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転生者の贖罪  作者: 七篠
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元魔王と大天使は犬猿の仲

 という事で元魔王が仲間に加わり悪魔社会の薬物排除に乗り出す。

 と言っても情報などはルシファーが言っていたように全面的に協力してくれている事により襲撃するのが俺達の仕事になっている。

 そしてチームの人数が六人になったので三人二組で行動する事になったのだが……


「えーい!」

「悔い改めなさい!!」


 元魔王と大天使様が無双しているので俺の出番がない。

 やる事と言ったらぶっ倒された悪魔達を救出、及び捕縛くらい。


 元魔王、マリアナ・レヴィアタンの攻撃は水、または氷の魔法であり今回は捕縛が目的であるため悪魔達はみな氷漬けになっている。

 そしてガブリエルの方も聖水を操り水の檻に閉じ込めて制圧していた。

 聖水だと悪魔はダメージ受けるから普通の水で捕縛してほしかったな……


 それから何で俺の所にこんな過剰戦力が投入されたかというと、ここに薬を保管していると言われているからだ。

 そのため下っ端だろうが何だろうが全員捕まえて情報を吐かせようという事らしい。

 だが俺の予想だとこいつら全員下っ端の雰囲気があるので大した情報は取れなさそうだ。

 それでも全員から情報を取るというのでその指示に従い淡々と作業を進める。


「悪い子達はまとめてメッ!だよ!」

「良い悪魔がいるわけないじゃないですか」

「いるもん!そういう偏見で話すから天使って本当に嫌い!!」

「悪魔が良い子だったらこういう事にはなっていないんですよ!!」

「喧嘩してたら負けますよ~」


 俺がそういうと再び二人はハッとして仕事に戻る。

 どうしてこの二人に俺がいるかはこれで分かってくれただろう。

 二人がいがみ合った際に舵を取れる存在が俺しかいなかったのでそうなった。

 それなら最初から元魔王と大天使を別にしろと思っただろうし、俺だってそう思った。

 なのに「私の方が凄い所を見せつけてあげるんだから!」っという事で大天使様に喧嘩吹っ掛けた元魔王様という構図になってしまい、別々に行動する事も出来なくなった。


「はぁ。相変わらず仲が悪いんだから」


 呆れながらそう呟いた。

 こればっかりは前世の頃から本当に変わらない。

 天使と悪魔というどうしようもない敵対関係である事はもう嫌というほど分かったが、この二人の場合元々反りが合わないのだろう。


 前世、しかも子供の頃からこの二人は仲が悪い。

 得意な魔法もちょっと違うだけでほとんど同じ。違う部分よりも共通している部分の方が多いと感じるのになぜか仲が悪い。

 歴代のレヴィアタンもガブリエルとは仲が悪かったが、これほどまでに仲が悪かったのは今回が初だろう。

 それにしても……前世の頃の二人のいがみ合いの理由に関しては分かるが、現在のいがみ合う理由は一体何なんだろう。

 俺の事を覚えていない事は間違いないので少し気になる。

 氷漬けにされた悪魔達を発掘しては捕縛。体が冷え切っていたため魔法で少しだけ温める。


「ありがとう……ありがとう……」


 非常に情けないと言いたいところだが、元魔王と大天使が襲ってきたらこれが普通かもしれない。

 聞き出せることがあるのではないかとホットミルクを与えながら聞く。


「で、お前らこの薬やってたの?」

「俺達は売るだけだよ。割のいいバイトだからって乗っかったらまさか薬を売るバイトとはな……」

「こっちもそんな感じ。と言っても地元怖い先輩に強制的にだけどな。でも金払いは良いし、食っていける。だから止めるにやめられなかった」

「つまり生きていくために薬を売ってただけって事か」

「ああ。俺達下級悪魔は学校にも行ってない連中がほとんどだ。だからこうして悪い事して稼ぐしかないんだよ。お前のように真っ当な生き方は出来ないんだ」


 その言葉に悪魔社会の闇を感じる。

 ぶっちゃけ下級悪魔でも学校に通っている者はいる。


 彼らとの違いは領主の違い。

 例えばグレモリー家では下級悪魔でも最低限の学力はつけさせたいという考えから学校の扉は開かれている。領民全体の識字率が上がれば領内の生産性などが向上し、税収も大きくなるという考え方。

