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転生者の贖罪  作者: 七篠
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改造しすぎた?

「……はいオッケー。他に違和感とかない?」

「申し訳ありませんドクタータマ。肉体の感覚その物が初めてであり、全て違和感に感じてしまう事が多いです」

「あ~それもそうか。とりあえず痛みとかはないのよね?」

「痛みに関しては筋肉痛に近いものがふくらはぎにあります」

「湿布……とかじゃ意味ないか。それに体の構造からして生物とは違うから効果はないから……おそらく脳疲労ね。慣れていない感覚、初めての感覚に対して筋肉痛という形で表に出ているんだと思う。だからもう少しリハビリの方は回数を減らしたら?」

「それではマスターのお役に立つ時間が確保できません。少しでも早く器を使いこなせるようになりたいと考えています」

「それが悪い事とは言わないけど、やりすぎは悪いから。もう少し頻度を落としてその分効率的に、重点的にリハビリをこなしましょう。痛みはそれ以上するなって言うサインなんだから」


 少し離れた所からタマとツーの会話を聞いていた。

 ツーの体が上手く動かせない事に関して俺はタマに頼った。

 一応リハビリ関係の知識も持っているらしいので、もしかしたらと思い相談したら受けてくれた。

 そしてツーの体の事を言うと、他の人には聞かせられないからっという事でタマがそのまま担当してリハビリをしてくれている。

 本来のリハビリとは意味が少し違う気がするが、初めての体をうまく動かせないという点に関しては変わらないと言っていたので多分大丈夫なはず。

 こればっかりはタマを信じるしかい。


「ねぇ柊君。他に彼女の事改造した部分ってある?」

「直接いじったところはないぞ。最近は魔法で触覚とか嗅覚とか、五感の調整の方を優先してるからその筋肉痛ももしかしたら魔法で痛覚が敏感になってるかもしれない」

「そのデータ後で私にもちょうだい。本当体にガタ来ているのかどうかチェックする基準になるから。それから今数値的にどんな風に設定しているのかも教えて」

「その辺ぶっちゃけ難しくてさ、人によって熱い冷たいも基準が違うじゃん。だから細かい調整必要だったらむしろアドバイスちょうだい」


 こんな感じでツーの体をより細かく調整する日々が続いていた。

 ある程度ツーが発音、運動できるようにはなったが細かい作業に関してはまだまだ。

 例えばペンをもって文字を書いたり、箸を持って食事するような事は出来ない。

 食に関しては必要ないが、そう言った細か作業はこれからも練習あるのみ。


「それにしてもよく痛みに関する数値をデータとしてまとめられたわね。こういうの個人差が出るものなのに」

「だからぶっちゃけ安全性を取れる絶対値だけデータ取してあとは余裕をもって痛みを感じる数値を設定した。だからむしろ一人も痛みに敏感かも」

「マスター。この体はゴーレムと作りは変わりません。なので痛覚は不要ではないでしょうか」

「そうか?でも痛みが無かったら何が危険なのか、危険ではないのか判断できないだろ?」

「ですがいざという時に痛覚が判断や行動を阻害する可能性が高いと予想されます。不要ではないでしょうか」


 そう言われてみればそうかもしれないが……

 これに対してタマは自然と答える。


「痛覚は必要ないかもしれないけどどれくらい損傷しているのか知る方法は必要よね。それを痛みとして表示するか、それともただ単に数値で表示する科は二人で相談しなさい」

「まぁ実際に痛覚を与えるよりはただの数値の方が楽だわな。ところでツーってどれくらい人間に近付きたい?」

「人間に対して憧れはありません。マスターをサポートする存在として最適なチューニングを希望します」


 ……そういう事なら痛覚とか入らないかな?

 元々本体は木のまんまだし、人間に近付かせようと考えすぎたか?

 そうなると歩行の他に必要となるのは温度管理や圧覚センサー、視覚とかは大丈夫そうだから他に必要な物を魔法で取り付けていけばいいのか?


