交流試合
翌日。いつも通り学校があるので欠伸をしながら学校に行く。
授業中も欠伸ばかりで先生に注意されたが仕方ないだろう。帰ってきたときにはすでに深夜の2時、そこから風呂入って寝れたのは大体4時間くらい。今だって頑張って起きてるんだぞ。
だがそんなこと先生達には関係なく、結局何度も欠伸をして注意された。
放課後にようやく眠気がなくなり、疲労感が出てきても一応ロマンの所に来た。
「う~っす」
「随分眠たそうだね。コーヒーでも飲んで眠気を飛ばすかい?」
「お願いしま~す」
ここでも欠伸が出てつい間延びした返事をしてしまう。
そんな姿を見ながらもビーカーにコーヒーを注いでくれる。
「何でビーカー?」
「雰囲気が出ていいだろ?」
「雰囲気と言うかロマン?」
少し疑問に思いながらもブラックコーヒーを飲んで目を覚ます。
普段はあまりコーヒーを飲まないが、先輩のコーヒーは何となく飲みやすい。
大人しく飲んでいるとロマンが言う。
「ところで昨日は一体どこで銃を使ったんだい?戦闘データがあるのであれば是非提供してもらいたい」
「残念ながらバイトの内容は言わないように言われてるから無理」
「誤魔化さないのかい?」
「十分誤魔化してるだろ。こんな物騒なもん持ち歩くんだからそりゃ何してるんだって言われることくらい予想済み」
「では聞き方を変えよう。生徒会長がしているアルバイトと同じかな?」
「多分?会長がどんなバイトをしているのか知っているかは知らないけど、昨日は一緒にバイトしてたよ」
「ふむ。それなら仕方がないか。この学校で最も触れてはいけない部分だ、私も触れないでおこう」
本当に仕方がなさそうに言う。
でも触れてはいけない部分って何?
「なんだよそのヤバそうな話」
「ん?ああ、君は高校からの入学だったね。この学校には本当に触れてはいけない闇、あるいはブラックボックスと言われている噂があってね。その1つが会長、水地涙のアルバイトさ。幼少期の頃から理事長である水地雫の手伝いの事をアルバイトと言っていたのだが、その事に触れようとすると記憶を消される。なんて噂が流行ったのさ」
「流石にそれは嘘でしょ」
「ああ嘘だった。真実は社会の闇に触れてしまうから理事長と一部の教師達が触れないよう遠ざけていただけさ。色々黒い噂もあるからね」
黒い噂か……俺よりはマシだと思いたい。
「そんな噂の1つに関係している君の口からどのようなアルバイトをしていたのか聞くのは非常にまずい。だから聞かずにおくのさ」
「ふ~ん。ちなみに偶然深く知っちゃった生徒とかいないの?」
「偶然ではないが水地涙のストーカーをしていた生徒が見せしめにされた。どちらかと言うとストーカー行為に対しての見せしめだったかもしれないが」
「何されたんだよ」
「ストーカー行為の証拠を校内新聞に取り上げられたのさ。表向きは生徒が作ったと言われているが、実際には教師が絡んでいたと思う。単純に校内新聞を作っている委員会の顧問とかではなくてね」
「それでそいつ本当にアルバイト内容見たの?」
「それに関しては不明さ。すぐに彼は転校してしまったからね。新聞もすぐに回収されて廃棄処分。真相は闇に葬られてしまったのさ」
格好つけながら言うロマン。俺としては何だそんな事かっと言う感想しかない。
でも本当に触れようとしてこないという事は危機感はあるという事なんだろう。
触らぬ神に祟りなしとでも言うべきか、触ったら大火傷では済まないと感じているのかもしれない。
「それはそれとして、もうすでに君のクラスは言われているかな?」
「言われてるって何が?」
「交流試合だよ。各校の生徒達が交流する交流会さ。そこで戦闘科はその学校の同学年と戦うはずだ」
前世の頃にはなかったイベントだな。
血の気が多いから他校と戦う目的で交流したら大惨事になると思っていたんだろう。
