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転生者の贖罪  作者: 七篠
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内定家族?

 翌朝、うまく寝れなかったからか俺が最後に起きてしまった。

 人の家だって言うのに寝坊とかカッコ悪い。


「あ~、おはようございます……」

「お父さんおはよう!」

「おはようお父さん。ふふ」


 涙と理事長が特に気にせず朝食の準備をしていた。


「って理事長お父さんって……」

「涙がそう呼んでるんだからいいでしょ。良いじゃない」

「良いじゃないって、気にしなきゃダメでしょ……」

「もう内縁の家族って事にしちゃわない?いつまでも家族なのに敬語って言うのも変でしょ」

「変って事はないと思うが……」


 流石にそれはダメだろっと思っているが、涙はキラキラした瞳で期待している。

 どうしたもんかと偶然目があったリルに助けを求めたが……別にいいんじゃない?っと言ってくる。

 リーパにも視線を向けたが我関せず。自分で決めろと。

 琥珀は……参考にならなそう。


「お父さん……ダメ?」


 娘からのお願いに俺は大きなため息をついた。


「……人前じゃなかったらな」

「やったー!!」


 大きな声で喜ぶ涙。手を上げて万歳って本当に子供か。

 理事長もニコニコ顔で満足しているし、どんどん外堀を埋められていく……

 前世の事を覚えていないからこそそうしようとしたのかもしれないが、だとしても俺にとっては居心地が悪い。


 それなりに前世の事を話しているが肝心な事は言っていない。

 俺と理事長達との関係など、行動以外の事はほとんど言っていないのだから騙しているのと同じ。

 それなのに内縁の家族とか言われても喜びより本当にそうなって良いのかと思ってしまう。

 朝食を食べて一服した後、俺達は帰る事にした。


「もう帰っちゃうの?」

「元々泊まる予定じゃなかったのに泊まったんだ。これ以上親と理事長達に迷惑かけられないって」

「もう涙のお父さんで私の夫なんだから気にしなくていいのに」

「気にするし何でそんなにノリノリなんだよ。大人としてそれでいいのか?」

「だって転生する前の年齢から考えて私とあまり変わらないんでしょ?なら良いじゃない」

「たとえ精神年齢が同じだったとしても実年齢が伴ってないだろう……」

「長命種なら元々その辺り気にしてないと思うけど?」

「そうであったとしても人間社会に馴染んでいる者としてその辺も配慮してくれ」

「冗談よ。でも家族としてあなたを受け入れているのも本当。少しくらい欲張って良いじゃない」

「……少しってレベルかね~?」


 そんな疑問は残っていたが俺達は帰宅しながらランニングをする。

 と言っても走っているのは俺とリルだけでリーパは俺の頭の上、琥珀は俺の影に潜んでいる。

 走っている最中リルは聞いてきた。


『で、本当に家族になるつもり?』

「まさか。なれる訳がねぇ」

『二人はそれを望んでいるから家族になってもいいんじゃない?』

「俺にその気はねぇ」

『酷いひと。二人とも本気だし、本当に父として、夫として招き入れたいって気持ちが伝わってきたのに。それを裏切るの?』

「……裏切りたくはないさ。でも今あいつらの気持ちに応えられない。それはもちろんリル達の事も含めてだ」

『…………』

「俺はいまだに過去ばかり見てる。現在いまをを生きているようで生きていない。結局前世の頃にやり残した事ばっかり気に取られてみんなの事をちゃんと見れてない。そんな状態で気持ちに応えるとか言っても不誠実なだけだ。だからちゃんと過去の事に決着をつけてからしっかりと応えたい。それがまたお前達の事を裏切っている理由だ」


 しっかりと理由を告げると『そう』とだけ返した。

 しばらく黙って一緒に走っていると再び口を開く。


『それじゃ私達の気持ちに応えてくれるのはいつ?具体的に教えて』

「クソ神を倒した後。前世の時にやり残したことをやり遂げて、そうしたらみんなに謝って、これからはちゃんとみんなのために生きる。俺の勝手な気持ちを押し付けるんじゃなく、みんなの気持ちに応える。だからあと一年か二年待ってくれないか」

『…………はぁ。ずいぶん長そうな二年ね。でも待ってあげる』

「リル……」

『今までずっと待ってきたんだもの。あと二年くらい待ってあげる』

「ありがとう。今度は逃げないから」


 そう言いながら散歩を続ける。

 この会話を聞いていたリーパが俺の頭を叩いてきた。


「どうしたんだよリーパ?」

「その話私達にも関係ある話よね?」

「そりゃまぁそうだけど?」

「私達の仲間でかなりひねくれちゃったメンバーもいるけどその子達の事はどうするの?会いに行くの?」

「あ~それな。それが一番どうしたもんか悩みどころなんだよな~」


 チーム「はぐれ」のメンバーは俺が世界中を旅しながら見つけた訳ありの連中ばかり。特殊な事情からぐれたり逃げ回っていたりしていた者達を招き入れた。

 そのため彼らの実家と言うべき場所は世界中に散らばっており、中には普通の人間には絶対行けないようなところも含まれる。

 リーパの場合は旅の途中で偶然見つけたキャスパリーグの村を発見した事で出会い、サマエルに関しては地獄の底で封印されていたのを引っ張り出してきた。


 そんな感じで強いだけでなく性格も生まれも癖の強いメンバーばかりが揃ってしまった。

 だから簡単に会いに行けないし、ぶっちゃけ実家に帰っているのかどうかも分からない。


「サマエルに相談したらどうにかならない?」

「どうだろ?一部のメンバーは分かってるかもしれないけど、私の時みたいに分かってない時もあると思うから絶対ではないんじゃない?」

「それ余計に面倒くさい感じだな。確定してそうなのは誰よ?」

「多分……お姫様だけじゃない?」

「まさかインドの?」

「インドのお姫様くらいでしょ、居場所判明してるの」


 最初っから難易度MAXじゃねぇか。


「それどうやってアポ取るんだよ。マジで理事長経由……でも無理じゃね?」

「無理な可能性の方が高い。あいつらドラゴンの事なめてかかってるし、元々プライド高いし、ひねくれてるし」

「……ほんと当時の俺運良かったのな。何で仲間に出来たのか今思うと不思議」

「それはこっちのセリフ。初めて会った時なんでこんなお姫様が来たの??って本気で思ったんだから」

「……あれ?俺が連れてきた時の事って覚えてるの??」

「知らないわよ。ただ誰かが彼女と私達を合わせた事だけは覚えてる。でも誰がなんて言葉で連れてきたのかは覚えてない。そこだけはまったく思い出せないの」


 どうやら俺の消失魔法の影響はしっかりと受けているらしい。

 姫ちゃんと会った記憶はあるけど経緯は思い出せないか。

 そういえばみんながどんな感じで忘れているのかしっかりと検証した事はないな。

 だが消えてしまった記憶について教えて欲しいと言われても話せるわけがないし、思い出そうとしてもその思い出をエネルギーに変換してしまったので修復する事も出来ない。

 結局こうした会話でどんな感じなのか察するしかない。


「そういう感じだったのか。となるとリーパの時みたいに自然と会う日を待つしかないのか」

「会えるとは思えないけどね~」

「普通に考えればな」


 普通に考えればないだろう。

 だがそうなるとメンバーの一人だった俺が作ったゴーレムはちゃんと消えたんだろうか?

 こうして中途半端に記憶が残っているのであれば、製作者不明という形でひょっこり残っているかもしれない。

 あいつどうなったんだろう……


 もし仮にどこかのヤバい奴に見つかったとしたらどうにか奪い返せないかな。

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