」
「勝って終われましたね! 嬉しいです!」
「3位になれて嬉しいわ!」
「3位嬉しい!」
「勝てて良かった!」
佐伯さん、優奈、井上さんはもちろん、菊池さんと吉田さんも喜びの声を上げてみんなで抱きしめ合っていた。その様子を見るとこっちも嬉しい気持ちになるよ。特に優奈の笑顔を見ると。
「おおっ、女バスも3位になったぞ! やったぜ! おめでとう!」
「みんな3位おめでとう!」
「みんなおめでとう! 女バスも3位になって先生はとても嬉しいよ!」
「3年2組おめでとう!」
西山、俺、渡辺先生、百瀬先生は女バスのメンバーに祝福の言葉を送った。他にも、うちのクラスメイトや女バスメンバーの友人、あとは有名人の優奈が出ているので優奈のファンも。
女バスのメンバーは嬉しそうな様子でこちらを向いて、
『ありがとうございました!』
と満面の笑顔でお礼を言い、深く頭を下げた。
過去最高の順位まで勝ち進むという俺達5人の目標が達成できて本当に良かった。高校最後の球技大会にこういう結果を掴み取れたことをとても嬉しく思う。
なお、男子サッカーと女子バスケットボールの第3位が、うちのクラスにとっての最高結果となった。
球技大会の全競技の全試合が終了した後、閉会式が行なわれる。開会式と同じくテレビ中継の形で。
閉会式では各競技の第1位から第3位まで賞状が渡される。サッカー、バスケットボール、ドッジボールについてはクラスの代表者が、卓球については生徒が賞状を受け取るために中継場所になっている放送室に赴いた。
うちのクラスは男子サッカーと女子バスケットボールで第3位になった。なので、男子サッカーの代表者として西山が、女子バスケットボールの代表者として佐伯さんが放送室へと向かった。
『男子サッカー第3位、3年2組。おめでとう』
『ありがとうございます!』
『女子バスケットボール第3位、3年2組。おめでとう』
『ありがとうございますっ!』
西山も佐伯さんもとても嬉しそうな様子で賞状を受け取っていた。その際、教室内は拍手喝采だった。
あと、校内放送だけど、賞状を受け取った西山をテレビで観ると、凄い結果を残せたのだなと思えた。
全競技について賞状を渡し終えると、閉会式はほどなくして終了した。こうして、高校生活最後の球技大会は幕を下ろした。
閉会式が終わってから2、3分ほどで、賞状を受け取った西山と佐伯さんが教室に戻ってきた。
「西山君、千尋ちゃん、賞状の受け取りお疲れ様。……閉会式が終わったから、あとは終礼だけだけど、ちょっと待っててね。みんな教室にいてね」
渡辺先生はそう言うと教室を出て行った。
残りは終礼だけなのに、なぜ渡辺先生は一旦教室を出たのか。去年の担任も先生だったので、理由におおよその見当がついている。俺の隣に座っている優奈も同じように考えているのかニコッと笑っていて。優奈は1年生のときの担任が先生だったからな。
「男子サッカーに出たみんな。せっかく賞状をもらったし、3位になった記念に写真を撮らないか? みんなで掴み取った3位だからさ」
「女子バスケットボールのみんなもどう? 理由は西山が言ったことと同じだよ」
3位になった記念の写真か。写真という形に残すのはいいことだと思う。あと、今後、写真を見れば今日の球技大会のことを思い出せるだろうから。
「俺はいいと思うぞ」
「私も賛成です」
「私も賛成」
俺、優奈、井上さんが賛成の意を示した。一緒にいることが多い俺達3人が賛成したからか、西山と佐伯さんは嬉しそうだ。
また、その後も男子サッカーのメンバーも女子バスケットボールのメンバーも賛成したため、写真を撮ることになった。
まずは女子バスケットボール、次に男子サッカー、そして2競技に出場したみんなで撮影することに。撮影は女子ドッジボールに出場していたクラス委員長・舞川那月さんがしてくれることに。
女子バスケットボールのメンバーが黒板の前に集まったところで優奈が、
「あの、何の記念で写真を撮ったのか分かるように、黒板に3位になったのを書くのはどうでしょうか」
と提案した。確かに、3位になったことを書けば、何の写真なのか分かりやすくていいだろう。
優奈の提案にみんな賛成したので、優奈が黒板の上の方に『3年2組 女子バスケットボール&男子サッカー第3位!』と書いた。大きくて綺麗な文字だから、写真にはっきりと写るだろう。
黒板に文字を書き終わったところで、女子バスケットボールのメンバーは賞状をもらった佐伯さんを真ん中にして並ぶ。並び順は菊池さん、井上さん、佐伯さん、優奈、吉田さん。佐伯さんが賞状を持っている。
「はーい、女バスのみんな撮るよー」
舞川さんがそう言い、スマホで撮影した。その際、みんな笑顔でピースサインしていた。きっと可愛く撮影できているだろう。
ちゃんと撮ることができたので、今度は男子サッカーに出場したメンバーで撮ることに。
女子バスケットボールのときに倣って、賞状をもらった西山を真ん中に立たせる。俺は西山の横に立った。
「はーい、男子サッカーのみんな撮るよー」
舞川さんがそう言い、俺達のことを撮影してくれた。
舞川さんはスマホを持ってきて、今撮影した写真が映った画面を見せてくれた。みんないい笑顔になっているし、優奈が黒板に書いた文字も見えるしいい写真だ。男子サッカーのみんなでOKを出した。
女バスメンバーと一緒にも写真を撮影するので、女バスメンバーが再び黒板の前までやってくる。
賞状をもらった西山と佐伯さんを、賞状を持たせた状態で真ん中に立ってもらう。西山の隣に俺が立ち、俺の隣に優奈が立って優奈と手を繋いだ。また、井上さんは佐伯さんの隣に立った。
「うん、みんな画面に収まってるね。じゃあ、撮るよー」
舞川さんがそう言って、俺達のことを撮影してくれた。
舞川さんはスマホを持ってきて、今撮影した写真で大丈夫かどうか訊いてくる。
スマホに写っている写真を見ると……みんないい笑顔で写っているな。優奈の笑顔は特にいい。ピースサインをしているから本当に可愛い。あと、優奈と俺が繋いでいる手も写っているのもいいな。
それと、優奈、俺、西山、佐伯さん、井上さんと一緒にいることが多いメンバーが並んで写っているのもいい。
「とってもいい写真ですね!」
「そうだな、優奈。本当にいい写真だ」
俺がそう言うと、優奈は俺にニコッと笑いかけてくれる。そのことにキュンとなると同時に心がとても温まる。
西山、佐伯さん、井上さん達もみんなOKを出した。
「じゃあ、今撮った写真はクラスのグループLIMEに上げておくね」
舞川さんは快活な笑顔でそう言った。
舞川さんが撮ってくれた写真はプリントアウトして、引っ越しの際に実家から持ってきたアルバムに貼ろうかな。高校生活でのいい思い出の一つになったから。




