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転生者の贖罪  作者: 七篠
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一難去ってまた一難

 襲い来る人達を一撃で倒し続けていると俺の中に呪いが溜まり、エネルギー総量がどんどん増えていくのが感じられる。

 低空飛行をしながら倒した後はできるだけ怪我をしないよう受け身を取れるように転がしながら廊下に置いておく。

 この施設の職員達が呪いから解放されている人達を回収しているのは分かる。周囲の音、気配で俺が倒した人達をどこかに連れて行っているのは分かっていた。

 それと同時に俺を警戒している人達も非常に多く、俺への視線がどんどん増えていく。


 最後の1人から呪いを回収した後、扉を破壊してたどり着いた部屋はだだっ広い場所だった。

 足元はコンクリートの上から砂が敷き詰められ裸足で歩いても問題ないように管理されている。ただ砂の下はコンクリートだから叩き付けられたりしたら痛そうだなっと思う。

 それにこの場所は透明なガラスかプラスチックで蓋がされており、上から様子を見る事が出来るようになっている。

 こちらから外の様子が分からないのはマジックミラーのような効果でもあるんだろうか?


 そう思っていると阿修羅の子供が俺に追いついた。

 ゆっくり走っているくらいの速度だったのでようやく来た。ここなら広いし、おそらくここで呪われた人達の洗脳の力を調べていた場所である可能性は高い。あるいは運動だろうか?

