表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/172

閑話 零の連絡先

 零の連絡先。唯一の繋がりを示す糸たるそれは初月諒花、初月花予、笹城歩美のスマホには入っている。だが、零の失踪後、誰がコンタクトを試みても電話は繋がらないし、メッセージの書かれた吹き出しにも何を書き残そうが既読はつかない。


 ────でももしかしたら、ワンチャン繋がるかもしれない……!


 それだけは捨てきれなかった。なのでわずかな望みをかけてスキマ時間に三人はそれぞれ零に向けて吹き出しでメッセージを送り続け、電話もかけ続けた。諒花は学業と戦いと事件の傍ら食後や就寝前、花予は仕事や家事の後、歩美は学業と部活の合間に。


 最後に零と会った時、確かにスマホを持っていた。逃げ去った時も持っていた。だから彼女の持っているスマホにはちゃんと届いているはずなのだ。だが、いずれも零の返信はおろか、電話がかかってくることもなかった。


 にも関わらず反応がないということは意図的に無視しているか、誰かにスマホを取り上げられてしまっているのかもしれない。


 フォルテシアと邂逅する前日のハロウィンの夜。襲ってきた二人目のワイルドコブラ幹部、スコルビオンとの戦いで石動が加勢してくれたことで、思い出したのはいなくなった彼女の姿だった。いつも傍らにいて、黒き双剣を手に自分を守って助けてくれた、銀髪に右目が黒い眼帯に覆われている彼女は頼れる大切な仲間であり友達だった。


 その戦いから帰ってきた夜も、ベッドの上でスマホで吹き出しを打ってメッセージを送ってみた。その上には既読のつかないこちらの呼びかけの吹き出しがただ並んでいるだけ。すると途端に空しくなってくる。


 どこに行ってしまったのか、零。翡翠をはじめとした滝沢家が手を貸してくれるけれども、やっぱり零がいないと寂しい。メッセージや電話をかけるアクションを起こす度にその感情が増していくことを実感する。


 零が実は黒幕と繋がっていることに気づくまでは、変態ピエロことレーツァンの掌の上で踊らされていたに等しかった10月も今夜でようやく終わりだ。明日から11月。


 そういえば三年になれば、受験生だ。中学一年の時からメディカルチェックによって入学前から抱いていた空手部に入部して金メダルを目指す道は絶たれ、現実に打ちのめされた。だが、零から言われたこの言葉で再起を決めた。


『異能の蔓延る裏を知れば、生きる答えを必ず見つけられる。他人に教えてもらうのではなく自分自身で納得いく答えを見つけること。でなければあなたの答えではない』


 たとえ零が監視役だったとしても、あの言葉はしっかり心の通った零によるものなのは確かだ。たとえ裏でどんな思惑があったとしても、零が裏から何者かに操られていたとしても、あの言葉で答えは自分自身で探すこと、答えを見つけなければならないことに気づいた。


 だが変態ピエロを倒して、零がいなくなって、その答えも本当に見つかるのかが不安になってくる。だから早い所、零を見つけて、監視や黒幕とか、そもそも一体全体どういうことなのか、ワケをとにかく聞きたい。話の続きがしたい。

 零がいてくれなければ、納得いく答えを見つけられそうにない。一緒に、生きる答えを見つけたい。たとえそれをこの先見つけられたとしても、傍らに零がいないのはとても寂しい。


 黒幕は零を使い、更には変態ピエロとも繋がりがあった。変態ピエロもその黒幕に近づくためにこちらの両親と恋人を事故に見せかけて殺害している。更に黒幕は零にこちらを監視させ、変態ピエロとこちらがやり合っている様子を俯瞰していたことになる。


 その正体不明の黒幕は誰なのか。こちらを欲しがっている目的は何なのか。それを知るためにも何としても、どこかに今も隠れているだろう零を見つけ出す必要がある。


『零、どこにいるんだ? 見ているなら連絡してくれ』


 零がいなくなってから打ち続けてきた既読のつかないメッセージに苛立ちと寂しさが混濁した気持ちになる。


 今日はもう寝よう。ワイルドコブラからの刺客も二人倒した。まだまだ来るかもしれない。今は体を休めよう……戦いを潜り抜け、零とまた会うために。


 決意を新たにし、そっとまぶたを閉じる。


 しかし、その次の日。初月諒花の前に現れたのはワイルドコブラではなく、外野から飛んでくるようにして急に現れたのはXIEDシードのフォルテシア・クランバートル。


 抵抗しても全てが通用しないその圧倒的な強さはこれまで戦ってきた敵を余裕で超え、冷たい雨が降りしきる中で意識が闇へと覆われ、立っている気力もまとめて奪われ、そして完全に目の前が何も無くなった────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