ハーレム始まりました?
理事長にどうやって本契約の事を認めてもらえるか考えながら学校の廊下を歩いていると、スマホに何か連絡が来た。
確認してみると理事長から連絡が来ており、『本契約に関して改めて話し合いたい』っという内容が書かれていた。
とりあえず理事長もまだ本契約を結ぶ事に関しては反対してるわけではないと分かり少しホッとした。
そして詳しい話に関しては放課後に理事長の家に来て欲しいという点に関しては少し意外に思ったがまぁ別にいいだろう。
特に遠い訳じゃないし。
そう思いながら放課後、俺は理事長の家に向かった。
涙は大学生になってから順調に講義を受けているのだろうかと少し考えながら向かう。
そして特に問題なく理事長の家に到着し、ドアを開けてもらった。
「柊君ごめんなさい。わざわざ家に来てもらって」
「いえ、こちらこそすみません。その、この前は色々と……」
「その話を含めて色々話したいから入って」
「失礼します」
という感じで家に上がらせてもらった。
ぱっと見以前の動揺のような物は見えないし、少し時間をおいてお互い落ち着いたのかもしれない。
俺も本契約の方法について契に限定する必要はなかったし、多少金がかかっても周囲が納得できるやり方に変えると言った方が良かったんだろう。
あの時は効率とか金の問題ばかり考えていたのでそれがよくなかった。
だから今度こそお互いに納得できる内容の契約ができればと思う。
そう思いながらリビングで座って待っていると理事長から話を切り出した。
「この前はごめんなさい。その、色々動揺しちゃって……」
「いえ、それに関しては俺だって悪いんですから。もうちょっと視野を広げてお互い納得できる契約方法にすればよかったんですから」
「そう言ってもらえると嬉しい。あとそろそろ敬語もいいんじゃない?」
「あ~、それもそうか。まだ敬語以外で話すのは慣れてないけど」
そう言いながら茶をもらうと……何か理事長の距離が近い。
具体的に言うと何故か隣に座ってきた。
あれ?今までここまで距離近くなかったはずなんだけどな。
「どうかした?」
「え?何が??」
「いや、なんか距離近い気がして」
「そんな事ないわよ。ただお茶を入れたりお菓子を取るのに楽な場所に居るだけ」
「そ、そうか」
その言い訳きつくない?
だって今までそんな風に距離近くなかったでしょ?
それともあれか?やっぱりこの前一緒に寝た時にこれくらいの距離感が良いみたいな感じになったのか??
なぜ急に距離をつめてきたのかは分からないが、問い詰めるほどの物でもない。
あまり気にしなければいいかと思いながら菓子に手を伸ばすと、影からリルとリーパが現れた。
二人とも菓子が欲しいらしく尻尾を振りながら欲しがる。
「こぼすなよ」
そう言いながら掌の上に菓子をのせて食べさせる。
二人とも普段は普通の犬と猫を演じているため両親から人間用の食べ物は食べられない。魔狼とか妖怪の所も説明したが体に害がないとはいえ与え過ぎは良くないと判断しているので基本ペット用しか食べれない。
まぁそれでも二人は気にせず食べているのでたまの贅沢としてこういう時にしか食べない。
「そろそろ本題に入ってもいい?」
「あ、ごめん。今聞く」
リル達に菓子を与え終えた後に本題に入る。
おそらく本契約の仕方を変える話だろうからどんな感じにするのかお互い納得できるように話し合わないと。
「その……まず前提として聞いておきたいんだけど、リルとはその……どれくらい愛し合っているの……」
「あい、え、愛し合う?」
「え?だって愛し合っているから契って選択肢が出てきたんじゃないの?」
「え~っと。とりあえず愛し合うの基準ってどんな感じ?結構人によってずれがありそうだから教えて」
「ずれって……もう既にエッチな事をすような関係じゃないの?」
「してないしてない!!まだしてない!!」
「……やっぱりいずれはそういう関係にはなりたいって思ってるんだね……」
ジト目で見られるがこれは仕方ない。
しかしこういう話題を振るって事はやっぱり本契約を結ぶのは反対なのか?
そう思っていると理事長は真剣な表情で俺の目をまっすぐに見ながら言う。
「佐藤柊さん」
あまりにも真面目な雰囲気に背筋を伸ばす。
一体どんな話をするのか、身構えていると理事長は言った。
「あなたと結婚させてください」
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…………………………………………………………………………………………………………え?