 なんにせよ広い場所で戦えるのは俺もやりやすい。

 それに最初に戦った時に子供の弱点もよく理解できた。エネルギー量も申し分なし、これなら勝てる。


 向こうも俺が戦う気だと分かったからか、走りながら俺を攻撃しようとする。

 俺は右手を引いて、がに股でどっしりと構えて動く気はないと示す。

 子供は動こうとはしない俺に対して何の疑問も考えず突っ込んできたところを、俺は子供の顔面に掌底を浴びせた。

 つまり俺がやった事は相撲のツッパリだ。

 子供相手だからあまり体重を乗せないよう手加減して本当に腕の力だけで放ったが、それでも子供は吹き飛んだ。


 子供は流石阿修羅一族の子供と言うだけあり、バク宙で体勢を治して着地したがめまいが起きたようにフラっとよろめいた。

 体重を乗せていないとはいえオーラによる衝撃をもろに受けたのだから仕方がない。

 少し顔を振ってこちらを睨むとすぐにまた突進してきた。

 やはり神の血を引いていても子供。戦闘技術はないし理性が吹き飛んでいるせいで術も使えない。いや子供だからまだ術を学んでいない可能性もあるか。


 元々阿修羅一族は術よりも身体能力を重視していたところが多かったし、複雑な術は神具で補う事が多かった。

 有名なのは空中を滑ったりする術だったか。でもこの子供はまだそれも出来そうにない。ならばエネルギー量が同じくらいならこちらの方が上になる。

 単純な手足の長さ、術が使える、理性を失っていないからこそ様々な戦術を考える事ができる。

 力だけでは勝てないと分かっているのであれば知恵がある方が勝つのは決まっている。


 それにさっきの攻撃で相撲の技を使ったのは適当ではない。

 何せ相手は子供で俺より圧倒的に小さい。小さすぎる。殴るには一々しゃがまないといけないし、蹴るのは少しリスクが高い。

 それなら低姿勢のまま攻撃したり、相手を掴んで動けなくする方がよっぽどやりやすい。


 突っ込んでくる阿修羅に俺は耐性を低くしたまま頭から突っ込み頭突きを食らわせた。

 阿修羅の顎にまた当たり吹き飛びそうになったところの脚を掴み強く握る。

 呪いを俺の方に移動させるには明確に上下関係を叩き込めばいい。今まではそれが簡単に行かなかったから死闘となった。

 でも圧倒的な実力差があればそこまでしなくても呪いは俺の方に移ってくる。


 阿修羅を地面に叩き付け痛がる阿修羅を眺める。

 ドラゴンのオーラによって守られているからか意外と早く起き上がり、手が届かないのであれば噛みつこうとしてきた。

 そんな阿修羅をがっしりと体で受け止めてからのかんぬき。もちろん六本の腕全てを抱えてだ。

 外側にある腕が真ん中の腕を潰すように骨がきしみ、筋肉が潰れて液体状になりそうになる。

 阿修羅一族の宝であり象徴とでも言うべき六本腕が逆に苦しめる結果を生み出してしまった。


 阿修羅は苦しみながらも噛みつき、蹴ってくるがもちろんこれで終わりではない。

 リルと合体した纏、それの応用技とでも言うべき技を俺は使う。

 阿修羅はすぐに異変に気が付き叫びながら脱出しようとあがく。だが俺はそれを決して許さない。


 今俺がやっているのは相手とオーラを全く同じにして押してのオーラを俺側に引きずり込む、ゲーム風に言うならエナジードレインの俺バージョンとでも言うべきものだ。

 だがこれサキュバスとか吸血鬼とかそういう連中と比べるとマジで手間が多い。

 相手に合わせてオーラを変質させるのも面倒だし、その後のオーラを引きずり込むのは実力次第。つまり俺の方が弱かったら俺のオーラを奪われる可能性が高く、そう簡単に使う事ができない。

 それにこの技結構危険だったりする。

 相手に自分のオーラを奪われる可能性があるだけではなく、相手の魂に触れて直接オーラの奪い合いをすることになるので下手すれば相手の魂を破壊してしまう可能性があるからだ。

 魂が破壊された場合死亡と判定される。

 魂と言う物質が存在すると定義されているからそれを基準に死んでいるかそうでないか判断されてしまう。

 だからこの阿修羅からドラゴンの呪いだけを上手く取らないとこの子は死んでしまう。

 負けを認めれば呪いは俺の方に移るのだから負けを認めて欲しいのだが中々諦めない。神が人間に敗れると言うのはそれだけ屈辱的な事という事だろう。子供でもそれは本能的に理解できているのかもしれない。


 仕方なくギリギリまでオーラを奪い取り、弱体化してから俺は技を解いた。

 オーラを無理矢理奪われた影響か、脂汗を大量に浮かべて呼吸も荒い。はっきりとドラゴンの形をしていたオーラは薄れ、陽炎の様にうっすらとしか俺の目に映らない。

 だがこれだけ弱っているという事は大きなチャンスという事だ。

 俺は阿修羅から奪ったオーラも合わせてこれで決めると思い技を繰り出した。


「龍滅龍技、崩拳ほうけん!!」


 ドラゴンがドラゴンを狩るための技。それはドラゴンの鱗を割り、肉を潰し、骨を砕く技。

 俺が最も得意とする龍滅の技がようやく繰り出す事ができるくらいのエネルギーを得る事が出来た。

 だがエネルギー消費も激しいので一日一発が限界だろう。もう既に繰り出した後に疲労感が俺の重くのしかかってくる。


 殴られて吹き飛んだ阿修羅は透明な蓋のような物にぶつかり、蓋が粉々に砕け散りながらさらに遠くまで飛んで行った。

 死んでないよな?っと思いつつももう既にこの施設内に用はない。

 それに俺はこれから逃げなければならないのだからこれ以上エネルギーを消費するわけにはいかない。もう既に施設の人達が動き出し、俺を捕らえるための行動を始めているのだから。


 そう思いながらとりあえず上に向かって逃げればいいかと考えていると、かなり嫌な予感がした。


 本能の赴くままに体を動かすと本能通り俺の首を狙った容赦ない一撃が放たれていた。ほんのわずかでも避けるのが遅かったら俺の首は斬り落とされていただろう。

 それくらい鋭く、速く、気付きにくい一撃。


 さらに避けた先には筋肉が膨れ上がった男がいて確実に俺の頭を狙って拳を振り下ろしている途中だった。

 倒れながら足に力を込めて飛び込みどうにか避けたが複数のスーツを着た男女によって押さえつけられてしまった。

 またこの施設に潜入した時の術を使って地面の中に逃げようものなら生き埋めになりかねない状況にどうにか最後の力を振り絞って逃走を図ろうとすると、聞きなれた口笛が聞こえた。

 その方向に顔を向けると、そこには凛とした男が立っていた。


 白い髪に赤い瞳、冷徹に俺を見下ろすその男には見慣れた犬の耳。

 普通人間には聞こえない口笛と男から発せられるフェロモンによって統一されたクソ強い集団を束ねる犬のボス。

 大神遥がそこに立っていた。

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