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59話 純情?

「第一王子自らシルヴィア様に会いたいと書状が届いております」


 新しい屋敷のヴァイス様の寝室で、キースさんが王判のおされた書状を私に見せてくれた。


「まぁ、そうなるでしょうね」


 寝たまま、頭を押さえてヴァイス様が言う。


「王子様がですか!?」


「第二王妃が薬害に絡んでいた以上、王家は全力で薬害を解決しなければなりませんからね。薬害を解決したいという点では……マイレディの利害とは一致しています。貴方にこだわりがないのなら、王子の力を借りるのはいいことでしょう。……ですが」


「ですが……?」


「貴方の力を知った時、必ず囲い込みにかかるでしょう。

 あなたの実力を他国に逃すのは惜しいと。その時どうするかです」


 そう言ってヴァイス様が私に視線を移す。


「無理やり、閉じ込められるということでしょうか?」


「いえ、そこまではしないでしょう」


「ですね。今回の件であちらも旦那様がいままでやってきたことを調べたでしょう。それを知ったうえでそんなことをしてくるのは単なる馬鹿です」


 と、キースさん。


「何をなさったのでしょう?」


 私が疑問に思って聞くと、なぜか一斉に視線をそらされた。

 ……うん。ちょっとだけわかった気がする。


「い、いえ、マイレディに隠し事をする気はないのですが……やった事が多すぎてどれから話せばいいのか」


「ま、まぁ、今回、そこは論点ではありませんので!第一王子が、シルヴィア様に好条件をだして、残ってほしいと提示してきたときのシルヴィア様の意思を確認しておこうと!そういう事ですよね!旦那様!」


「あ、はい。そういうわけでして。確実にエデリー家の利権の返却は含まれるでしょう。

 他にも錬金術師としてかなりの好条件を提示してくることが予想できます。

 そして国にとどまってほしいと。

 ……その時の貴方の意思を確認させていただきたいのです」


「この国に……ですか」


 私は考える。確かにエデリー家を私は守れなかった。

 でも、もうあそこには父の時代にいた人たちは誰一人いない。

 給与が高すぎると追い出されてしまったから……。


 何をもって家とするのか、もともとエデリー家の血筋として、錬金術師の仕事を綺麗きっぱりやめるつもりはない。ヴァイス様の元で化粧品作りをとても楽しみにしているし、いままで錬金術で諦めていた部分のチャレンジはとても興味がある。それにエデリー家の祖はもともとこの国の出身ではないから、この国でなければいけない理由もない。


 ……それに。


 私はちらりとヴァイス様を見る。


 ヴァイス様と一緒にいたい。

 離れた国で暮らすのはやっぱり嫌。


「私は、ヴァイス様と一緒にいたいです。この国に愛着がないといえばうそになりますが、薬害の件がひと段落したら、ヴァイス様とご一緒したいです」


「ほ、ほんとうですか!?」


 ヴァイス様が嬉しそうに、ベッドから起き上がって私を抱き上げてくれた。


「ヴァ、ヴァイス様!?」


「よかったです! 国に残りたいと言われたらどうしようかと! 本当にありがとうございますっ!!」


 私を嬉しそうにだいてくるくる回りだす。端整な顔立ちにあどけない笑顔を浮かべて頬を染めるその顔が可愛くて私まで顔が赤くなってしまう。


「好きですよ。マイレディ。愛しています」


 そう言って、私をとんとおろすと、おでこにキスをしてくれた。

 それが嬉しくて


「はい、私もお慕いしています」


 私もヴァイス様の頬にキスを落す。

 

 そしたらヴァイス様にびっくりした顔をされてしまって、私は思わず固まった。


「め、め、迷惑でしたか?」


「いえ……その、ものすごく嬉しいです」


 ヴァイス様は頬を抑えて耳たぶまで真っ赤になってしまった。

 そのまま固まってしまって。私が手をふってみても反応がない。

 身体がすごく熱くなってしまっているのを感じて、私は慌てる。


「ヴぁ、ヴァイス様そろそろベッドに」


 私が慌てて、ヴァイス様をベッドに戻そうとすると


「キス一つで熱ぶりかえすとか、アホですか!???」


 と、キースさんにベッドに抑え込まれるのだった。


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