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転生者の贖罪  作者: 七篠
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見逃され、対策を練る

 逃がされた、見逃された、あるいは正体不明だから深追いはやめた。

 俺が昨日の夜に逃げ切れた理由はこの辺りだろう。いや、逃げ切れたと言うのもおかしな話か。

 何せ俺の影の中にはリルと言う大神遥の姉がいるのだからちょっと口添えをすれば簡単に判明する。そんな状況を逃げ切ったなどと言うのはおかしな話だ。


 と言うか本当にリルは俺の事を何も言っていないのだろうか?

 雰囲気から察するにリルは本当に家に帰って寝ていたようで、朝起きるのを嫌がる俺を無理矢理たたき起こした。

 母はそんなリルを褒めて今俺は学校に向かっている。

 リルは俺の影の中に入って今日も護衛をしているが本当に大神遥に何も言っていないのだろうか?

 なんて疑いながらもイヤホンからヤドリギの報告を聞いていた。


『昨日施設に潜入して得られた情報はおそらくあまり重要な物ではないでしょう。本当に重要なデータと思われるところは殺意マシマシのデータ部分にあるようでしたし、そもそも電子データに変換していない可能性の方が高いと思われます。あるいは施設内限定のネットワークを使っているかですね。なので今回手に入ったのは日本以外の施設の場所、そして間取り図です。それから大雑把にですがどれくらいの人が収容されているのかの人数に関してのデータがありました。以上です』


 施設の場所と見取り図はともかく、あの阿修羅の子供のような特殊な存在が居るのかどうかの情報くらいは欲しかったな。

 なんて思っていると意外な報告も教えてもらった。


『それからNCDに関しても少し情報がありました。どうやら各政府はNCDをテロリスト集団として秘密裏に探し出し、逮捕する方向に舵を切っているようです。どうやら水面下で以前学校を襲った時のような事を各国でしているようですね。主に学校やその生徒を狙った犯罪が多い事から暴行罪、銃刀法違反、不法侵入などを理由に各国で動いているようです』


 まだニュースに乗っていないだけか?

 それとも学生の癇癪とでも扱われているのか、もしくは呪いによって暴走した人として処理されているのか、とにかく表に正しく伝えられてはいなさそうだ。

 うちの学校が襲われた時もネットニュースでは呪いによって暴走した学生達によるものと報じられていたみたいだし、完全に嘘を言っている訳ではない。


 それに天下のウロボロス様のご機嫌取りでもあるんだろう。

 理事長はこの問題に対して積極的に対策を取ろうとしている。呪い対策について協力してもらえる日本としては理由は何でもいい、この日本にとどまってくれるのであればなんだってしようという感じだ。

 何せ世界最強が日本に居ると言うだけでこの国を攻撃しようとする外国や他の神話から攻め込まれる可能性は非常に低くなる。

 まぁ外国も他の神話の神様達も日本のサブカルチャー、漫画やアニメで自分達がかっこよく描かれている事に対して好意的みたいだしな。

 ある種日本は様々な神話体系に対して敬意を持っているから気に居られているという面もある。

 お忍びでどっかの神様が日本に旅行しに来ていた、なんて噂があるくらいだ。

 そのくらい日本は他の国の神様を認めていると言っていい。


『報告は以上です。まだダークウェブで情報を探しますが、マスターは授業寝ないよう頑張ってくださいね。それでは』


 そうヤドリギは言って俺のスマホから家のパソコンに移動しただろう。

 イヤホンを耳から外しながら欠伸をする。

 欠伸はただの寝不足だけではなく、指の痛みを紛らわすために使っていた。左手は小指だけだが右手は親指もおられてしまったため日常生活に支障が出ている。

 指の形状、位置などは治せたがまだ少し腫れているし痛みも残っている。しかも痛みでろくに寝れなかったから寝不足と痛みダブルパンチ。日常を過ごす事で疑われないようにしたいと思ってはいるが、やっぱサボりたかったな~。


