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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
18/94

17 ブローン邸のお泊まり会に誘われました(前)


 今週末、実家に帰れなくなったドリスは、寮でじっとしていることにする……予定だった。

 ところが朝、たまたま会ったアンジェリーナから、こんな提案をされた。


「ねぇ! 今週末暇なら、うちに来ない?」

「でも、公爵邸でしょ? 私、下位貴族。分かってる?」

「もちろんよ! 家族に手紙で話したら、いつでも来て良いですって」

「リーナの用事はないの?」

「うん、しばらくは大丈夫」

「……手紙で家族に聞いてからね。一応謹慎のつもりだからさ」

「そうね。罰にならないかもしれないものね」


 ドリスは、勝手に一人で街に行ったことを咎められ、実家に帰れなくなったのだ。友人の家に泊まりに行くとなれば、罰にならない。

 たぶん却下されるだろうと思いながら、ドリスは家族の許可を取った。






「どうだった?」


 後日リーナが聞くと、ドリスは少し惚けた顔をしながらリーナに向いた。


「お許しが出た」

「本当!? よかったぁ」

「うん。リーナにも、いい気分転換になるんじゃないかって書いてあったのだけど……どういうことか分からなくて」

「……それについては、家に来た時に話すわ。それよりドリスのご家族って、王城勤めの方がいるのかしら?」

「父は騎士団長をしているよ」

「だからね。騎士の人なら、私のことを知っているから」

「そうなんだ」


 その時ドリスには何のことか、分からなかった。






 お泊まり会当日。ドリスはリーナと一緒に、ブローン家の馬車でブローン邸に向かうことになった。


「ブローン公爵邸っていうと、高級住宅街の中でも、王城に近い所にあるよね?」

「そうよ。お祖父様が王族だったから、出来るだけ近い所を探していたら、そこしかなかったの」

「私、そっち方面行くの初めてだから、緊張しちゃって……」

「まぁ……そうなの? ブレンターノ伯爵邸もこの並びじゃなかったかしら?」

「奥の方は初めてなの! 本当にお邪魔して良かったの?」

「私が良いって言っているのだから、良いに決まってるわ!」






 そんなことを話しているうちに、公爵邸に着いた。馬車から降りると、お出迎えの執事や侍女が待っていた。


「お帰りなさいませ、アンジェリーナ様。そして、ようこそ、ドリス様」


 そう言ったのは、真ん中に立っていた老執事だった。





 老執事の案内で中に入ると、とても豪華な作りで、一瞬教会かと思ったほどだった。

 天井には空と雲が描かれ、よく見ると所々に、天使が見え隠れしている。窓はステンドクラス。

 全体的には、白い基調の石造りっぽくなっていた。よく見ると、木に白い塗料を塗ってあるところもある。


 ドリスの部屋は、客室だったが、一番リーナの部屋から近い部屋だった。


「同室で寝るって言ったのだけれど、周りが許してくれなかったの」

「そんなに広いベッドなの?」

「大人三人くらい寝られるわ」

「え!? 豪華過ぎる」


 その話を聞き、思った通り客室も豪華だった。広さは、実家のドリスの部屋の三倍はあるのではないかと思うほど。


「本当に私、ここに泊まっていいの?」

「もちろんよ! むしろ申し訳ないわ」

「どうして!? 充分過ぎるよ!!」

「だって、同室で寝たかったのだもの」

「こだわるねぇ。リーナは」


 リーナの部屋に行くのは良いようで、快く招いてくれた。


「うわぁ……また天井が空だ」

「綺麗なのだけれど、たまには客室のような、シックな感じも良いと思っているの」


 客室の天井はアイボリーと至って普通な色だ。


「さぁ、ソファーに座って。ドリスのお父様が、私のことを知っていた理由を説明するわ」






 ドリスがリーナの対面に座ると、リーナは話し始めた。

 リーナには、小さい頃から婚約者が決まっていた。それは、第二王子のバシリウスだった。


「ほぼ、強制的なものよ。同い年というのと、公爵家というのが良かったみたいなの。大人は」

「じゃぁ、王子は?」

「全く相性が合わないわ。あちらは私が好みではないと言っていたし……贈り物も一切もらったことがないの」

「え!? ……白紙には出来ないの?」

「進言してるのだけれど……難しいわね。それに婚約破棄したら、私の方にだけ傷がつくわ。だから、渋々今まで、王族の教育に付き合っているの。為になることもあるし」


 父がリーナのことを知っていたのは、王族教育の為に、王城によく来ていたからだった。


「ん? 第二王子ってことは、貴族になるってことも……あるのではないの?」

「王族を離れたくないらしいの。……それに、あっちは堂々と浮気しているから、呆れちゃって」


 第二王子は同じクラスになった、エミーリア・ボーム男爵令嬢に夢中だそうだ。


「第二王子と同じクラスだったら、色んな意味できつかったね」

「それは大丈夫よ。私が王に我が儘言って、あの人とは、別のクラスになるよう画策してもらったから」

「そうなの?」

「そうよ! 茶番に付き合ってあげるのだから、これくらいはしてくれないと……」

「茶番? それって……」

「いずれ分かるわ。……結局、私が損することになるかもしれないけど」


 リーナは悔しそうな、悲しそうな、複雑な顔をしていた。上位貴族は、上位貴族で大変なんだということを、ドリスはこの時知った。





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