128話 冒険者組合へ
俺はフランカさんと二人でギルド会館に来ている。
素材の買取は商店か冒険者組合のどちらでも可能であり、俺は魔石の買取を冒険者組合でしないかとフランカさんに相談していたのだ。
「グリーンウィングは、冒険者組合で集めた素材を買い取って貰った事はありますか?」
「いえ、駆け出しだった時に加入していたギルドの冒険者から、冒険者組合と商店では売値が一割か場合によっては二割近く安くなると聞かされていたので、私達は商店に買い取って貰っています」
「捜索組の人達は、ほぼ自分達で直接商店に売っていますが、逆に攻略組の冒険者の多くが手に入れた素材を冒険者組合で売っている事を知っていますか?」
「そうなんですか? そこまで気にした事が無かったので、知りませんでした。もしかして買い取り価格が上がっている訳ではないですよね?」
「上がっていません。商店に売るより買取価格は安いですね」
「はぁ?」
「勘違いしないで欲しいのですが、冒険者組合も素材を安く買い取って儲けようとしている訳ではないんですよ」
「それってどういう意味なんですか?」
「冒険者組合が素材を買い取るのは、あくまで冒険者に対するサービスの一環です。素材の買取においては殆ど利益を取っていないんです。利益は魔石の利権で十分得ていますから」
「買い取り価格が安いのに、儲けていない??」
フランカさんは首を傾げた。
「冒険者組合は専用カウンターに素材を持っていけば、職員が仕分けし素材を査定をして、どの冒険者であっても決まった金額を支払ってくれます」
俺が説明した状況はギルド会館で毎日見られている風景なので、フランカさんも素直に頷いた。
「そして素材は採取の方法や手間の掛け方によって品質が変わってきます」
「はい、品質によって売値が変わりますから、メンバーにも気を付ける様に言っています」
「他に値段が変わる理由としては市場に溢れている素材の量によっても変わりますよね。その為にギルドホームで保管して、売るタイミングを調整するギルドも存在しています」
「はいその通りです。私達のような小さなギルドの場合は、活動資金が乏しいのですぐに売ってしまいますが……」
「後は…… 何種類かの素材を混在させて売りに行った場合、商店では仕分け代を取られたり」
「それも常識ですね。ラベルさんはさっきから何を仰りたいのですか?」
どうやら説明が回りくどかったようだ。
「俺が話した事は全て捜索組のギルドでは常識なのですが、しかし攻略組はそんな事気にしません。攻略組の求めているのは素材では無く、魔石やダンジョンコアなのです」
確かにそうだと言った感じで、フランカさんは頷いて同意する。
「なので攻略のついでに手に入れた素材は、臨時収入程度の価値でしかないんです。だからそこまで手間を掛けられないんですよ」
「なるほど…… だから売値が安くても、簡単な手間だけで買い取ってくれる冒険者組合に売るという訳ですか」
フランカさんも理解してくれた。
「大体そんな所です。冒険者組合は冒険者の代わりに素材を商店に売ってくれているのです。たしか手数料位はとっているって言ってたかな……? だから冒険者組合に売っても、手間が無くなったと考えれば、それ程損はしていないという事です」
「そうだったんですね。ラベルさんはとても詳しいのですね」
「ちょっとした知り合いが冒険者組合にいますからね」
「そうだったんですね」
「普通、魔水晶を売るとすれば、俺は絶対に買い取り価格の高い商店に持ち込んでいます。しかし今回は量が多いだけに、変に勘ぐられても厄介なんです」
「量が多くて厄介ですか…… 小出しに売っていけば?」
「そうしてもいいのですが、B級ダンジョンがいつ攻略されるかわかりません。攻略された後も定期的に魔水晶を持ち込んでいたら、勘ぐる者も現れますよ。なので今回は一回で全部売り抜きます」
「もし勘ぐられたらどうなるんですか?」
「俺達が高価な素材のストックをため込んでいるか? もしくは素材を売って大金を持っているという情報が流れることになって……」
フランカさんはゴクリとつばを飲み込んだ。
「金目当ての強盗が現れるかもしれません」
「ラベルさんから相談を受けた時から、ラベルさんに全てお任せすると決めていました。よろしくお願いします」
「ありがとうございます」
本当なら商店に売ろうが冒険者組合で売ろうが、情報が漏れる可能性は変わらないかも知れない。
しかし俺は冒険者組合の支部長であるオスマンとは懇意にしている。
なので個人的に頼めば、第三者に気付かれる事無く、魔水晶を売りに出す事が出来ると考えたのだ。




