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50話 盛大な破滅へのフラグ

「マリアっ!!!これはどういう事なのですか!?」


 第二王妃の別荘につき侍女に第二王妃の部屋につくなり、マリアは紅茶をかけられた。


「な、なんのことでしょうか!?」


 冷めていたとはいえ、いきなり紅茶をかけられた事にマリアは狼狽する。

 商売はうまく行っており、新商品の軟膏も、薬も、紅茶も評判がいい。

 第二王妃も喜んでいるはずだと思っていたのに、別荘につくなり、紅茶をかけられたのである。


「貴方の商会の紅茶や薬です!あれを摂取するとシミができ、最後は死にいたるらしいではありませんか!?」


「だ、誰がそんな事を!!」


「これです!!!ランドリュー家の送られた手紙に記載されていました!!」


 そう言って第二王妃が持ち出したのはミス・グリーンがヴァイスにあてた手紙だ。

 王妃は検閲を勝手に悪用してその手紙を手に入れた。ヴァイスに嫌がらせするために国際法違反をおかしたのだ。

 そこにはお茶の成分の中に、東部の人間には害になる成分が発見されたと記載されている。単体なら毒ではないが同時にとると異様に魔力を活性化させ一見薬として効くように見えるが、それは体内にある魔力を制御する細胞が異常活性化し、効いているように見えるだけ。東部の人間には拒否反応を起こす物質であり、服用を続けると斑点になり、硬質化がはじまってしまう。今すぐ接種をやめるべきと記載されている。


「……まさか、毒の成分なんてなかったのに」


「すでに何人かの貴族の令嬢が肌にシミが出来たと訴えてきているのですよ!?」


 王妃がマリアに怒鳴る。そして王妃の後ろに控えていた40代くらいの白銀の髪の魔術師風の男がこほんと咳払いをすると


「それだけではありません、まだ表にはでていませんが、錬金術師協会に苦情が多数届いています」


 と、マリアに詰め寄った。


「そ、そんな」


 がくがくと震えながらマリアが祈るポーズをする。


「どうしてくれるのですか!?もしこれがばれたら王位継承戦どころではなくなるわ!」


 王妃が頭を掻きむしりながら、乱れて叫ぶ。

 こんなはずじゃなかった。

 カワイイ息子を王位につけるはずだったのに、マリアやリックスというアホのせいですべてが台無しになってしまう。


「それなのですが王妃殿下」


「何!?」


「あのヴァイス・ランドリューが、豊穣祭会場で倒れました。全身に妙な斑点ができ突然倒れたと、聞き及びます」


 魔術師風の男が淡々と告げる。


「はっ、数少ない朗報ね。あの男もうちの薬をつかったのね。いい気味だわ」


 第二王妃がせせら笑う。


「そこでなのですが、この件をあの男に全て押し付けるというのはどうでしょう」


「……どういうこと?」


「あの男を斑点ができる奇病を持ち込んだ病原菌にしてしまえばいいのですよ。幸いなことにあの男に斑点ができるところを多数の市民が目撃し、接している。これから症状が出る患者も、今病状がでているのも、全てあの男のせいにしましょう。そしてエデリー商会で売り出した薬は全て成分を変えてしまえばいい。国外に持ち出しが現段階で可能だったのはお茶のみです。それも人気故すぐに品切れですからもうあまり残っていないでしょう」


 魔術師風の男はそういって後ろ手をくむ。


「国内にある薬については、全て【わが錬金術師協会】でもみ消します。市場に出回った分は放置しておいていい。すでに手配してあります。

 ランドリュー家の錬金術師グリーンも身内の発言ということで誰も聞く耳をもたぬ状態にしてしまえばいいだけです。あそこまで成分を解析できる能力のある組織はありません。

 私達ですら気づかなかったのですから、他の錬金術師協会も分析しただけでは気づきません。

 いくらでももみ消せる。マリアが買い占めた西部の薬園も別の物をつくらせて証拠を隠滅します。

 ついでですから、ランドリュー家に我が国に奇病を広めたとして莫大な慰謝料を請求いたしましょう。

 そして王妃殿下はその奇病をいち早く発見し、病原菌を排除、感染を防ぐ特効薬と称して薬を売り、病気から国を守ったという筋書きをつくればいい」


 そう言って魔術師風の男――この国の錬金術師協会会長はにやりと笑った。


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