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第118話

「諒花! その奪った武器のチカラで一気に攻めちゃってよ!」


 紫水は両手を前に出し、ファイティングポーズで身構えるレカドールに大量の水を放つと、奴はそれに押されて倒れ込み、バク転で部屋奥に追いやられる。


 濡れたピチピチの黒のレザースーツ。右手に握りし影双像カゲソウゾウ。刀身からこの身に伝わってくるチカラは何もしていないのに、戦闘力が自然と研ぎ澄まされているような気分だ。気合を特別に込めなくても勝手に上乗せされたチカラが右手の拳に入ってくる。


「紫水! 援護は頼む! トカゲ野郎、もうさっきみてえな影分身はできねえぞ!!」


 壁際に追いやられているレカドールに向かって走る。右足の踏み込みから、体全体が普段よりも格段にとてつもない速度で加速しているのが全身に伝わってくる。後ろの長髪は引っ張られるように舞い、前方にこの身が引っ張られていくような。これが二重、時に三重にもなる影分身の正体か。


「ワタクシから影双像カゲソウゾウを奪ったからって、図に乗らないでください?」


 するとレカドールも構えながらゆっくり接近してきて迎え撃つ体制に入ってくる。普通に真正面からいけば、あの細くて想像以上に力強い腕力によって鷲掴みにされ、あの長い舌によって舐められ、唾液まみれにされてしまうのがオチだ。極めつけにその口から唾液弾を放つことができる。そうなってはまた紫水のお世話になって負担をかけることになる。

 

 体がふわりと浮く感覚。いつも以上に軽くなった体で早速放たれた迎撃の唾液弾を影分身によって華麗に避け、一気に距離を詰めることができた。本来ならば唾液弾も避けようと思えば避けられたかもしれないが汚いので怪しい。

 避けた水弾は背後にいる紫水の方に飛んでいったがそれを彼女は両手で水の壁を形成し吸収して防いでいる。


「くっ、生意気な!!」

 レカドールも唇を噛んでる場合ではない。


「くらえ、キモトカゲ野郎!!!!」

 武器を握っている右手を伸ばし、刃を握ることにも力が入った人狼少女の拳が、奴のトカゲヅラを思いきり横から凹ませた。正面から見るととても細く見える異形な頭だ。


「グゥウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 顔半分が食い込むほどの殴打を受けたレカドールは横へと豪快に吹っ飛ばされ、横向きのまま壁に大きく体を打って落下し、床に尻もちをついた。


 武器を手に持ってそれで攻撃するのは柄じゃない。相手を直接ブン殴るか蹴りを入れてやり合う方が良い。だから武器を握って直接殴ればいい。これならば武器のチカラが乗っかって殴れる。


「トドメだ!! 一気に……」

 右足を踏み出して前に出た時だった――――


「レへへへへへへへへ!!」

 完全に追い詰められ、逃げ場もないトカゲのその口からニョロリと顔を出したのは奴の長いベロ

 改めて見るとそれはとても生々しくトロトロしており、気色悪い。嫌悪感が視覚から肩をひた走る。いくら人狼の拳でも直接触れば感覚が麻痺しそうだ。それが視界に見えて殴れる寸前で踏みとどまる。


「諒花! 触るの嫌だよね? ここはあたしに任せて!」

 そう言って、気遣いの後に代わりに前へと出たのは紫水だった。


「待て紫水! あのベロで舐められて――」

 紫水の白い手は水色に発光していた。同時に気持ちの良い水のせせらぎの音。白い両手をしなやかで綺麗な水で纏っていたのだ。その両手で奴の長いベロを取り押さえた。それはなんか、巨大な釣り上げたばかりの魚を取り押さえるかのよう。


「レェェ!??? はんせっ、はっせ、はせ……は」

 放せと言いたいのだろう。キモいベロを掴まれたレカドールは言葉すら上手く発する事ができないままそっとその場で立ち上がった。

 取り押さえられた自慢の長いベロを無理に引っ張ろうものならば最悪、ベロが引きちぎられるほどの激痛が襲うことはもう想像に難くない。


「レへ! レッへ!!」

 綱引きの要領で両手でベロを持つ紫水を引っ掻こうと、右手を高く振り下ろすが紫水が引っ張って上手いこと距離をとったことで、


「レへェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

 引っ張られたことで奴は死にそうな声をあげた。悪あがきで思わぬダメージを負ってしまい、その断末魔はどこか心地良い。かなり効いている証拠だ。


「いっくよー! 諒花、足元に気をつけてね!」


 完全にレカドールの動きを見切った紫水はベロを引っ張り、奴の巨体を思いきり後ろの地面に叩きつけた。奴の頭から全身まで床にハンマーのように叩きつけられ、引っ張られたベロはとても弱弱しくしなびている。


 それにより、戦いが始まった直後、レカドールが踏み込んだことでヒビの入った床に更に大きな亀裂が走った。そうしてついに床が形を保ってられなくなり、


 そう。


 今立っている二階にあるこの部屋の床。それが軋む音とともに破裂し丸ごと崩れ落ち、大穴が開いた――――


読んで頂き、ありがとうございました!

このメッセージは6月13日記載したものです。

昨日から37.7の熱を発症しており一時は36.5まで回復したのですが、今朝方、熱が38.5と当初より上がってまして、人狼少女2は来週水曜まで休載させて下さい(-_-;) 


寝込んで当初の予定分をまだ書けてないので。申し訳ないです。


13日追記→体調次第では来週末か週明けの頭になると思います。

6月20日追記→熱の正体が実はコロナで療養してたため、遅れを取り戻すために6月23日夜に再開とします。申し訳ありません!


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