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転生者の贖罪  作者: 七篠
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転入

 普通科から戦闘科に転入させると言う話が出たが、学校には普通にいつものクラスで授業を受けていたのでやっぱり問題ないのだろうと思っていた次の週の月曜日。

 いつも通り登校していると校門に人混みが出来ていた。

 何だろうと思っていると水地涙がいた。

 学校のアイドル様は誰かを待っているのか、校門で立っていたところを他の生徒に群がられたと言う所だろうか?

 一体生徒会長様が誰を待っているのか、全く興味がない訳ではないが足を止めるほどでもないので普通に校門を通ろうとした。


「申し訳ありません。待っている人が来たのでまた今度お話ししましょう。柊さん!佐藤柊さんちょっと待ってください!」


 …………声をかけられて嫌な感じがしたが、周囲に他の生徒達がいる状況で無視するわけにもいかない。

 なんか嫌だな~っと言う感情を表情に出さないようにしながら振り返った。


「どうかしましたか?生徒会長」

「今日は君大切な話があったので校門で待っていました。まずはこちらを」


 大切な話しとはいったい何の事だろう?そう思いながらも渡された封筒を手に取り、中身を見てみるとそこには『佐藤柊様を普通科から戦闘科に転入します』と言う紙が書かれていた。


「…………え、これマジ?」

「マジです。今日から柊さんは普通科ではなく戦闘科に通っていただく事になります。もちろんご両親にはご了承済みです」

「了承済みって!俺は了承してませんよ!!」

「ですがこれはもう正式に決定された事なので今まで通っていた普通科に行っても担任の先生も戸惑うだけです。ぶっちゃけ諦めてください」

「諦めてって……」


 流石に一方的過ぎて了承したくないと言う気持ちが強いが生徒会長は背伸びをして……届かなかったから俺にしゃがむよう手招きしてきたのでしゃがむと耳元に手を当てながらそっという。


「今回の話は柊さんの安全を保障するだけではなく、込み入った事情もあるんです。そしてそれは柊さんを守るためでもある事です。了承していただけませんか」


 その声色は真剣な物だったし、だますような雰囲気もない。

 少し考えた後ため息をついてから俺は言った。


「ならまずその俺を守るためってところを説明してください。納得するかはその後です」

「そのお答えで十分です。まずは理事長が今回の事を説明しますので理事長室に行きましょう」


 と言われて仕方なく理事長室に俺達は向かった。

 生徒会長の案内で来た久しぶりの理事長室。そこにはいつも通り理事長だけではなくサマエルもいた。


「お久しぶりです佐藤柊さん。今回の事は申し訳ありません」

「その辺りの事は何と言うか、色々諦めました。本当に俺これから戦闘科の生徒として過ごす事になるんですか?」

「そうなります。あなたはこれまで呪われてしまった方々の解呪に協力していただきました。本音を言えばこういった行為は避け、平穏に過ごしてもらう事こそが目的なのですがあなたは自ら向かっていく以上むしろ協力し、より力を付けてもらった方が安全ではないかと考えました。なので今日から戦闘科に転入し、授業を受けてもらいながら強くなっていただきます。サマエル」

「佐藤柊様。こちらが戦闘科の科目一覧と、教科書となります」


 そう言って机の上に置かれたのは数冊の教科書とその上に何枚かのプリント。

 とりあえず一番上のプリントを手に取って見てみるとそこに書かれていたのは授業の予定表だ。


「月曜日に基礎戦闘技能、火曜日に魔法基礎、水曜日に武具戦闘基礎……毎日何かしらの戦いに関する授業が入っているんですね」

「そうなります。ただし2年生になると自分が得意な科目を専攻してもらう形になるので取得範囲が広いのは1年生の内だけです。言い方を変えれば様々な事を選べるうちに転入できたという言い方も出来るかもしれませんが」

「なるほど……それで普通の授業の方はどうなっているんですか?むしろそっちの方が心配で」

「通常の授業は他の科と変わらない速度で行うよう指示していますが、対象のズレはあるかもしれません。なのでその場合は申し訳ありませんが各科目の先生達に聞いてください」

「分かりました。それから何で今週からなんです?前に聞いた時だとてっきりすぐかと思っていたので、時間が相手のが意外だったんですが」

「それは佐藤柊さんのご両親への説明や他の先生達への説明などに時間が必要だったからです。それからこの前の授業で1年生のほとんどが重傷となって授業に出られない状況だったからです。なので彼らのメンタルケアのためにもしばらく授業を中止させていました」

「なるほど、そうでしたか」


 一応聞きたい事は聞いた。

 だがいくつか矛盾があるように感じたので聞いてみる。


「最期に1つだけ。前にカエラに授業の事を聞いた時、傷付け合うような物はもう行っていないと聞きました。しかしこの前の授業、つまり不良グループのたまり場を襲撃した際の授業は彼女の言葉を信じると考えられない授業内容だと思うのですが」


 俺がそう言うと理事長はため息をつきながら言った。


「それに関しては大きな誤算が2つあります。1つは彼らNCDを名乗る者達が存在した事。これは単純に呪われている不良グループが存在していた事を事前に調査した際に見抜けなかった学校側の失態です。2つ目は彼らの意識の低さ。今年の1年生達の意識の低さは特に低いと私達教師陣は感じています。カエラさんから事前に聞いていた授業の感想もそうですが、相手を倒す際に自分は傷つかない、自分達は一方的に蹂躙できると何故か勘違いしてたのです。そんな意識も相まって今回の授業は散々でした。たかが数人敗れたくらいですぐに意識をなくし、敗北していったのですから」


 本当に呆れたように言う理事長は教育の仕方を間違えたと言う雰囲気がよく出ていた。

 同時にそれだけの自信がありながらあっさり負けたカエラ達への呆れも感じる。


「去年の1年生達も同じように訓練を繰り返してきましたが、彼らほど意識が低いという事はありません。強い弱いと言うのは魔力量や技術だけではなく、精神的な物、つまり殴られても心が折れないと言う点も重要だと考えています。そういった意味でも柊さんの転入は彼らにとってもいい刺激になるのではないかと思います」

「ちなみにやり過ぎた場合の罰則のような物はありますか」

「授業中のケガなどは全て事故として処理されます。実際その仕組みを利用して気に入らない生徒を集団でリンチしたという事もありましたが、授業中であれば問題ありません。保健室にあるカプセルに入れればすぐに怪我は治りますから」

「……分かりました。いい刺激になるよう頑張ります」


 既に転入する事は決まっており、さらに言えば今回の事件で甘ったれている1年生達に発破をかけろと言う所だろう。

 そうなると古臭いやり方で卑怯と言われても仕方がないやり方の方が良い刺激になるかもしれない。

 一方的な蹂躙と言う物はどういう物なのか、殴られても折れない心とはどんなものか、教えてやれと言ってるような物だ。

 前世があれだった分、今世は自分で鍛える程度でいいと思ったんだけどな……


「それから一応ですが、授業中にリルさんの力を借りるのはダメですのでご注意ください」

「流石にそこまでしませんよ!?」

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