 一方でとある領地では勉強は血筋のいい者が学ぶための場所で良いと考えている。そのためその領地では貴族でないと学校に行けない事も少なくない。


 だからこうして知識がない者達は善悪に関係なく生きるためだけに罪を重ねる。

 そう言った事に嫌気を指した悪魔達が人間社会、そして日本に移住したがるんだろう。

 どんな事情があろうともそれでも罪は罪。監獄で暮らしてもらうしかない。


「ここにリーダー的な存在はいないのか?」

「リーダーなら……今捕まったな」


 見るからにガラの悪い悪魔が下半身氷漬け、上半身は頭以外聖水に使っている。

 聖水のせいでダメージを受けているのか、あばば言っているが気にしない。

 悪い事をしたのだから仕方ないだろう。


 何はともあれ今日の仕事は終わり、捕縛した悪魔達は全員囚人用施設に送られた。

 それにしても気になる事がある。

 それは二人が今もいがみ合っている理由だ。

 前世の頃は俺が原因で争っているところを何度も見てきたが、それ以外の理由となるとよく分からない。

 ただ単に俺が知らなかっただけなのかもしれないがそれでも何故今でもいがみ合っているのか聞いておいた方が良いだろう。


「で、なんで二人はいっつもいがみ合ってるの」

「いがみ合ってないよ。この腹黒天使が突っかかってくるだけ」

「いがみ合ってませんよ。不謹慎魔王が邪魔してくるだけです」


 似たタイミングで似たような事を言うからまたメンチを切り合う。

 もう見慣れてしまった光景に呆れながら話を続ける。


「何でそんなにいがみ合ってるんです?理由は何です??」

「それは……」

「もちろん……」


 理由を教えてくれそうだったが二人とも答えてくれない。

 正確に言うと答えようと思っているが適切な言葉が見当たらない感じ。


「…………ねぇ。私達っていつからこうしてたっけ?」

「…………私も覚えてません」


 まさかの覚えてない発言にずっこける。


「覚えてないんですか?覚えてないのにまだ喧嘩続けてるんですか??」

「何と言うか……習慣?癖?そんな感じで顔を合わせるとついねぇ……」

「私もそのような感じです。何か理由があったはずですが……思い出せません」


 二人とも顔を合わせて不思議そうにしている。

 おそらくこれも俺が記憶を消した影響だな。


 前世の頃、二人がよく喧嘩していた理由は俺だ。

 まぁ何と言うか、当時の俺にとって二人はよく家に遊びに来るお姉ちゃん的な存在だったのである。

 二人とも神薙家とのパイプを保つためだったり、仕事の依頼をしたり受けたり、外交担当だった二人は特に神薙家に来る事が多かった。

 そして当時の俺はそんな二人に可愛がられており、俺の奪い合いが過激化してよく喧嘩するようになった。


 もしかしたらその時の感覚がまだ残っているから今もいがみ合っているのかもしれない。

 だが今その理由がとっくに失っている事が判明したのだから落ち着くかもしれない。


「覚えてない、思い出せないのであればずっと喧嘩し続ける事もないじゃないですか。だからそろそろ仲良くしましょう?」


 俺はそう提案してみたが、長い時間争ってきた二人にとってそう簡単な話ではないようで。


「そうかもしれないけど……」

「今更仲良くするというのは……」


 どうやら抵抗があるらしい。

 俺より何百倍も生きているくせに何でそういう所で大人としてふるまわないのか。

 天使と悪魔という種族的な問題だけではないような気がする。

 どうしたもんかと考えながらみんなと合流したのだった。

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