表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
20/94

19 休み明け、王子様と出会いました


 リーナの家に泊まった次の日。ドリスはリーナと一緒に、寮へ戻った。


「あっという間でしたわ。あ~……王城行きたくない」

「次の休みから?」

「しばらく大丈夫ではあるんだけれど。王族の心得を永遠に語られるのは、嫌気がさすでしょう?」

「よかった! 婚約者が王子じゃなくて!」

「いないくせに~!!」

「いない方が気楽じゃない?」

「そう言っているのは、ドリスだけですからね! 私なんて……はぁ」

「この場合、上位貴族じゃなくてよかった! かな?」


 すると、リーナがドリスの方を向いて、淑女の微笑みを見せた。


「階段上るの頑張ってね! 下位貴族さん!」

「あぁ!? この後、最上階まで上るんだった!!」


 ドリスが、初めて友人の家に泊まりに行き、楽しかった休みが終わった次の日。

 事件が起こった。





 放課後。ドリスはリーナと一緒に、寮に戻るために、階段を下っていた。

 なぜか、一階から二階へ続く階段だけ、段の数が多かった。

 そこを二人で、二階から一階へ降りようとした時だ。


 ドン!


「え?」


 ドリスは、誰かから背中を押され、真っ逆さまに落ちて行く。

 後ろを向こうとした時、リーナが落ちている姿が見えた。

 このままでは、二人とも大けがかもしくは……そう頭をよぎったその時……


「ジン!」


 誰かがそう叫んだ瞬間。


 フワッ


 身体が見えない何かに持ち上げられながら、ゆっくりと地面に向かっていく。隣を見ると、リーナも同じだった。

 お互い目を合わせると……「何で?」という表情になる。

 2人の足が地面に着くと、誰かいることに気付いた。


「大丈夫?」


 黒髪に緑の瞳、中性顔の美少年が、駆け寄って来た。


「あ……はい」


 ドリスはなんとか答えることが出来た。

 はっ! と階段の上を見ると、案の定誰もいなかった。


「……押したのは、男の方でしたわね」


 そう言ったのは、リーナだ。


「見えたの?」

「顔は分かりませんが、後ろ姿ががっしりしているのが見えましたから……」

「私が来た時は誰もいなかったよ」


 あ! と気付いて振り向くと、リーナは何かに気付き、淑女の礼をとった。


「お助け頂き、感謝致します。アンディ殿下」

「あ……ありがとうございました」


 その美少年は、ワシュー国の第二王子、アンディ殿下だったのだ。





「驚いたよ。ジンが慌てるから、行ったら二人が落ちて来るんだもの」

「ジン?」

「あぁ! 私の精霊だよ。今の君らには視えないだろうね」

 

 そう言って、アンディは何も無いところを見上げた。


 そこに、憧れの精霊がいるんだ。


 ドリスはつい、ついポーッとしてしまった。

 恋愛ではない。

 羨ましいと言う気持ちでアンディを見ていた。


「君らには上位の精霊が憑いているからね。ジンが気になっていたのだよ」

「え!? 私に? 精霊が!?」


 ドリスは思わず、声を大にして言ってしまった。


「ドリス!」

「あ……申し訳ございません」


 リーナに諌められると、それを見たアンディは、笑顔になった。


「いいよ。この国の人は視えないからね。仕方ないよ」


 そう言った後、駆け足で、黒髪に琥珀色の瞳を持った、すらりと背が高めの男が到着した。


「アンディ様! 何ですかいきなり! 走り出すなんて……一体何があったのです?」


 アンディの侍従と思われる男は、きょとんとした顔で立っていた。


「あぁ、リコか。彼女達が階段から降って来てね。ジンに助けてもらったんだ」

「そうでしたか……あ! 私は、リコと申します。アンディ殿下の侍従をやっております」

「ブローン公爵が次女、アンジェリーナ・ブローンと申します」

「アルベルツ子爵が三女、ドリス・アルベルツと申します」

「あぁ! 彼女達が例の……」

「例って……?」

「あ……」


 リコが固まると、アンディが助け舟を出した。


「さっき、君らに上位の精霊が憑いてるっていったろ? 結構目立っていたから、リコと例の二人組って言っていたんだ。気分が悪かったらごめんね」

「いえ、全然」

「大丈夫です」

「それは良かった」

「あ! お嬢様方は、階段から落ちられたのでしたね!? 怪我はありませんか?」

「平気です」

「では、このことを教師に申し伝えねばなりません」

「そうだな。一緒に行こうか」


 皆で職員室に行こうとしたその時……


「あの!」


 ドリスがそれを止めた。そして……


「不躾で大変申し訳無いのですが……私に、精霊を視る方法を教えて頂けませんか?」

「え?」


 その場の誰もが固まった。






「ん~……それは、どうして?」

「あの……私、小さな頃から精霊に憧れていて、もし視えたら友人になりたいと思っていました。それで精霊を視るには、祈ることが必要と言うことを知り、小さな頃から続けておりますが、一向に視える気配がないのです。なので、教えを請いたいのです!」


 ドリスは、思いの丈をアンディにぶつけた。


「……なるほど。けれど、本当にそれだけなのかな? 精霊が視えるってことは、その精霊が使える魔法を君も使えるということでもある。それは君が武器を手に入れるのと、同じことなんだよ。それでも?」


 アンディは、威圧を込めた瞳でドリスを見た。

 ドリスは、少し戸惑いながら答えた。


「……友人になることしか、考えていませんでした」


 すると、少し斜め上を視て、アンディは笑みを浮かべた。


「……それは、本当のようだね」

「分かるのですか?」

「ジンに教えてもらったんだ。彼は風の精霊だから、人の噂話や、その人の人となりを知ることが出来る」

「へぇ……」

「それに、君の精霊も本当だって言っているし、君と友人になりたいみたいだ」


 風の精霊ってそんなことも出来るんだぁ……と知ると同時に、ドリスの精霊も同じ思いなことに感激する。


「少なくとも、私の一存では出来ない。それに、王子の私に学ぼうだなんて、図々しいと思わない?」

「それは……思います」

「思うんだ。……てっきりそんなことも分からない馬鹿かと思ったよ」

「うっ」

「じゃぁ条件を出そう。もうすぐ、中間試験があるよね? そこで私よりも上の成績を取ったら、父に進言しよう。……まぁそれには、君の保護者の了解と、ロザリファ王の了解が必要だけどね」

「殿下より、上の成績であればいいのですね?」

「そうだよ」

「受けます」

「……君、世間知らずとか言われない?」

「たまに言われます」

「まぁいいや。とにかく、職員室に行こう」


 そしてドリスとリーナが階段から誰かに落とされ、アンディ王子に救われた件は、瞬く間に噂となって広がった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