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転生者の贖罪  作者: 七篠
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任務終了

 はぐれ悪魔が塵になったのを確認してからシスターの元へ向かった。

 結構強めに吹き飛んだ気がするが、生きているだろうか?


「シスター、大丈夫ですか?」


 既に会長と日芽香に治療されているが、まだ痛そうに腹を抑えている。


「ミスター柊。はぐれ悪魔の討伐おめでとうございます」

「いや、無理して話さなくて大丈夫ですよ。結構ダメージ大きいでしょ」

「ええ、想定より少し」


 口から血が出ているのに少しなんてものじゃないだろ。

 絶対あの攻撃で内臓までイカレてるって。


「会長、日芽香さん。シスターの状態は?」

「今治療中ですが、思っていたよりは内蔵にダメージは行っていないみたいです」

「加護や魔法のおかげ。防御魔法を使っていたからこの程度で済んでたけど、効果が切れてたりしたら本当に死んでたわよ。シスターも無茶しすぎないで」

「申し訳ありません。急ぎ過ぎてしまったようです」


 そう苦笑いを浮かべながら言うシスターだが、あまりいい状態とは言えない。

 そう思っていると堕天使たちがやってきて敬礼をしてから言う。


「本日もありがとうございました。シスターアンジェリカの治療はこちらで引き継ぎます」

「よろしくお願いします」


 こうしてシスターの治療は堕天使の人に引き継がれた。

 他の堕天使たちもやってきて壊れた校舎や校庭の復旧を始める。人目がない所とは言え戦闘現場をそのままにしておくわけにはいかない。

 誰かが興味本位で入って怪我でもしたら大変だ。

 俺達はシスターの治療が終わるまで壁によりかかったり、しゃがんだりしながら待っていると会長は俺の事を軽く睨みながら言う。


「それで、その私物は一体どこで手に入れたんですか?」

拳銃これですか?知り合いに用意してもらったんです。かっこいいでしょう」

「はぁ。そう言った物の持ち込みは事前に言ってください。銃弾探しなども頼まなくてはいけないのですから」

「すみません。いいチャンスだと思ったのでつい」

「でも柊ちゃんの判断力は実際よかったわよ。はぐれ悪魔が必死に回復している時に近付くのは危険性が高いし、狙いも正確で速かった。その拳銃さばきはどこで学んだの?」

「普通に訓練してただけですよ。おもちゃのエアガンから始めて、モデルガンで練習して、そして現在は本物を使って練習をしていたってだけですよ」

「その本物はいつ手に入れたのですか?」

「つい昨日です。ロマンっていう先輩に協力してもらって手に入れました」

「ロマンってまさかロマングループ?」

「はい。カエラも言ってましたけど本当に悪い意味で有名なんですね」


 素直に作ってもらった拳銃に関してはいい出来だ。と言うか拳銃のオーダーメイドってあるのか?

 おそらく特撮オタクの部分が出て色々誤解も生んでいるんだろう。技術者としては腕が立つと思う。


「あの人は……色々癖が強くて問題も多いですから……」

「話してみるとそんな悪い人ではないんですけどね」

「あの人の場合良いとか悪いとかじゃないんですよ。柊さんが持っている銃の様に気に入った相手にはとことん甘いんですから」


 ため息をつきながら言う所を見ると今までもこんな感じだったんだろう。

 それよりも修復作業をしている堕天使たちを見て思う。


「みなさん心は天使のままなんですね……」

「知っているんですか?天使だった頃の彼らを」

「あくまでも知識の中だけですが、聞いていた通りです。ただ……輪が無くて翼が黒い」


 堕天使になってしまった証拠として神から天使の輪と白い翼を奪われる。黒い翼は罪人の証、そして神を裏切った証拠として永遠に黒いままになる。

 別に彼らは神を裏切った訳ではない。心から神の事を敬愛していたし、復活を望んでいた。

 しかし神から見れば彼らの心はあまりにも成長しすぎていた。

 その理由の一つとして神の不在により天使達自身が考え、行動しなければ信者達を守る事が出来なくなったことも理由だろう。

 ただし神ではないので人間が法を定めたようにいくらでも抜け道はあったし、間違った判断もあっただろう。

 だがそれでも神の残したものを守りながら復活を待っていた天使達を堕天させると言うのは酷い話だ。


 実際前世の頃に会った天使達は毎日神への祈りを捧げ、信者達を守り、日々ブラックな環境であったことは間違いなかっただろうに頑張っていた。

 神が不在であることの弊害として新しい天使達が誕生する事もなくなり、悪魔や堕天使との小競り合いで天使が減れば増やすことは出来ない。だからこそ人間、退魔師エクソシストと協力したりしてパワーバランスの維持を続けていたのだ。