当時の治療技術も今ほど凄くはなかったし、下手すりゃ死んでいたかもしれない。
だから開催しなかったんだろう。
「それで交流する相手の学校ってどこなんだ?」
「悪魔の学校である私立リリン。悪魔の学校の中では最上位の学校だ」
「げ。マジでお貴族様の学校じゃん」
悪魔の学校私立リリン。
悪魔の中でも選ばれた存在、名のある悪魔の貴族の中でも特に才能があると言われる悪魔のトップクラスの連中だけが通う事が許される本物の貴族学校。
頭脳、礼節、戦闘能力、家の特性などすべてがトップクラスでないと通う事ができない悪魔の学校だ。
それなら生徒は少ないんじゃないか?っと予想するかもしれないができるだけ近い分家や、そのトップクラスの生徒を世話する執事やメイド、あるいは既に部下になっている悪魔などがその生徒の付添人として入学する事が可能。
執事やメイドと言った使用人に関しては最大50名、一緒に生徒として入学できる者は10名までと決まっていたはずだが……あくまでも前世の知識だ。今も変わらないとは限らない。
だが悪魔も寿命が存在しない種族だし、20年前後ではそう簡単にルールが変わるとは思わないが違う可能性がない訳じゃない。
だから基本的にリリンに通う生徒達は各御家の次期当主とか、魔王の家系の部下になる事がほぼ決まっている。
カエラのようななんちゃって悪魔とは大違い。ガチでマジの本物の悪魔の学校だ。
「名前くらいは知っていたかな?」
「一応。本物の悪魔が通う学校とだけ知ってる」
「まぁその認識で間違いない。彼らこそソロモン七十二柱に数えられる悪魔や魔王と言った存在達ばっかりが通っているのだから。しかし少し認識を改めるとすれば、一応彼らも私達と同じ子供という事だ」
「そりゃ子供だろうけどそんな大きな違いか?」
「違うとも。いくら悪魔の中で優れていると言ってもそれはあくまでも同世代での話。ほんの少し上に顔を向けるとそれ以上の化物達がいる。いや、彼らの場合は大魔王がいる、とでも例えた方がいいか」
大魔王。
それを聞くとあいつを思い出す。
正真正銘魔法の血を継いだ悪魔の王子。
チートだった前世の頃の俺とタメを張った同じチート野郎。
家系、才能、カリスマ、知略、様々な面で活躍しあれが魔王かと心の底から思った。
少し調べてみるとそいつはもうすでに魔王の地位に立ち、様々な悪魔を導く大魔王として君臨していた。
これに関しては順当と言うか、当然の結果だなっと思う。
元々悪魔は血筋を重視する。
相当なぼんくらではない限り最も血の濃い物が家督を引き継ぐ。
だからあいつが魔王の地位に着いたのは必然だったわけだ。
「でもその大魔王さまの子供が出てくるわけではないでしょ」
「流石に子供が生まれたとは聞いてないね。そう言う意味では幸運かもしれない。だがそれでも相手はそんな貴族に選ばれた者である事は間違いない。そう言う意味では気を付けておいた方がいい」
「それも分かるが、何でそんな話をするんだ?何かやりたい事でもあるのか?」
俺がそう聞くとロマンはわざと怪しい雰囲気を出しながら言った。
「ふふふ、何その時には私の実験に付き合ってもらいたいと思っただけさ」
「実験ってもしかしてロマンが作った武器をその時に使うとかそんな感じ?」
「その通り!!実戦形式でのデータ収集に協力してもらいたいんだ。もちろん勝ちたいだろうから使うタイミングがあれば使うという感じでいい。出来る限り全て使ってほしいとは思うがね」
「なるほど。言いたい事は分かった。でも普通に聞くけどさ」
「なんだね?何か不満でも?」
「そうじゃなくて、最弱の人間がその交流試合に参加できるのかな?ってとこ」
「……………………」
どうやらそこまでは考えていなかったらしい。
こればっかりは運なのか、それとも言い出しっぺの法則なのか、その話題が出た時に聞いてみないと分かんないな。




