面接の結果
翌日、ラインで雫から連絡が来たと思ったら『放課後に理事長室に来て』っという短いメッセージだけが送られてきたので理事長室に来た。
するとそこには正座して縮こまっているアスモデウスが居た。
「あ~、もしかしてもう行動起こした?」
「行動起こしたので少し相談しようかと」
雫は厳しい視線をアスモデウスに向けながら言う。
アスモデウスは既に涙目で魔王の威厳なんてものは全く感じない。
あえて言うなら親に怒られている子供のような、逆らえない相手に怒られているという雰囲気。
「何で……何で雫が居るの~……」
どうやらアスモデウスは俺のハーレムメンバーの中に雫がいるとは思ってなかったようだ。
一体どこで判明したのかは分からないが、こんな風に圧迫面接を受けていたら泣きそうになるだろう。
なんせ最強のウロボロス様からの威圧なのだから。
「で、認めてもらえそうか?」
「まだ話せてない。というか分かってたよね!?分かっててわざと言わなかったよね!!」
「そりゃね。どれくらいの根性があるのか見てみたかったし、雫もどんな反応するのか気になってたし」
俺から見ればぶっちゃけ実験だ。
雫が正妻としてどのような態度と対応をするのか見てみたかったというのが大きい。
だからとりあえずアスモデウスを生贄にどうなるのか見てみる。
「流石にこれは酷過ぎるよ!!てっきりリルがするんだとばかり思ってたのに……」
「リルだったらどうにかなるって思ってた?」
「話し位は聞いてくれるかと……」
この様子だと本当に話すら聞いてないみたいだな。
流石に話も聞かずに追い出すのはどうかと思うのでそれくらいは口を出させてもらう。
「雫。追い出すのか?」
「……話くらいは聞いてあげる。でもハーレムに入れるかどうかは別だから」
そう言いながら話だけは聞いてくれる姿勢になった。
その事にホッとしたアスモデウスは口を開く。
「あの、私も佐藤柊さんにガチ恋したので本契約を結びたいと考えております。いずれは結婚まで行きたいと思っているのでハーレムに入れてください」
「柊君から許可はもらってるの」
「許可というかなんというか、他のハーレムメンバーを説得出来たら認めると言われました。なのでこうして説得に参りました」
その言葉に嘘はないか雫は俺に視線で訴えてくる。
間違っていないので何も言わず頷く。
「そう。もう膝崩していいわよ。もう大体の察しはついたから」
何故か俺を見ながらため息をつく雫。何もしてないのになぜ?
アスモデウスも少し余裕が出てきたのか文句を言う。
「何で最初からそんな怖い感じで話すの?なんだかんだで仕事でもプライベートでもちょくちょく顔を合わせるのに」
「だからに決まってるでしょ。恋に恋する魔王がいきなり一目惚れで本気の恋だって言われても信用できないの。あなた今までどれだけの男性と付き合っては別れを繰り返してきたと思っているの」
「そ、それは私だけが悪い訳じゃないし……浮気しないで~っとか側室もたないで~っとかお願いしている時点でそんなにおかしくないでしょ。それなのにあいつらときたら……どこ見ても浮気者ばっか!!」
「柊君だってハーレム築いているんだけど」
「それは……本当は一夫一妻で愛されたかったな~って思ってるけどそもそも結婚できなきゃどうする事も出来ないし、私新参者と変わらないし、結婚するためにはハーレムも認めないとダメだと思っただけ。少し嫌って気持ちがあっても結婚できないよりは良い」
せめてもの妥協という感じでアスモデウスは言う。
日本基準で考えれば一夫一妻は普通だし、俺の方がおかしいのは十分分かっている。
アスモデウスの方が真っ当だ。
悪魔の方が真っ当な考えってどうなんだろ?
