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第152話

 尋問を受けたのは幹部4人だけではない。脱獄を画策した事の発端である彼。そう、樫木麻彩。


 その前の4幹部、ビーネット、スコルビオン、コカトリーニョ、レカドールは樫木について、


「ブンブン。あの野郎は越田組と繋がりがあると自分から言っていた」


「越田組がクライアントって言ってたゴスね」


「越田と仕事してたと言ってたぜコケーッ!」


「今は滅んだはずの越田組については、あの男が詳しいでしょうね、レへへへ」


 と揃って供述していたため、最後に残った樫木が全て知っているだろうと引っ張り出して尋問した。


 すると。


「ああ、そうだよ。僕は越田組に雇われ、殺しや潜入、人攫いから諜報まであらゆる仕事を請け負ってた事があるのは事実だ」 


しかし、


「これ以上はあんたに教えるわけにはいかないな。僕はチャンピオンだぞ! 僕が欲しいものをくれたら考えてやるよ、青山の女王」


 往生際を悪くし、口を固く閉ざした。金を積めば話してくれるか?


 ハインが幹部採用をスカールに掛け合う事を提案したが、


「やだね。僕はカネを積まれて仕事するのは好きだが、組織人として拘束されるのは気が進まないな。フリーランスとして契約するならいいぞ? あんたらの総帥レーツァンはそうしてくれた」


 首を横に振る樫木。先月19日。樫木はレーツァンの配下として裏で動いていた。あれは完全に軍門に下ったわけではなかったようだ。

 現に青山の王になるという個人的な野心を掲げて独断で襲ってきた。


「この時点で真っ当な組織人にはとてもなれませんわね」


 翡翠にバッサリと言われても怯まない死神。

 

「何度でも言え。僕が欲しいものは自由だ。さぁ、どうする?」


 メガネが光り、ドヤ顔を決め込む彼。

 

 仕方がない。これではいつまでも首を縦に振ってくれなさそうだ。


 最終的にリスクは承知で事件終結後、彼の釈放と引き換えにその情報を話すという形で決着した。釈放する時は警戒を強化すればいい。やむを得ない。


「取引成立だな。いいだろう、僕が直々に話してやるよ。代わりにこれから吐く僕の安全も保障しろよ? ま、もう尻尾も掴まれそうだしいいか」


「御託はいいので話しなさい、樫木麻彩。越田組について」


 翡翠が圧を込めた目で見る。越田組も終わりが近い事を悟った死神。


 まず、名前が上がっている越田組が本当にあのかつて存在した越田組なのかを確認する。


「越田組は確かにかつて2013年にXIED(シード)によって壊滅した岩龍会系に名を連ねた越田組そのものさ。だが、残党が生き延びたから存続したんじゃない」


 残党がいないならばどう存続したのか。


「人がいなくなっても組織として残るものって何だと思う?」


 そう逆に訊かれてとっさに浮かんだこと。


「名前ではありませんか? 岩龍会のように」


 組織が滅んでもその名前には大きな価値はある。


「少し違うな……看板だよ。越田組はヤクザだ。組の代紋がそれだろう?」


 まさか――青山の女王は察しがついた。



 もう分かっただろう? と樫木は続ける。



「人身売買をシノギに名を上げた悪名高き越田組の代紋を回収し、拠点を遠く離れた関西に移し────」


「更に行き場を無くした元岩龍会の残党やダークメアを離反した奴らを呼びかけ集めた大物がいる」


 その大物が今回の黒幕。樫木の口からついにそれが語られる。



「発起人である闇のスポンサー、Mrミスター.カトルズ。そいつを主導者とし、裏社会の更に奥深くで再構築された、浄化されたはずの闇がうごめく集合体――――」




「それこそが今の越田組という名前の組織さ」


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