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転生者の贖罪  作者: 七篠
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プライドのない悪魔

 悪魔は俺に向かいながら炎の魔法を4つ発動するが、全て発射するのが同じタイミング。しかも全て同じ魔法でファイヤーランスと言う炎を槍の形状にして放つ貫通系の魔法だ。

 この程度かと思いながらバットを構え、振りぬいた。

 炎の槍4つまとめて俺のバットによって打ち返され悪魔に向かう。俺に向かって来ていた事で無理やり体勢を崩す事で直撃する事はなかったが壁に当たり魔法は爆発と共に消える。

 貫通した後に爆発を起こすまでがこの魔法の発動範囲なので予想通り。


 爆風によって悪魔は転がるがそれを見逃す俺ではない。

 転がる悪魔の顔めがけてサッカーボールを蹴る様な気軽さで悪魔を蹴り上げた。


「がっ」


 本当のボールのように上に飛び、悪魔の翼を広げてその場にとどまった。

 どうやら蹴られた事で少しは頭の血が引いたらしい。

 口元の血をぬぐいながら悪魔は次の攻撃をする。


 掌を俺に向けてまた炎の魔法を放つ。

 今度はファイヤーと言うただの火炎放射器の様な魔法であり、相手を火傷にするのが目的で使われる事が多い。

 その魔法も俺のバットの一振りで簡単に揺らぎ届かない。


 こいつ。他の1年生達を倒したなんて言っていたが本当にそれだけの実力があったのだろうか?

 魔法の練度も低ければ魔力量も大した事ない。たとえ下級魔法であっても練度が高ければ風くらいで揺らぐことはない。

 なんだか思っていた以上に弱いと感じていると悪魔は言う。


「テメェ……その目が気に入らねぇな」

「あっそ」

「俺の事なんて全く見てねぇな。他の連中と同じ、価値のない、見る必要のない奴を見る目。その目が気に入らねぇ!!」


 悪魔はそう言ってこちらに飛んでくるがまさかその手の形、殴るんじゃなくて俺の事を引っかく気か?

 だとしたら本当にこいつは無価値だ。


 あまりにもレベルが低すぎるものだから俺に触れようとするその指をバットで砕いてやった。

 砕けたのは中指だけだが曲がってはいけない方向に指は曲がっており、指の根元から折れたのがよく分かる。

 それでも痛みをこらえて反対側の手で引っかこうとするのはそれなりに根性があると言っていい。

 だがその中指を俺は先に掴み、反対側に折ってやった。

 そして悪魔は俺の頭の上を通り抜け痛みに堪えながら指を見る。


「指が、俺の中指2本が……」

「悲鳴上げないだけまだ上等。で、まだ続ける気?」

「っ!当然だろうが!!」


 そう言って今度は風の魔法か。

 少し威力が上がって中級魔法。だが今度は魔法の選択が悪い。

 強風を起こして相手を吹き飛ばす魔法だが俺は足の裏にオーラを集中させてかえしの付いた杭を作り耐えきる。

 体勢が後ろに反れた事で悪魔は俺を殴ろうとしてくるが中指が折れているため非常に不格好だ。


 そして俺はあえてバットではなく拳で迎え撃つ。

 何せこの悪魔、オーラで拳を覆う事なく殴ってくるのだからあまりにも防御力が低すぎる。

 そしてこちらは当然オーラで身を包んだ状態で殴るのだから防御力も破壊力もあるで違う。相手が素手ならこちらはメリケンサックを身に付けて殴っているような物だ。

 だから悪魔の中指はさらに複雑に骨折する。

 わざと指の付け根に向かって繰り出した拳は確かに砕いた感覚を俺に伝えてくれた。


「っ!」


 痛みに顔をゆがめる悪魔。本当にこの程度でルシファーの下僕になろうと思っていたのであれば片腹痛い。

 拳を振りぬき、悪魔が顔をゆがめている間にも素早く拳銃を取り出し肩に向かって発砲する。

 悪魔は発砲音に気が付いて顔を上げた時にはもうすでに遅く、すでに肩に銃弾は貫通していた。おまけに銃弾は銀製の聖属性をさらに付与した物。

 悪魔にとって毒が塗られた銃弾で打ち抜かれたのに等しい。


「があああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 痛みによって転げまわる悪魔。撃ち抜かれた肩を必死に抑えて痛みに堪えようとするが反撃する余裕は全くないらしい。

