60話 依頼
「貴方が返信の書簡と同封してくださった資料はとても、素晴らしかった。
治療法や病の進行度の測定方法。これらのおかげで、かなりの者を治療できました。
私個人としましても王家としましても感謝しております」
ヴァイス様に相談された日から数日後。王子の方からヴァイス様の屋敷に訪れた。
私はお屋敷の応接室で、王子とその護衛の人二人、私は後ろにキースさんがいてくれる状態。ヴァイス様はキースさんに「旦那様が表にでると絶対ろくでもないことになるので大人しくしてください」とベッドに縛り付けられていた。マーサさんにも「奥様が絡むと何をするかわからないから、その方がいいね」と言われてしまい、結局ヴァイス様は体調がよくないという理由で、この場に居合わせていない。
二人で挨拶を終え、二、三会話を交わした後、私も座っていいとのことで、お言葉に甘えて席につき、会話をかわしている。そして以前提出した書類にたいしてお礼を言われてしまい、私は顔が赤くなる。
「い、いえもとはといえばエデリー商会の代表がしたことですから……」
「それを言うなら、王族とて同じです。第二王妃を放置してしまった結果がああなってしまいました。
心よりお詫び申し上げます」
王子が優雅に笑う。あふれ出る気品に王族は凄いなっと見ほれてしまう。
ヴァイス様の時もそうだったけど、空気が違うというかなんというか。
私もヴァイス様の奥様になるのだからこういう上品さを身に着けないと。
「それでは、本題に入らせていただきます。
市民の方は、貴方が王書と一緒に返送くださった資料を参考にさせていただき、療養と抑制剤を使用しました。これでほとんどの者が良い結果に向かっています。かれらは塗り薬などの短期摂取で、長期摂取ではないのが幸いしていたと思います。ですが、貴族の令嬢や婦人のなかに重度の者が複数います」
「貴族の方が……ですか?」
「はい。最初に出されたエデリー商会のお茶を好んでのみ、シミができ、その酷いシミを治そうと、別のエデリー商会の化粧品に手をだし……を繰り返して悪化したようです。
化粧で隠したり、シミのせいで部屋に引きこもったりで、発覚がおそくなりました。あなたの教えてくださった魔力測定の結果から、かなり悪化している部類だと思います」
そう言って、王子は紙を差し出した。
そこには女性名らしき名前と年齢・身長が記載され魔力計の数値も個所によって事細かに記載されている。
確かに言う通りかなり数値がよくない。抑制剤を毎日飲み続けないとテーゼの花の開花までに間に合いそうにない数値の人までいる。
「市民の方は、指示通りの設備を用意した診療所をつくり、軽い抑制剤の薬を毎日飲むことでシミが消えたため、騒動はかなり収まりました。感謝いたします。
ですが、貴族の方が娘や妻を貴方に見てほしいという嘆願が殺到している状態でして。もしご迷惑でなければ一度診ていただくことはできないでしょうか?」
その言葉に私はキースさんと目をあわせた。
こうなるだろうとヴァイス様に説明は受けていた。それを受けるか、受けないかは私の自由にしていいと許可をもらっている。
ちゃんとこういうところを、嫌がらず私の意見を尊重してくれるのが、ヴァイス様の凄くて、優しいところだと、ヴァイス様の顔を思い出して思わず赤くなる。
――
『治せるなら、出来れば治したい気持ちはあります……でも、貴族にかかわるという事は、また面倒ごとに巻き込まれてしまって、ヴァイス様達にご迷惑をかけてしまうかもしれません』
私がヴァイス様にどうしたいか聞かれて答えた言葉。
それでもヴァイス様は微笑んでくれて
『貴方の事で迷惑なことなどありませんよ。救えるかもしれない命を見捨ててふさぎ込んでいる貴方を見るほうがつらいです。私はそんなに甲斐性がないように見えますか?』
『そ、そんな事はないです!』
私が慌てて返事をすると、ヴァイス様は私の頬に手を添えて、額にキスをしてくれる。
その手、唇の感触に顔が真っ赤になってしまう。
『貴方の好きにしてください。今まで自由にできなかった分の自由を、謳歌するだけの権利が貴方にはあるはずです。自惚れでもなく、私は貴方にそれを贈ることのできる力があると自負しています』
ヴァイス様は笑って私を送り出してくれた。
――
「はい、それではその方たちの診察をさせてください」
手の甲にキスしながら笑顔で送り出してくれたヴァイス様の言葉に、今回は甘えさせてもらいたいと思う。
……やっぱり治せるのが私だけの今、見捨てる事はできないもの。








