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転生者の贖罪  作者: 七篠
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週に一度の訓練

 前世の頃の家族構成について軽く話しておこう。

 父は神薙一と言う滅技を開発した張本人であり、人間ではなく神だ。と言っても神道のような名前のある神ではなく地元信仰が生まれた元々は小さな山の神のような物。それがのちに長い時間を掛けて自然界の力を取り込み、長い時間を掛けて知識を集めていった事で他の神々も無視する事ができないほどの存在となった。

 滅技も元々は父がまだまだ弱かった頃に、人間が武術と言って相手を効率的に倒すために訓練していたところを見て自分なりに開発したのが始まりらしい。

 そんな父と神と言うよりは精霊や妖精に近い自然界の純粋なエネルギーだけで生まれてきた母、そんな2人の間に生まれたのが前世の兄と妹になる。


 そして俺はそんな父の友人の子供、つまり家族と言っても血の繋がりは一切ない。

 血の繋がった方の両親は本来生まれる事ができないはずのルールをゆがめて俺を産み落とした事により母が消滅しかける。父はその看病で母の消滅を避けるための結界内に閉じこもっていないといけなくなったので俺を育てる余裕がなく、友人であった神薙一に俺を預けた。


 簡単に説明するとこんな感じ。

 設定盛り過ぎの主人公かっと自分でも思うが実際にそうなっていたのだからどうしようもない。

 だからさっき現れた妹も本当は義理であり、血の縁はないが……それでも幼い頃から一緒に暮らし、育ってきた記憶がある。

 悪い事をしていた時期にこっそりと父に連絡した時、毎度妹が寂しがっていると言う言葉を何度も耳にした。

 でも当時の俺はそんな事お構いなしで強くなるために時間を使ってばかりいた。


 何の根拠もない、どうせまた会えると思いながら結局俺は死んだ。

 親不孝どころか周囲の人達を悲しませたのだから本当に大したもんだ。

 俺以上のクズは存在しないだろう。


 とにかく、そんな前世の頃の妹に不意打ちであってしまい気が動転してしまった。

 まさか吐くとまでは思っていなかったが……

 とりあえず吐いてしまった事を隠すために水道でうがい手洗い、洗剤はないが顔を洗ったりして匂いなどをごまかす。

 服とかにかかってはいないはずだから洗わなくてもいいはず……


 入念に確認した後男子トイレを出た。

 出るとリルが待機して心配そうに鳴く。


「大丈夫だ。それより臭くない?」


 袖などから匂いが付いていないか確認しているが……吐いたばっかりだとよく分からない。

 しかしリルは多分大丈夫……多分。っと反応を返す。

 狗の鼻は十分吐いた後であると分かってしまうのだろう。通常の人間と変わらない嗅覚だとどうなるのか分からないのであるなら仕方ない。


 なんて思いながら生徒会室に戻り謝罪した。


「申し訳ありません。いきなり失礼な態度をしてしまって」

「体調不良だったみたいだし大丈夫よ。それより落ち着いた?」

「はい。おかげ様で」

「それじゃ自己紹介から始めましょうか。私の名前は神薙日芽香。あなた達候補生を鍛える教官であり、任務を行う際には上官として一緒に行動するからよろしくね」


 神薙日芽香。

 改めてみると本当に大人っぽく成長したが、童顔である。ポニーテールで髪をまとめ、スーツ姿で歩く姿は社会人として堂々としていた。

 それでも誰とでもすぐに打ち解ける性格は変わらないようで、人懐っこい表情をしている。

 成長に喜びつつも日芽香がどうしてこのような立場に居るのかが分からない。


「神薙さんは何故教官を?それから正規メンバーの1人なんですか?」

「まず教官をしている理由は雫さんと協力関係にあるからね。家、滅技を教える立場でもあり、みんなにも滅技を教える必要があると思うから協力関係にあるの。簡単に言えば派遣ね。だから正規メンバーではないの」

「神薙さんは凄く強そうに見えますが……それでも正規メンバーにはなれないんですか?」

「私の場合はメンバーにならないの。一応家の事もあるし、あまり長く家を空けたくないから」

「そうなんですか」


 どうやら今も実家にいるみたいだ。

 他の家族が元気にしているかどうか気になるところだが、今聞いても不審がられるだけだろう。

 俺は口の中をさっぱりさせるために紅茶を飲んだ。

 やっぱゆすいだとはいえ気持ち悪さが残っていたが、お茶でリセットできたっぽい。


「これからあなた滅技を覚える訳だけど、あんた本当にやる気あるんでしょうね。滅技の修行はかなり厳しいわよ」

「それに関しては覚悟しています」


 また銀毛が俺の事を睨みながら言ってきた。

 俺本当に何かした覚えないんだけどな……そう思っていると日芽香が呆れながら言う。


「銀毛さん。確かに彼はタマさんの治療を受けているだけなんだからそう敵対心を出さないで」

「別に。彼は金毛家とかかわりのある人間でない事は知っていますから」

「ごめんね柊ちゃん。銀毛さんはタマさんとか妙さんの話になると意地を張るところがあって、柊ちゃんもタマさんの関係者だと思っちゃってるみたいだからつい言い方がきつくなっちゃうのよ」

「はぁ」


 何と言うか全く納得できないが一応返事をした。

 前世の頃はともかく、現世ではただの患者と医者、実験対象と研究家のような関係でしかない。

 と言うか妙の奴も対象か。どうやら金毛家その物に強い嫉妬心のような物があるらしい。


「あの、本当に先生とは患者としか関係がないと思うんですけど……」

「それでも銀毛さん、金毛家に恨みを持っているみたいなのよね。柊ちゃんまで巻き込んじゃってごめんね」

「それはまぁ大丈夫かと。それよりもちゃん?」

「あ、ごめんね!やっぱりさんとか君とかの方が良かった?」

「いえ、呼び方は何でもいいんですが、なんでちゃんなんだろうと思って。みなさんにはちゃん付けじゃないみたいですし」

「う~ん。何でだろう?私でも自然と出たし、ちゃん付けの方が呼びやすく感じたからかな?」


 本当に自然と出たようで大した理由はないように感じる。

 でも俺から見ると前世の頃にお兄ちゃんと言われていたから、自然とちゃん付けになったのではないかと思ってしまう。

 考えすぎだと言ってしまえばそれまでだが、それでもそう考えてしまう。


「まぁ好きに呼んでください。名字が佐藤なので下の名前で呼ばれる事の方が圧倒的に多いですから」

「ありがとうね柊ちゃん。ちなみに我流で滅技を覚えたって本当?」

「ええ一応ですが」

「それなら今度教官としてきたときに見せて。我流となると変な癖がついてたりするかもしれないし、下手をすれば矯正が必要かもしれないから」

「分かりました。ちなみにこの日みたいに決まっていたりするんですか?」

「そうだね……基本的には日曜日に行う事が多いかな。みんな会社で働いていたり、用事があったりするからどうしても用事が合うのがそうなっちゃうんだよね。何か決まった用事とかあったりする?」

「いえ、特にありません。ぶっちゃけ俺はまだ学生なのでこの中では1番自由があると思いますから」

「そう言ってもらえると本当に助かるよ。それぞれの予定があって全員揃わない事も少なくないから、それだけは覚えておいてね」

「分かりました。ちなみにいつから始める予定ですか?」

「来週の日曜日から始めるつもり。大丈夫だよね?」

「大丈夫です。行けます」

「それじゃ来週からよろしくね、柊ちゃん」


 こうして意外な再開があったが乗り切る事が出来た。

 それにしても来週から妹にしごかれるのか。

 元兄としてちょっと複雑。

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