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第90話

「それでは、諒花さん、花予さん。本日のメインルームにご案内します」


 屋敷の主である翡翠の案内のもと、この場は取り仕切られる。


「荷物はそちらのボディーガードにお預け下さい。部屋まで持っていってくれます」


 エントランスの奥からやってきたのか、いつの間にかサングラスをかけたスーツ姿の男二人が並んで立っており、着こなしもしっかりしている。ここが滝沢家の本拠地であり警備もしっかり固められているということを感じさせる。


「頼むよ」

 背中に背負ってきたリュックを直接手渡した。花予はカバンもそうだが二人分の着替えなどが入った大きめのスーツケースもあるのでそれらをまとめて二人の男に手渡した。荷物を部屋に運んでくれるとは、さながらホテルのような対応だ。


 身軽になった所で、花予とともに滝沢姉妹の案内で奥の部屋へと連れて行かれる。


「うおー、まるで夢の国みたいじゃないか♪」


 花予のテンションの高まりは留まる事を知らず、赤いカーペットが敷かれ蝋燭で灯された廊下を歩くだけでも興奮しているようだった。


「翡翠ちゃん。後でゲームが沢山あるプライベートルームにも案内してね♪」

「ええ。ですが、それは後のお楽しみに。まずはこの先で昼食後に見ましょう。黒條零さんのパソコンの解析結果を」

「そうだね。まずはそれが大事だ。あたしとしたことが本題を忘れるとこだったよ」


 そのプライベートルームがどんな場所かは知らないが、翡翠の口振りからすると花予を大満足させ、一度そこに入ったら、下手すれば朝までゲームしているんじゃないか。そんな姿が浮かんだ。

 そうして連れられた廊下の先で翡翠が開けた扉の先から眩い光が溢れ出る。そこは屋敷の中の広いホールといった形で、初めて訪れる部屋だ。


「ここは……パーティ会場か?」


 目の前の光景を見て一言出た感想はそれだった。正面にはテーブルクロスの敷かれた丸いテーブルの上に「どうぞご自由にお取りください」と言わんばかりのジュースとグラスと皿が沢山置かれ、他にも同じようなテーブルが二つにある。肉や野菜などが分けられて皿に山となって乗っており、これも各々自分達の皿に乗せて自由にとってくださいといった感じだ。


「おおー、まるでホテルのバイキングみたいだ!」

 花予のその言葉が正しい。もしかして、今朝のあのニワトリ野郎のせいでホテルの豪華な朝食にありつけなかったことに翡翠が配慮してくれたのかと思っていると、


「渋谷ヒンメルブラウタワーではあんな事がありましたし、諒花さんもせめてここではお茶や食事を楽しんで頂けたらと」


 翡翠が花予に思ったその通りの経緯をノリノリで説明していた。青山の女王、対応がとても素晴らしすぎる。


 だが、こんなパーティ会場で零のパソコンの中身をみんなでどのように見るのだろうか。テーブルや料理の並べられた最奥には赤いカーテンで覆われた壇上がある。


 それは学校の体育館にもあるものに比べたら部屋は全然小さいが、だいたい同じでよじ登れば上に上がれる程度の高さだ。


「あの上で発表するのか?」

 指差すと翡翠が口を開く。

「あの壇上のカーテン奥にプロジェクターがありますので、時間になったら幕が開き、解析担当者の口から直接説明して頂こうと思います」


 時間はちょうど12時を回ろうとしている。車移動によって気がつけばもう昼前だ。ただ、別件で忙しくてまだ来れないのだろう蔭山からは案の定連絡はなく、どういうわけか先に青山に行ってるぜとか言っていたカニ野郎――シーザーも来ている様子もない。紫水に訊いてみた。


「シーザーも来るんだ? 残念、まだ来てないよ」


 おかしい。少なくともシーザーはもう時間的にひと足早くここにいてもおかしくないはずだ。こちとら一回家に帰って迎えに来た車を待ち、それに乗ってここまで来たのだから、電車二本の方が絶対に早いはずだ。


 翡翠の意向によって電車は回避したのでこうなったが、その電話が来る前にシーザーはたぶん電車ですぐ青山に向かっただろう。着いていないのもおかしい話だ。


読んで頂きありがとうございました!次週、シーザー主人公で一話完結の閑話をお送りしますw

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