「あと魔法の発動に関しては問題ないんだよな?」

「問題ありません魔法発動まで時間にして十万分の一秒の誤差で発動する事ができます。神仏を相手にしない限りは対応可能かと推測します」

「お、おう。思っていた以上に速いな」


 魔法使いにとって魔法の発動速度は命を大きく左右する。

 ガンマンの早撃ちをイメージすれば分かりやすいだろうか。ほんの一瞬相手より早く構え、引き金を引かなければ命を失う。

 だからこそ魔法の発動速度は重要なのだが、杞憂だったらしい。


「そうなると必要なパーツやセンサーに関してはあまり増やさなくていいか。一応装備で補助をすることも考えていたんだが……」

「不要です。私にはほぼすべての魔法を再現する事ができるだけのデータと演算能力がありますので外部からの装備は不要と進言します」

「……なら痛覚センサーとかも外していいか。自分の器の損傷具合とかも分かってるんだろ?」

「分かります。現在必要なのはこの器を使った作業に演算能力との誤差が原因です。現在はリハビリと共に誤差の修正を行っておりますので現在はマスターの言う反復練習を行っていくことが重要であると判断します」


 ……どうやら俺は必要以上に心配し過ぎていたらしい。

 まぁ油断しすぎてあとからこれが必要だった、これも必要だったという展開にならなかっただけよかったと考えておくか。


「それじゃ今後は普通に歩いたり文字を書いたりできるよう練習するか……」

「マスターは何故落ち込むのですか?」

「落ち込んでる訳じゃないが……何と言うか、無意識にツーに色々押し付けてたような気がしてきて、ちょっと反省中」

「ちなみにツーに止められなかったらどこまで改造する気だったの?」

「どこまでって……そりゃ五感は全て装備させて、飲食できるようにして、体温とか髪の毛とか色々自由に調整できるようにして、それから……」

「待って、ちょっと待って」


 適当に思いついた物を口に出していくとタマがストップをかけてきた。

 なんだろうと思っていると頭痛を抑えるようにしながら俺に話す。


「それほぼホムンクルス作ろうとしてない?それだけの機能をつぎ込むならホムンクルス作ってそれにツーを受信できるように作った方が早くない??」

「でもそれだとホムンクルスというよりはサイボーグ?アンドロイド?みたいになるし、それならロマン先輩にでも協力してもらって作ってもらった方が良い。でもツーは知っての通り魔法を使っての戦闘の方が得意だから魔法を使い辛いゴーレムとかじゃ作っても意味ないから……」

「ええそれは分かってる。それに関してはあんたの方が正しい。でもね、そこまで人間に寄せるなら本当にホムンクルスの方が調整少ないでしょ。あんた戦闘用って自分で言っておいて戦闘以外の所に力注ぎ過ぎじゃない??」

「それ言われると……否定できない」


 ぶっちゃけ戦闘及び情報収集に関しては今まで通りスマホ越しでも十分役立っていた。

 でも俺が欲しいと感じたのはそばで動いて一緒に戦える存在。

 いくらツーの魔法が強力だと言ってもスマホ越しでは限度がある。そのためにツーが使いやすい器を用意し、そこにツーの意識を移す事で一緒に戦える存在を増やそうと思ったのが切っ掛け。

 でもそれだけに力を注ぐのはあまりにもつまらない。

 戦闘のためだけならこだわって顔とかいろんなパーツを作る必要はない。


 ぶっちゃけツーには戦闘や情報収集以外にも自分だけの趣味のような物を見つけてほしかった。

 そのためには出来るだけ人間に似せる事で新しいツーの趣味や生きがいのような物を発見できるのではないかと思ったのだ。

 まぁここまで面倒な作業が現れるとは思ってなかったけど。


「はぁ。まずは戦闘で必要な物を揃えてあげなさい。それとも何、ツーにも性行為を強制するつもり?」

「何でそうなる??俺は俺の事を好きだと言ってくれて、そういう事がしたいって思ってくれた相手としかする気ないぞ」

「ではマスターは私が性行為をしたいと言った場合性行為をしてくれるのですか?」

「その場合は……どうなるんだ?」


 ぶっちゃけツーの本体は木。木と人間が性行為って……どうすんの?

 あれか?めしべに向かってぶっかけろってか??


「どうなるんでしょう?」

「ツーも分かんないのかよ」

「マスターとそのような関係なる事は演算しておりませんでした。ただし今の状態ではマスターの子供を作る事は出来ません」

「そりゃそうだ。種としてかけ離れすぎてる」


 仮にツーが精霊になったとしても子供を残す事は出来ないだろう。

 精霊は地球から生まれ、子孫を残す必要がない事から普通は妊娠できない。

 それこそ特殊な魔法などを開発して子供を残すしかない。

 開発するのクッソ面倒だろうけど。


「あんた達……色々ズレすぎ」


 一体どこがズレているのかよく分からず、俺とツーは首を傾げた。

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