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【完結!!】黒髪元気ヒロインを救ったのはボッチ陰キャでした  作者: 夜空 叶ト
君に命が戻るなら

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再会

何を話そうか。

どんなことを伝えよう。

俺の頭の中にはそんな思考がずっと渦を巻いていた。


涼葉に会いたかった。

俺の意識がこの体に宿ってからずっと。

触れたいと思っていたし話したいとも思った。

だが、今の今までそれが叶うことは無かった。

理由は簡単。

この体の主導権は俺のものではなかったしこの世界の俺は涼葉のことを知りもしない。

それに、もしこの体が意のままに動かせたとして彼女が俺の存在を忘れていたら、

覚えていなかったら、

そんなもしもが浮かんできて体が動いても俺が涼葉に会いに行くかどうかは怪しかった。


でも、今は違う。

涼葉は俺のことを覚えていたし今の体の主導権は俺にある。

だから、俺は涼葉をこの木の下に呼び出した。


俺が死んだ木の下で。

俺は彼女が来るのを待っていた。


…………………………………………………………………………………………………


「お待たせ。一君!」


ずっと聞きたかった声が聞こえてきた。

透き通るような美しい声が後ろから聞こえてくる。

やっと話せる。


俺は振り返って言った。


「全然待ってないよ。”涼葉”」


「え、、」


ああ、やっぱり涼葉のこういう所は変わらないんだな。

驚いたり困ったりするとすぐに固まる。


「一君なの?」


「俺はいつだって陰野一だよ。」


「そういう意味じゃなくて。」


「ごめんごめん。揶揄うつもりはなかったんだけど。」


「絶対嘘だぁ~」


そう言う涼葉は”この世界の俺”に向けていた笑みより一層明るく笑った。


「ただいま。涼葉。」


「お帰り。一君!」


そうして俺たちはしばらくの間抱き合っていた。

今まで会えなかった時間を埋めるかのように。

お互いが、生きていることを確かめ合うかのように。


…………………………………………………………………………………………………


「この前会いに行った時のは演技だったの?」


「いや、全然違うな。意識はあったんだが、まあいろいろあったんだよ。」


「何それ。まあいいけどさ。」


「ねえ、一君。」


「ん?」


「もう絶対どこにもいかないでよね。」


「それは約束できないかも。」


苦笑しながらそういうとおなかを小突かれた。

こういうことをしている涼葉を見るのも久しぶりだ。

あらゆる動作が愛おしく思える。


「なんでそんなこと言うの!」


「ごめんって。できる限り努力するよ。」


「だめ!絶対いなくならないで。」


ここは了承しないと一生話が進みそうになかったためうなずくことにした。


「ずっと君に言いたかったことがあったんだ。」


「なに?」


「ごめん。病気のこと黙ってて。」


静寂があたりを支配する。

俺は涼葉が口を開くのを待つことしかできない。

そして、数秒後彼女の口が開いた。


「いいよ。多分私たちのことを気遣ってのことだと思うし。」


「ほんとにごめん。」


「だから、謝らなくてもいいって。でも一つだけ聞かせて。あの時私の告白を断ったのは病気があったせい?それとも、私のことが嫌いだったりするのかな?」


少し不安そうに涼葉は一に問い掛ける。


「そんなわけないよ。君から告白されたときは本当にうれしかった。でも、あそこで君と付き合っても俺はすぐに死んでしまう。だから断ったんだ。ごめん。」


「いいよ。じゃあ、お詫びとして今の一君が私のことをどう思ってるか教えてもらってもいい?」


「それはずるくないか?」


「ずるくなんかないよ。でも、いってほしいなぁ~って。」


「わかったよ。言うよ。俺も言うつもりだっし。」


「月風涼葉さん。あなたのことが好きです。俺と付き合ってください。」


俺は目の前にいる最も愛しい女性に言った。


「こちらこそよろしくお願いします。」


そういって俺たちは再び抱き合った。

今回は一度目よりも長くそして強く。


今思い返せば俺たちはかなり変な人生を歩んでいると思う。

初めて会ったあの時からここまで来るのにかなり長かったように感じる。

楽しいことも辛いことも悲しいこともいろいろあった。

ここまで来るのに二回ほど刺されたし、一度は最愛の人からの告白を断ったことだってあった。

何なら普通の人は絶対に体験できない死を味わったりもした。

こんな長く厳しい道のりを歩み続けた果てに俺と涼葉はやっと付き合うことができた。


だが、こうして次元を超える恋愛をしたからこそ、俺はこれから先涼葉を一生大切にしようと思えたしきっと大切にするんだと思う。

俺達が経験したことはこの世界では大したことないのかもしれない。

ほとんどの人にとってはどうでもいいことなのかもしれない。

でも、確かにこの体験は俺と涼葉の世界を変えたのだった。


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