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転生者の贖罪  作者: 七篠
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あらゆる武器を使いこなす男

 寝る前にベッドでゴロゴロしながら会った男の事を思い出していた。


 男の名前はユダ。

 はぐれ時代のメンバーの一人であらゆる武器を使う元聖職者。

 俺が持っていた伝説の武器のレプリカを使いこなし、あらゆる敵を倒してきた男。

 元聖職者と言うだけあって悪魔や悪霊を倒す術を色々持っており、どこまでも人間らしい戦い方をしていた。

 倒す相手に合わせて武器を変えて戦い、とにかく有利に立ち続ける事で勝利を掴もうとする。

 元聖職者だからか神が世界を作り替えると宣言した際にかなり困惑していた。

 それでも死にたくない、生きていたいという思いで俺達の元で戦ってくれた。


 だが分からないのはなぜ彼があんな浮浪者のような姿になっていたのか。

 当時の彼は紳士的であり、常に身綺麗にしていた。

 それは元であっても聖職者である誇りであり、人々を守る存在として怯えさせないためだ。

 しかし昼間に見た姿はまるでその逆。浮浪者のような姿で周囲の人から怯えられていたし、目も危険な視線を放っていた。


「リーパ。ユダに何があった」

「……分からない」


 そばに居たリーパに聞いてみたが返答は期待した物と違った。


「本当に?」

「本当に分からないの。あの戦いが終わった後私達はバラバラになった。最初こそサマエルと一緒にウロボロスの世話になる話も出たけど、全員それを拒んだ。だからその後はたまに連絡を取るくらいの事はあったけど、直接顔を合わせる事はなかった。特にユダや私はスマホも何も持ってないから余計に連絡なんて取れないし、どうなったのか分からない。正直死んでる扱いをされても仕方ないような生き方をしてたから」

「そんなレベルなのかよ。となると本当にユダがなんでああなったのか直接聞くしかなさそうだな」

「その方が早いかも。でも一体今度いつ会える事やら」


 そう言いながらリーパは丸くなって本格的に寝ようとする。

 確かにユダが今までどう生きていたのかも気になるが、それ以上に気になるのは伝説の武器のレプリカだ。

 レプリカは当時俺の武器庫に保管していた。今では取り出すどころか起動すらせず、武器庫ごとレプリカも失ってしまったとばかり思っていた。


 しかし実際にはユダがレプリカを持っている。

 それはつまり俺の武器庫のみが失い、中に入っていたレプリカはすべて無事だったという事。

 となると俺の修行用空間に居たあの子達はどうしているんだろうか?

 修行用空間が崩壊したと同時に他の神話世界などにたどり着いているのかもしれない。

 そうなると彼らの捜索も同時に進めるべきだろうか?彼らは俺の勝手に巻き込まれた被害者なのだから救う義務がある。

 と言っても彼らに関する情報が一切ない。

 絶滅を危惧されている聖獣や魔獣が突然どこかに現れたなんて話はないし、ネットニュースなどにも載っていなかった。

 という事はあの修行空間はまだ生きている?


「……ツー、聖獣と魔獣の絶滅危惧種に関しての情報を集めてくれないか?」

『構いませんが、急にどうしました?』

「ちょっと気になる事があって。杞憂だと思うが念のため?」

『了解しました。それでは情報を収集します』

「ありがと」


 そう言いつつも考えはやはり俺が過去に残っている物があるんじゃないだろうか。

 でもさすがに俺自身の手で作った物に関しては消えている可能性の方が高い。

 一度ロマンだけで作った超巨大ゴーレム。あいつは流石に消失しているだろう。

 でももし残っていたら……かなりの戦力になるんだけどな。


 ――


 翌日、暇を見てサマエルにユダの事を話しに行った。

 はぐれメンバーの中で仲が良かったのがサマエルとユダ。だからサマエルなら何か知っているのではないかと聞いてみたのだが……


「すみません。私も彼とはずっと会っていなかったので私も驚いています。本当に彼だったんですか?」

「リーパにも確認を取りました。彼で間違いないそうです」

「そう……ですか。ご報告ありがとうございます……」


 やはり仲が良かったからか落ち込んでいるように見える。

 でもそんなに仲が良かったからこそ気が付けることがあるのではないだろうか。


「彼が変貌した心当たりについて何か知りませんか」

「心当たり、ですか。と言われてもあの戦いの後からはもう会っていませんでしたから……でもやはり……」

「やはり?」

「何かを忘れてしまった感覚、と言いましょうか。その後から彼も忘れてしまった何かを探している様子でした」

「…………」

「それを思い出そうとしながら退魔師として人々のために動いてはいたのですが、急にフラッと居なくなってしまってからは分かりません。事務所にあった伝説の武器のレプリカを退職金代わりと言って持って行ってしまいましたが、その時も何か思いつめたような表情をしていました」

「なるほど。話していただきありがとうございます」


 つまり武器は最初から残っていた??確かに誰とでも共有できるように空間を残していたが、それならなぜ修行空間だけ繋がらない。

 修行空間は俺しか使っていなかったが、それでもだれでも行き来できるように設定していたはずだ。

 それなのに何故だ。


 それにユダの奴も俺の事は忘れているようだが、それでも何かを忘れているという感覚だけは残っていた。

 一体どういうことだ……


「ユダの事はこちらでも捜索してみます。今の彼は何を考えているのか分かりませんから」

「と言うと?」

「彼はその、執着心が強いのです。教会に追い出されるまでは神への執着心が強かったようですし、一緒に居た頃は……誰かに依存していたはずです。それが誰だったのかは覚えていませんが、執着している相手に対して神の様に敬愛する、それが彼の生き方です。それを止めているとは思えませんので気を付けた方がよいかと」


 その辺は俺が知っている時と変わらないか。

 俺と出会ったばかりの時は神への忠誠心を理由で悪魔や悪霊、悪い妖精などを手当たり次第に殺して回っていた。

 表向きは評価されていたが、教会と悪魔業界の政治的駆け引きなどから見れば邪魔で仕方が無かったため破門された過去を持つ。

 彼の行動そのものは間違っていなかったが、少々過激すぎたというだけで破門されたのだから何とも言えない。

 そして"はぐれ”に仲間入りした後も除霊や悪魔祓いを中心に活動していたからどこまでも聖職者だった。


「色々教えていただきありがとうございます。少しの間気を付けます」

「よろしくお願いします。この事は雫様にもご報告しておきますがよろしいでしょうか?」

「問題ありません。むしろ俺が直接言うよりも話を聞いてくれそうな気がするので助かります」

「そうでしたか」


 サマエルもホッとした笑みを浮かべるので良かった。

 だがふと思い出したように補足してくれる。


「それから彼とは関係ありませんが、最近悪魔領でカオスバンクのメンバーと思われる者達の活動が活発化しています。そのために今後の仕事は悪魔領に行く事があるかもしれません」

「その場合俺らどうするんです?」

「少しの間出張になるか、毎晩通うかのどっちかですね。柊様はまだ学生なので後者になる可能性が非常に高いですが」

「……寝不足にならないよう気を付けます」

「こちらも学生である事を考慮してそうならないように調整しますので、もし頼む事があったら本当に非常事態、あるいはそれに近い事を頭の片隅に置いておいてください」

「分かりました」


 なんだかきな臭くなってきたな~。

 薬物の排除、もう少し量を増やした方が良いかな。

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