【作品紹介026】最後の王子と九人の影武者たち
今回から「どのような物語か」を説明するパートを設けました。
前回のあとがきで、「冒険や戦闘に力を入れている作品とのご縁が少なくなったと感じているので、次回はその埋め合わせができるような作品を探してみようと思います」と書きました。その際、実は有力候補はすでに見つけていました。
『冒険者アル -あいつの魔法はおかしい』という作品なのですが、これが何と紹介記事を書く直前にランキングに打ち上がってハイファン部門の日間ランキングで1位になったのでした。連載開始直後の8話ぐらいから追っていた作品で、話数がそこそこ溜まってから紹介しようとしていたのですが、その策が裏目に出たというわけです。結果、本当に宣言通り1から作品を探す羽目になり、次の更新まで1ヶ月以上経過してしまった次第。
そんな紆余曲折を経て出会ったのが、今回紹介する『最後の王子と九人の影武者たち』です。前々回の記事で紹介した作品のタイトルにも影武者というワードが入っていましたが、今回の作品はそれとは趣が大きく異なり、個としての強さが問われる作品となっています。
■この作品をどうやって見つけたのか?
ハイファンジャンルで去年の後半から今年にかけて連載を開始した作品のうち、総合ポイントが500以下という条件で検索して見つけました。最近は、1話あたりの文字数が少ない作品が増えているように感じているのですが、個人的には1話2000文字未満の作品はあまり良い思い出がなく、欲を言えば3000文字以上は欲しいと思い、目検で文字数の低い作品は弾きました。結果残った作品のうち、1話あたりの文字数が4000字を超え、タイトルとあらすじにもこだわりの感じられる本作にたどり着きました。
■見つけた時のステータスは?
2022年の9月から連載されて、4月現在でブクマ70、評価224なのでなかなかの埋もれ具合と言えそうです。実はこの作者さんは、過去に『勇者の剣の〈贋作〉をつかまされた男の話』という素晴らしい作品を書き上げてハイファンランキング1位を獲得し書籍化のご経験もある方です。
そういう方は、新作投稿時にも一定ポイントが入って総合ランキング入りを果たすことがしばしばあります。しかし本作は残念ながらそうならなかったようで、開始当初から埋もれていたと思われます。
■どのような物語か?
最新話である第25部まで読んだ上での物語の概要です。
主人公は少年の身でありながら大人顔負けの知性と戦闘センスを持つ麒麟児です。しかし両親を厄災で早くに亡くし、身寄りがなくなった彼は過酷な状況に身をやつします。明日生きるためには人を殺すことにも躊躇しない昏い日々。しかしある時、「厄災を退ける王子の影武者」候補を探す男と出会います。
この世界では周期的に発生する厄災が存在しますが人々は恐れてはいません。なせなら、毎回その厄災を退ける「王子」という拠り所があるから。しかし、その「王子」の役割を担うのは王子本人ではなく数人の影武者だったのです。
男は主人公のうちに才を見出し、影武者を養成する学校へと誘います。
そこで初めて人間らしい生き方を学び、仲間を得て、己の振る舞いを見つめ直し、影武者として戦う目的を見出し、真の麒麟児として頭角を顕していくことに。いつの日か影武者ではなく本物の王子さえも超える存在となるために…
■この作品のどこが自分に刺さったのか?
主人公が苗木学級に入ったことをきっかけに、学友とともに人として成長していく展開が刺さりました。最初は反発もあるのですが、徐々にお互いを理解しあって信頼が生まれていく様子がとても丁寧に描かれています。そして、それを土台としていよいよ六面体祭というイベントで彼らが輝くわけです。まだそのエピソードは前半が終わったところで後半はこれから描かれますが、楽しみで仕方ありせん。また世界観が非常に独創的な点も個人的には好みです。
■どんな人に読んで欲しいか?
世界観にこだわりがあるファンタジーらしいファンタジーをお探しの方には、読んでもらいたいです。文庫1冊じっくり読んでその世界に浸るようなタイプだと更に良いかと。あとは最近話題となっていた『誰が勇者を殺したか』のような凝ったストーリーの構造自体を楽しめる方にも良いと思います。元々あれ読んでた時には、書店ゾンビさんの『勇者の剣の〈贋作〉をつかまされた男の話』を思い浮かべたほどで、本作もそういう雰囲気があります。
■ざっくり評価
9.0
■テンプレ要素
なし
■作品成分
成長 50%
成り上がり 20%
友情 30%
■更新頻度
週1回程度の更新
■URL
https://book1.adouzi.eu.org/n0511hv/




