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転生者の贖罪  作者: 七篠
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タマ先生と情報収集

「…………もう少し休憩が必要ね」

「え~」


 タマが俺のカルテと思われる物に目を通しながらそう判断した。

 1ヶ月も休んでいたのにまだ回復していないってどういう事?


「それ本当にあってます?ただ戦いから遠ざけたいからって引き延ばしてるんじゃ……」

「出来る事ならそうしたいけどね。まぁでも夏休みには間に合いそうだし、夏休みにでも大規模な合宿みたいなことする?修行期間って事で」

「それはありがたいですけど……その前にリハビリとか言うんじゃないんですか?」

「リハビリも兼ねてよ。とにかくもう少しで完全に回復するからもうしばらく安静にする事。多分今月の半ばになれば9割以上回復しているはずだから、そうしたら学校の授業に参加していいから」

「自主練は?」

「ダメに決まってるでしょ。どんな無茶するか分からないからさせないわよ」


 タマからデコピンを食らい額を擦る。

 むすっとしながら椅子を回転させているとタマは呆れながら言う。


「そんなに急に強くなって何がしたいの?殺したい相手って誰?」

「いじわるするので教えません」

「いじわるじゃなくて治療。急に強くなろうとして身体をボロボロにした自分を恨みなさい。戦う日取りでも決めてるの?」

「2年後のクリスマス」

「ん?」

「2年後のクリスマスにそいつと殺し合いをします。誰が相手かリルから聞いてるんじゃないんですか」


 確信を持って言うとタマはため息をつきながら言う。


「ええ。何であなたがあの神と戦うのか本当に分からない。あれは私達の獲物よ。何であなたみたいな関係のない子と戦う事になるのやら」

「関係はない訳じゃありませんよ。俺はあいつを恨んでますから」

「向こうはまったく気にしてなさそうだけどね。と言うか本当にあなた転生者なの?転生術式は禁止事項なんだから狙ってやったのなら貴方既に犯罪者よ」

「……狙ってやってたら無茶しませんよ」


 もう転生者である事は理事長達も分かっているようなのであえて否定はしない。

 誰がどうやったところで俺の前世かこには手が届かないのだからある意味問題はない。


「つまり偶然って事?」

「マジで偶然です。俺だって死んで物心ついたくらいに意識がはっきりしてきて、何で転生してるんだ??って思いましたから」

「そう。ちなみに経緯は?」

「だから分からないんですって。あの戦争で死んで、あ~これマジで死んだわ~って思いながら意識がなくなったはずですし。事前に転生術式なんて組んでませんから。と言うかそう言うのしようとすればマジで天国地獄の管理してる神仏が文字通り転生する前に止められますって。あの人たちの目を盗んで転生とか無理無理」


 手を横に振りながら9割の本当と1割の嘘を混ぜながら言うとタマは一応納得してくれたような態度をとる。だが転生した部分が本当に偶然なのかは疑っているように見える。

 でもその反応が普通だ。

 偶然転生する確率なんて天文学的数値だろうし、事前に転生する準備をしておいた方がよっぽど自然。

 でもまぁそれを許さないのが地獄や天国を管理している神仏なのだが。


 あの人達って基本的に厳格な性格をしているからルール違反する奴嫌いなんだよね。

 もしその人達に詐欺まがいの事をしたり目を盗んで悪い事をした日には……神様目線での長い長い罰を与え続ける事だろう。


「……その言葉が本当かどうかは分からないけど、その方が自然か。地獄とか天国とか管理している人たちみんな怖いし」

「そうですよ。怖いからそんな危ない橋渡りませんよ。それに転生するよりも普通に生き残る手段考える方が現実的ですって」

「それは当然ね。これで今日の検査はお終い。他に何か気になる事とかある?」


 足を組みながら引き出しにしまっていたチュッパチャップスを取り出して舐め始めるタマ。

 別に体の調子とは関係ないが、気になる事はある。


「ところでNCDについて何か発展ってありました?」

「ああ~NCDね。私より雫の方が詳しそうだけど、分かるところだけなら答えられるよ」

「それで充分です。それで何人か捕まえられたんですか?」

「地道に捕まえてるみたいだけど、どれもこれも下っ端ばっかり。末端の末端ばっかりでなかなか指揮しているような相手は捕まえられてないって。前に捕まえたNCDもいたみたいだけど、彼はあくまでもこの町のNCDに所属している不良グループの元締めってだけで薬の開発には深くかかわってなかった。むしろ完成していた事すら知らなくって持ってる情報は全て古いだろうって話」

「そうですか……ちなみに薬って何が使われていたんです?」


 それが一番気になっていた。

 意図的に呪いをかけるという事は呪いにかかる原因を知っているという事にもつながる。

 もしそうなれば呪いを解呪する方法、あるいは呪いにかからなくなる方法が見つかるかもしれない。

 そう期待して聞いてみたがタマは首を横に振った。


「残念ながら薬その物の成分はただのビタミン剤やでんぷんの粉を錠剤の形に成形していただけで成分が原因ではないみたい。これは私が調べたから確かよ。その代わり呪いが込められていたけどね」

「呪いが込められていた」

「ええ。錠剤その物はさっき言った通り何の変哲もないただのビタミン剤。でもどうやったのか弱い呪いが付与されていて飲んだ本人はその弱い呪いが磁石のように呪いを引き付けて呪いを受ける。まさかごく少量の呪いが磁石みたいに大きな呪いを引き付けるとは思わなかったわ」

「ちなみに飲んだ人たちってみんなはぐれ悪魔みたいになっちゃったりしてませんよね?」

「流石にあれは悪魔が服用したからって言うのが原因みたい。でも呪いの影響かドラゴンに似た姿になる事が多いみたい。あとは今までと同様にドラゴンのオーラに包まれて、理性を失って暴走するって所。ただ呪いを引き寄せるには時間がかかるみたいだから初期状態に対処すれば解呪も出来る」

「解呪できるんですか!?」

「これに関してはあの錠剤が大した事がないから今だけでしょうね。何せ完全に呪いにかかった状態とも言い切れないから、本当に初期状態なら気絶させる事が出来れば呪いも離れていくの。これだけは不幸中の幸いね」

「それじゃ今のところは……」

「服用した子達はみんな日常生活に戻れてる。ただ気になる話もあるけどね」

「どんな話ですか?」

「学生ならよくある悪くて甘い話って奴よ。ある日街中で声をかけられて『強くなりたくないか』って聞かれて欲しいって言ったらこの錠剤を渡されたそうよ。服用してしまった子達の大半が虐めとかで悩んでいる子とかが多かったからそういう子を狙っている可能性が高いわね」

「虐めか。復讐目的で服用したって事ですかね?」

「そうかもしれないし、強くなって自信を付けたかったって言う事も話してたわね。次に多いのは不良達ね。血の気の多いバカな不良達に薬をばらまいて実験しているような感じ」

「臨床実験って感じですか?」

「正確に言うなら人体実験ね。NCDがどれくらい大きい組織なのかは不明だけど、お粗末とはいえ飲んだら呪いがかかるという目的は果たせているから、これ以上薬をばらまいてデータを集められたらかなり厄介な事になりそう。全貌が見えない以上慎重に動くしかないのよね~」


 本当に大変だっという感じで言う。

 呪われる薬そんなにばら撒かれていたのか……

 一体誰がどんなふうにばら撒いているのか、気になるな。


「他に聞きたい事とかある?」

「特にないですね」

「それじゃ家に帰ってもうしばらく安静にしてなさい。リル、まだ運動させちゃダメよ」


 タマがそう釘をさすとリルは元気に吠えた。

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