「私は本気であなたに恋をし、愛したいと思っています。だから結婚したいと考えていますし、私以外の女性とエッチな関係になる事が嫌です。娘もあなたの事を父と呼び、慕っています。娘である涙も私とあなたの結婚なら認めてくれると言ってくれました。だから、結婚していただけませんか」
まさか。
まさかそんな事を言われるとは思ってもみなかった。
ここまで真剣に言っているのに悪い冗談などではない事は分かっている。
きっと年の差とか、学生に対してとか、俺が転生者である事を考えて導き出した答えなんだろう。
涙にも相談したという事はそれくらい真面目だという事。
正直に言えば嬉しいし結婚できるのであれはぜひ結婚したいと思っている。
でも――
『消えないで!!』
あの言葉とあの光景が目について離れない。
必ず眠っている時に見るあの愚かな選択を忘れないようにトラウマとして俺の魂に刻まれている。
二度とああいうことをするな、二度とこんな目に遭わせるな、二度と言わせるな。
そう本気で反省し、後悔したからこそ二度と繰り返してはいけない。
だがあの時の俺と比べてどうだ。
前世の頃と比べて圧倒的に弱い。
前世の時よりも強くなっているのならともかく、かなり弱くなってしまっているのに理事長や涙、リル達を本当に守り切れると言えるのだろうか。
弱いからリルと本契約をしようとしていたのではないか。
少しでも力を得るために必死になるべきなのではないか。
いや、それでは昔のままだ。
一人で戦って、一人で勝とうとしたから失敗したんだ。
だから今回はみんなに、仲間に頼る。
その方針にすると自分で決めた。
だが結婚ってなんだ??
理事長には普段から色々世話になっているし、これ以上は頼るのではなく甘えではないか?
だがリルや他のみんなと本契約をしてさらに強くなるしかない。
それができる環境になるのであれば結婚くらい――
…………いや、そんな損得勘定で結婚なんてよくない。
何より理事長を傷付ける。
まず俺は本当に理事長と結婚したいと考えているか、それを考えると……まだ早いというのが正直な気持ちだ。
年齢とか財政的な問題ではなく、俺の感情の問題。
ただ単に俺はあいつを倒した後じゃないと結婚なんて考えられない。
だからあいつを倒した後なら結婚したいと思うが、今は結婚したいとは思えない。
……これは怯えだな。
昔みんなを置いていた時の恐怖が怯えとして現れている。
それに俺が前世の時に使った最後の魔法。その効果があやふやなのなら、もしかしたら思い出す可能性も捨てきれない。
もし思い出したら……拒絶されるかもしれない。
それはあまりにも理事長を騙しているような気がして、とても約束できない。
「……理事長。すみません。今はまだ結婚できません」
「……やっぱり年齢が原因ですか?」
「理事長に非はありません。俺が前世の事もあって色々隠し事をしているのに結婚するのは間違っていると思うので結婚は出来ません」
「ではその前世の事を語ってくれることは――」
「今は出来ません。話すとすれば、全員揃った時に話したいと思います」
「……そうですか。そうですか……」
明らかに真実を伝えられないと言った事に落ち込んでいる。
でも俺が前世で行った事、みんなへの裏切り行為はみんなの前で謝罪するべきだ。
それに理事長やはぐれのメンバーだけではなく、本当は力を貸してくれた各神話の神仏に対しても謝罪しなければならない。
もしそれも含めたら全員集まるタイミングは一体いつになる事やら。
だから理事長達とはぐれのメンバー全員が揃った時に、話すべきだと思う。
「だからすみません。結婚できないのでリルとの本契約も諦めます」
俺の言葉にショックを受けたのはリル。
でもこの調子では本契約を結ぶ事は出来ないとリルも感じているのか、耳と顔がうなだれている。
「あ、本契約は構いませんよ。それは前にも伝えたようにリルが主だと決めたのであれば問題ありません。ただやり方を変えていただきたい」
「……本当にいいんですか?」
「その代わり、私とも本契約を結んでください」
あ、何かカエラとかが提案していた感じに進み始めた。
「理事長とも、ですか?」
「今は結婚できないっという事は結婚しても良いという考えはある訳ですよね?それなら婚約式として私とも契をかわしてください」
「理事長とも!?」
「そしてあたしが正妻です。リルはその次と言う事で」
凄みを感じるオーラを浴びながらリルに確認する。
リルは『別にいいよ』っと軽い感じで特に反対らしい反対意見を言わない。
「えっと、その。リーパとも本契約を結ぶ予定なのですが……」
「リーパさん。分かっていますね?」
「……あなたを立てれば一緒に居られるなら別にいいわよ」
リーパはちょっと理事長に呆れながらも了承した。
これから本契約してくれる人を増やしながら強くなろうと思ってたのに、どうしよう。
何かこうして俺のハーレムが形成され始めた。




