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第46話

第二部スタートです!よろしくお願いします!

 初月諒花が天空園でフォルテシア・クランバートルと衝突しようとしていた同時刻────


 ここは青山の森に建つ滝沢邸。滝沢翡翠は屋敷二階自室のデスクのパソコンでリモートを繋いでいた。空はどんより一雨来そうな灰色。それは彼女の心境を表しているかのようだった。


 開口一番、用件はただ一つ。翡翠はニコニコと表情を変えないまま黒いオーラを漂わせながら彼に問う。


「今回の件、どう責任とってくれるんですか、スカールさん?」


 前回、スカールは確かに不安定な情勢にも関わらず戦争は仕掛けないと改めて言っていた。確かに言っていた。聞き間違えなどあるはずがない。ちゃんと録音もしっかり残っているのだから。これは紛れもない本家の意向だ。ハッキリと言った。


「戦争は仕掛けないって、自分の口でそう言ってましたよね、スカールさん??」


 にも関わらずだ。そのリモートから数日後に事件は起きた。彼と同じ最高幹部の一人、カヴラ率いる二次団体ワイルドコブラが突如、諒花を狙って渋谷に侵攻してきた。しかも”戦闘蜂”ビーネットと”鋼鉄蠍”スコルビオンという実力も確かな幹部二人を相次いで派遣。ワイルドコブラは二次団体だが最高幹部の一人が率いている。ほぼダークメア本家が戦争を仕掛けたのと同義だ。


 やっぱりだった、やっぱそうだった。というか当人も前回薄々見越していたのだろうが、何かしら騒動はあるんじゃないかと思っていた。総帥が死んだという起こっていることが起こっていることだけに。巨大な組織だけに関係者ならまず黙っておけない大ニュースは上層部や関係者からジワジワと拡散するものだ。


「ごまかしても無駄ですよ? 前回の冗談交じりの会話はちゃーーんと録音してありますから。言った言わないは無しです。よろしいですか? スカールさん???」


 戦争は仕掛けないと言いつつも別の最高幹部が戦争を仕掛ける──言っていたこととやっていることが実に真逆だ。この組織ぐるみの騙し討ちをどう言い逃れするのか。

 内心でそっと怒りを燃やす問いの言葉が投げかけられる度に、語気が徐々に上がるにつれて、追い詰められるスカールの大粒の汗が増えていく。そして――


『……悪かった。今回のワイルドコブラ侵攻の件、完全に俺達の不手際であることを認める』


 なんと、その場でたまらず土下座して潔く謝罪ときた。事実上のトップの怯えた顔に思わず笑いが込み上げてくる。意外というか素直というか。そんなのでいいのかとも。


 ひたすら少女の追っかけをしていた総帥に比べたらマトモな彼らしいというか。ここは俺達がやった、お前らを潰すためにな! と開き直った清々しい邪悪な笑みを浮かべることをしても不思議じゃない立場なのに。まあ、その姿勢そのものは褒める所でもあるので置いといて。


 彼の実力ならその気になれば青山へと攻め込み、邪魔者とみなし、滝沢家を全部一人で消し去ることもできるだろう。彼は現状、戦いになれば倒せないし殺せない男だ。その能力に隠された弱点を探る以外の攻略法はない。でなければ一方的にやられるだけだ。総帥に組織を任せられるだけある。


 しかしそうはいかない。闘技場絡みで仕事を与えている側がきちんと仕事を受けている側を理不尽に潰しでもすれば、後からいくら口実を作ってもエゴだの独裁だの周りからは色々言われかねないだろう。

 それにこちらは都市と自然溢れる青山の裏社会の女王。そんな事をすればそれを良く思わない者が反発し、更なる争いの火種になるだけだ。それはこの男も分かっているだろう。素直に話を聞いてくれるし焦ってくれる。


 もしもスカールが強硬手段に出るならば、ダイイングメッセージとして今もしているこの通話の録音を遺すまで。そしたらきっと誰かが暴いてくれるだろう。追い詰めたスカールに対し、無駄に策謀が頭を随所に駆け回り、翡翠はふっと面白くなって微笑んだ。


「一応訊いておきますがどうしてこんなことになったんですか、スカールさん?? 亡き総帥レーツァンから組織を任せられたあなたのことなので幹部同士連携はできているはず。なのになぜ?」

 スカールは視線を少し逸らすと、

『それは……話せば長くなる。一言で言えば、カヴラと俺達の方向性の相違とすれ違いだ』


「伏線は随分前から隠れていそうですわね。話す内容次第ではそちらへの賠償請求を上乗せさせてもらいますよ?」

『上乗せでもなんでも、そちらの要望は聞くつもりだ。末端組織ならともかく、カヴラの野郎がしでかすとは思わなかった』

 スカールは腕を組んで考え込む仕草を見せる。


『とにかく、全責任はこの俺がとる。その前に経緯から話す。聞いてくれ────』



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