「だからこれで最後!本当の本当に最後!!もう他の人と結婚とか考えられないし、全部捧げるつもりだから!!だから認めてください!!お願いします!!」
そう言いながら雫に頭を下げるアスモデウス。だがそれでも気に入らなそうにする。
交渉すらできないとなればどうすればいいのか、アスモデウスの表情からそんな感情が読み取れる。
俺は本当にどうするつもりなんだろうと思っていると何故か雫に頭を殴られた。
「痛って。え、何?どした??」
「何もどうしたも、空気になって話に参加しようとしないからでしょ。あなたの事なんだからちゃんと参加しないと」
「そりゃ分かるが……今はアスモデウスが話をする番だろ?俺はその後でいい」
「後じゃなくて今聞きたい事があるから教えて。アスモデウスと結婚したい?」
雫の質問に俺は全く考えずに答えた。
「俺はどんな関係でも構わない」
「……それ答えになってる?」
「答えになってないように聞こえるだろうけどさ、気持ちとしてはそんな感じなんだよ」
全員よく分からないという表情をするのでここでしっかりと説明しておこうと思う。
「俺には負い目がある。前世の頃は結構色んな有名人と会うこと多かったし、いろんな関係を築いてきた。で、今の俺はそいつらを裏切って勝手に死んでどういう訳か転生した。まぁこの辺までは前にも説明した気がするけど、その負い目から俺はまた仲良くなれるためならどんな関係でも良いと思ってる」
「どんなって……例えば?」
「恋人、夫婦、友達、仲間、親友その他もろもろ、どんな関係でも正直いいんだ。と言ってもリルとか雫とかにご主人様だ仲間だって言われた時は内心ビビってたけど。また裏切るんじゃないかって。また自己中心的にこれが最善だと決めつけてまた勝手にいなくなるんじゃないかって考えてたから」
「…………」
「でもそれももう開き直った。前世で捨てたもの全部拾い集めて今度こそそいつら全員幸せにする。俺が幸せにする。そのためだったらどんな関係でもいい。そいつが求める関係でいいんじゃないかって思ってる」
俺がそういうと雫は本当に呆れ返ったような表情をする。
まぁ俺自身情けないってのは理解できてる。
結局俺は怯えているのだ。
俺が望む関係ではなく、相手に依存した考え方をする事で傷付く事を避けようとしている。
ぶっちゃけ雫やリルと恋人どころか婚約できただけでも予想外の幸せを手に入れた。
それ以上を望むのは……あまりにも都合が良すぎないか?前世の失敗を何も考えずまた欲望のままに生きているだけなのではないか。
結局反省せず同じ事を繰り返すのではないかと自分を信じられない。
きっとその感情をアスモデウスも感じたのだろう。
だからなのかは分からないが、アスモデウスは真剣な表情で俺の事を見る。
「そう言えばそうだね。うん。私も自分の事ばっかりで柊ちゃんに伝えなきゃいけない事伝えてなかった」
「ん?そうなの??」
「そうなの。ふふ、君って鈍感なの?それともそう演じているだけ?」
「多分鈍感。自分がモテるなんて考えて行動してないから恋愛関係はてんでダメだ」
「そうなんだ。それじゃ伝えるね」
アスモデウスは小さく深呼吸をしてから言う。
「私、ルリカー・アスモデウスは佐藤柊さんの事が好きです。結婚を前提としたお付き合いをさせてください。お願いします」
きっとこういう事を誠心誠意っというのだろう。
ただまっすぐに自分の素直な気持ちを俺に伝えようとしてくれている。
そして同時にそう言えばと思った。
「お前から結婚してくれとはよく言われてたが、好きだって言われるのはこれが初めてじゃないか?」
「だ、だから今伝えたの。私はただ単に将来有望だからとか、顔が好みだからとかそんな薄い理由じゃない。あなたと一緒に幸せになりたいって思ったから結婚してほしいって思ったの。その事伝えてなかった。伝えてなかったんだから嫌だって言われても仕方ないよね」
「今考えてみればそうかも。でも今伝わった」
だから俺からも雫に頼まなければならない。
「雫。アスモデウスの事も一緒になって良いかな?」
俺がそう聞くと少し吟味するような表情をしていたが、ため息をつきながら渋々頷いた。
「あなたが一緒になりたいと言ったのなら認めざる負えないじゃない。確かにアスモデウスは恋愛脳だけど一途だし、裏切るような事もしないし信用できる。何より柊君を一緒に幸せにしたいって思ってくれてるなら、認めるしかないじゃない」
っと諦めにも近い表情で認めてくれた。
その事にホッとしているとアスモデウスは両目から涙を流し始めた。
「え、どうした?急に泣き出してどうした!?」
「だって……認めてもらえたから……柊ちゃんに、結婚。みどめで~」
最後の方は泣きながらなので変な感じになってしまっている。
それを見て雫が涙を拭いてあげながら祝福する。
「はいはいおめでとう。私は複雑だけど」
「雫~。認めてくれてありがど~」
何て女の友情をはぐくんでいるが、俺からも言わなければならない。
「これからよろしくな、アスモ」
「!うん!!」
こうして俺はアスモデウスとも婚約する事にした。