 それでもこちらは弱い人間だ。

 どれだけ痛がっていようとも、どれだけ苦しんでいようとも、弱いのはこちらなのだから徹底的にやる。

 痛みをこらえるためにじっとしている悪魔の太ももに向かってさらに発砲。撃ち抜かれた悪魔は再び痛みにもがき苦しみながら悲鳴を上げる。


「はぁ。もういいだろ。俺の勝ちって事にしてくれないか」


 ドームその外側にいる放送室に向かって口を開いた。

 放送室は慌てた様子で言う。


『え、あ、その。一応ルール上まだ敗北を認めていないので……』


 明らかに俺に怯えているな。

 そして同時にルールに縛られているから止める事も出来ないようだ。

 それなら殺すかっと考えていると悪魔は立ち上がる。

 そしてその顔には気持ち悪い笑みを浮かべながら、血と涎が混じった物を口から垂れ流しながら俺を見る。


「はぁ、はぁ、人間が。よくも俺の事をここまでコケにしてくれやがって……」

「当たり前だろ。お前みたいに弱い悪魔、ルシファーにはふさわしくない。二度と立ち上がれないようにしてやるからおとなしくしてろ」

「そう大人しくするわけないだろうが……」


 そう言いながらまだ動く腕を動かしてポケットをまさぐる。

 何かを取り出したかと思うと、それはカプセルだった。


「なんだそれ?」

「ドーピング剤だよ。お前なんかを相手にこれを使う事になるとはな!!」


 もしかして先生達が言っていた不正行為とはあのカプセルの事か?

 ドーピング剤を使用するところを確認し、どれだけの効果を生み出すのかその実験場にこの場を選んだと?

 いや、それはあり得ないか。

 仮にあのドーピング剤が正規品であったとしても、それは極秘裏に進めるべきもののはずだ。たとえまだ不完全な物だったとしてもこんな生徒や普通の教師達がいる前で使わせるか?


 そう考えてみるとあのドーピング剤と言われたものは悪魔が作ったものではない?

 何らかの裏組織から受け取ったヤバい薬という事なんだろうか?


 水なし一錠でカプセルを飲んだ悪魔。その効果はどんなものかと注目していると、悪魔ははぐれ悪魔になりつつあった。

 不自然に体が膨張して背が5メートル近くまで大きくなり、それに合わせて手足も太く、長くなる。

 肌は黒ずんでいき、俺が破壊した場所を覆い隠すように何やら鱗のようなものまでできてきた。

 黒い尻尾も生え、歯は牙に変わり、白目の部分まで黒く変色した。


 まるでその姿は黒い人型のオオトカゲ。しかもそれだけではなく呪われている。

 こんなタイミングで都合よく『龍化の呪い』を受けるとは思えない。

 つまりあのドーピング剤の本当の目的は、意図的に呪いを受ける事。


 そう冷静に分析していると口から魔力砲を吐き出した。

 流石にこれは受けきれないと察すると後ろに跳びながらバットで魔力砲を殴り、さらに高く遠くに飛翔する。

 床に魔力砲が当たった時、強化プラスチックのドームが激しく揺れ、床には大きなクレーターが生まれていた。

 呪いの効果で随分攻撃力が上がったらしい。

 その爆風で俺は壁に激突したがオーラで身を守っていたので骨や筋肉にダメージはない。ただ衝撃を受けて少し背中が痛いくらいだ。

 この攻撃力に満足したらしいはぐれ悪魔は調子に乗って言う。


『素晴らしいパワーだ!!これなら、これならこの人間を殺せる!!』


 ようやく俺を倒せるレベルになったからか、口調は戦う前の自信満々で調子に乗った感じに戻り、にやりと笑った。

 そして巨大化したからだで今までとは違う良い動きで俺に襲い掛かる。


 こいつ、マジで調子に乗ってるときはそれなりに強いじゃん。

 ただそれなりの理由は相手は自分より弱いと思っている時だけ。つまり雑魚相手にはいいけど、同等かそれ以上強い相手にはまったく実力を出せない雑魚だ。

 武術の武の字もない力任せの攻撃。だが巨大化した事によりひっかく様な攻撃でもかなりの風が俺を襲い動き辛い。

 鋭くなった爪が俺に触れそうになった時バットで防ぐことは出来たが、その勢いのまま壁に叩き付けられてしまう。


 さて、どうするかな?

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