 そう思いながらも普通に授業に参加し、特に変わった事もなく授業を受けた。

 だがやはり鋭い奴は鋭い。


「佐藤さん何か怪我でもしました?」


 表桃華が俺にそう聞いてきた。


「え?そんな風に見えるか?」

「はい。なんとなく字を書くときに手を痛そうにしているように見えたので」

「ちょっと突き指しちゃってさ、軽~く痛いんだよね」


 痛いと言う部分はごまかさずその原因だけをはぐらかした。


「そうだったんですね。なにかこう、字を書くときに小指をかばっているように見えたので」


 やっぱりバレてたか。

 他のクラスメイト、カエラなんかは特に気付かずいたのでうまくごまかせたと思ったんだけどな。

 そう思いながらも俺は再び魔導書を書いていた。


 何でまた魔導書を作っているのか?それは魔導書本来の使い方をするためだ。

 前にも言ったが魔導書は補助道具だ。詠唱の長い魔法を簡略化してすぐに発動できるようにしたり、魔力消費量の多い魔法の消費量を少しでも減らすために持ち歩く。

 で、俺が今回作っているのは呪いや回復をメインにした防御回復系の魔導書。一般的に出回っている魔導書はこちらの方が多い。

 攻撃系魔法では微調整が必要な事があるので本来攻撃系魔法は本当に魔力消費量が多い物を簡略化するための物ばかり。つまり戦争で使う超強力な魔法をぶっ放すための物である事が多い。

 しかし防御系にすればお守り、海外ではアミュレットと言う小物にして持ち歩く事に関しては法にも触れない。

 銃を持ち歩くのは犯罪でも、防弾チョッキを着て歩くのは犯罪にならない感じ。


 だから回復防御系の魔導書と言っても身を守るための鎧を用意していると言う方が正しい。

 とりあえず基礎的な回復魔法、自己回復力を上昇させるものと様々な呪いに対応できる物を書いているが……やっぱり呪いの対処は難しい。


 分かりやすい呪いの対処としては呪いを解除する事ではなく、身代わりを用意する事。

 架空の相手が俺の事を倒そうと呪った際に俺ではなくあらかじめ用意していた身代わりを呪う、これが最も簡易的な呪いへの防御だ。

 分かりやすい物なら自分の髪を入れた人形とか、血で自分の名前を書いた人型に切った紙などが非常に簡易的な物になる。


 その次の段階で難しい呪い対処法が呪詛返し、つまり呪ってきた相手のそっくりそのまま呪いを反射させる。

 ただ口で言うのは簡単だが単純な呪いの強さ、対応していない神話や技術の呪いであった場合呪詛返しする暇もなく呪われる可能性の方が圧倒的に高い。


 で、一番難しいのが相手の呪いを解除する事。

 何せ自分だけではなく周囲にも被害出ないようにしなければならないから。

 呪いの厄介性は対象だけではなくその対象の周囲にも呪いをばらまくような物を使用する事が多い事。例えば俺を対象に呪った時、俺だけではなくクラスメイトや両親も巻き込んで発動させようとしてくる事が圧倒的に多い。

 少しでも被害を大きくしたいのか、それとも狙った相手だけではなく周囲も不幸にしたり攻撃しないといけないくらい恨みが募っていたのか、理由は様々だろうが絶対1人だけで終わるとは思えない。


 だから今回はこのノートを使って呪いを俺から俺の名前を書いた紙人形に移す物を中心に作っていこうと思っている。

 ただの身代わり人形としか使えない最低限のものだ。上質な物を使えば呪いだけではなく物理攻撃も俺ではなく身代わりが食らう事が出来るのだが、今俺が使える素材ではこれが限界。


 回復に関しては別のノートに解毒や麻痺と言ったゲームのような物を中心に書いていく。

 元々回復系は得意ではないし、深い知識がある訳でもない。こればっかりは得意不得意と言う奴だ。

 それに本格的に核となると医療知識も必要になるしな……

 傷をふさぐ回復魔法を使ったのはいいが、傷をふさぐだけで体内に土やウイルスが入ってしまい後からうみや何かの破片が痛みを引き起こすなんて言う初心者めいた事故がたまに起こる。

 そうならない自身もないので自己治癒能力の上昇くらいの回復魔法に留めておくのだった。

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