善人?
次の日からさっそく俺は行動を始めた。
大学で知り合いなどから谷山太陽のことを聞いて回った。
話を聞けば聞くほど彼がストーカーであるとは考えられなかった。
聞いた話によれば、彼はテニスサークルに所属していて、テニスは相当うまいらしい。
女性からもかなりモテているらしいが現在彼女などはいないらしい。
高校からの友達の話を聞いたが彼に悪いうわさが流れたことは無かったようだ。
なんら怪しいところはなく彼が善良な人間であるということが分かっただけだ。
本当に彼はストーカーなのだろうか?
今のところ彼はそのようなことをする人間ではないのではないかと思う。
だが、こんなにも彼が善人である話を聞いても何故だか俺は彼が怪しいと思ってしまう。
いや、思わないといけない。
本能のようなものが警鐘を鳴らしている。
もしかしたら”俺”が何かを伝えようとしているのかもしれない。
だが、彼の声は聞こえない。
俺は絶対に柚木を守らなければならない。
そのために俺は何をすればいいのだろうか?
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俺は柚木の話を聞いて絶句した。
考えたくもない。
もし、あいつが犯人なのだとしたら相当に厄介なことになる。
「なんで、あいつが、、、」
真っ白な空間で俺は一人呟いた。
だとしても、なんで涼葉ではなく柚木になった?
あっちの次元では涼葉に付きまとっていたはずなのに。
こっちの次元では柚木がターゲットになった。
そして、柚木が告白を断ってしまった今、高確率で逆恨みしているはずだ。
俺の知るあいつならそうに違いない。
俺は実際あいつに二回も刺されている。
このままじゃ柚木か隆介か俺が刺されてしまうのかもしれない。
そんな結末は何としてでも避けたいものだが今の俺はもうこいつに干渉できない
こいつが自身の手で解決するまでは干渉することができなくなってしまった。
こんなことになるのならあの時に代わっておけばよかった。
「こうなったら、こいつが何とかしてくれることを願うしかないか。」
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あれから一週間が経過したが谷山太陽がストーカーをしそうな人間ではないということが分かっただけだった。
「本当に彼がストーカーの正体だったのか?」
そんな疑問が頭の中を駆け回る。
だが、答えは出ない。
俺達ができることは柚木を守ることだけになってしまった。
だが、その難易度はとてつもなく高いだろう。
実際ストーカー被害は後手の回ることが多いためその対策をするのは相当にしんどいことだと思う。
「これは、かなり不味いかもな。」
俺がそんなことを呟きながら歩いているとポケットに入っていたスマホが震える。
俺はスマホを取り出しその画面には隆介の名前が表示されている。
電話にでる。
すると…………………………