 それそれは天使の烙印を押された今でも、天使だった頃を忘れる事が出来ず今も天使もどきとして活動を続けているのだとすれば、あまりにも哀れだ。


「……どうにかして天使に戻せねぇかな……」

「柊さん。それは奇跡の神が作り上げたシステムに干渉するという事ですよ。不可能です」


 システムと言う言葉は最近できた言葉だ。

 簡単に言えば聖書を読み上げると悪霊や悪魔が苦しむ、悪霊や悪魔が十字架でダメージを負うなど、そして最終的には人類に様々な奇跡を起こすために作られた天国の最奥に存在すると噂される術式。

 だがこの術式も神の不在や消滅によって年々力が弱まっている。

 とくに19年前の戦争で神が倒された事実からかさらに術式が弱まっている。おかげで力の弱い十字架などでは効果がほとんどないらしい。


 その術式には神が天使を堕天使に変えるための術式なども組み込まれているとの噂だ。

 何せ奇跡を起こす術式なのだからどこまで行っても噂から出てくる事はないし、誰も見た事がない。それは最上位の天使達ですら見た事がないのだからいくつもの金庫の中に入ったお宝の様に大切にされているんだろう。


「普通に考えれば不可能です。と言うか今の天国に行く方法すらないらしいですからね」

「全くない訳ではありませんが、天使達がいないのですべて不法侵入とされ迎撃されてしまうんです。それにあの神が作り出した天使達が今の天国にいるなんて噂もありますし、その可能性は非常に高いかと。何せ誰も干渉できない場所ですからかなり都合がいいかと」

「そう言えば一応は悪魔側が管理している地獄だか辺獄だかに天国に通じる道がありましたね。でもそこから入ったら不法侵入で即迎撃と。自動迎撃システムは大した事ないと思っていましたが?」

「例の戦争時にかなり迎撃レベルが引き上げられたようです。と言うか何でそんなことまで知っているんですか?ツーさんから聞いたんですか?」

「いえ、ただの予想です」


 本当は前世の頃の実体験だけど。

 でも天国って本当は結構暇なところなんだよね~。本当に信者達がゆっくり過ごすための場所と言うか、穏やかな牧場と言うか田舎と言うか。

 娯楽施設も何もないど田舎だがとにかく自然があふれていて落ち着いて過ごす事ができる。

 それにもちろん生前から善人だった人達しか天国には居ないのでご近所トラブルも特にない。

 死んでいるから食う必要もないし、一日中遊んで過ごすか、絵を描いたりして過ごすしか思いつかない。ゲームや漫画はダメなんだと、欲を刺激する物が多いからだってさ。


「本当に予想ですか?何と言うか、実体験を語っているような、奇妙な説得力があるんですけど」

「そんなもんありませんよ。とりあえず今回はシスター以外大きな怪我もありませんし、あとは天使さん達に任せていいんですかね?」

「ええ。彼らが事後処理をしてくれるので帰っても大丈夫です」

「それじゃ明日も学校ですし、帰りましょうか。天使さん達!後片付けよろしくお願いします!!」


 俺が大声でそう言うと、天使達は「お疲れ様でしたー」っと返してくれた。

 そんな俺と天使達のやり取りに会長は言う。


「彼らの事、天使と呼んでくれるんですね」

「そりゃそうですよ。天使の輪を失い、翼が黒くなっても天使でいようとし続けているのであれば。天使と呼んでもいいんじゃないですかね」


 俺はそう答えた。

 そしてシスターは怪我をしたので病院に向かい、俺達は日芽香と一緒に同じ車に乗って帰るのだった。

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