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転生者の贖罪  作者: 七篠
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確かめられた

「みなさんお疲れさまでしたぁ」


 間延びした言い方で話しかけてきたのはもちろんガブリエル。

 俺達の様子を一通り見た後拍手をしながら言う。


「みなさん素晴らしい力を持っていると感じましたぁ。これからもよろしくお願いしますぅ」

「「「よろしくお願いします」」」


 俺以外の三人はそう元気に言うが、俺への視線だけはみんなへの視線と違う事は分かっていたので何も反応しない。


「それではみなさん今日は帰ってゆっくり休みましょ~」


 そう言われて帰っていくみんなだが、俺だけガブリエルの隣を過ぎるときに言われた。


「後でお時間ちょうだいしますねぇ」

「あいよ」


 そう言われるのは予想していたので小さく返事して少しだけ待つ。

 みんなが先に帰った後にすぐガブリエルは俺に話しかけてきた。


「何で呪いの力を使わなかったんですかぁ?それさえ使えばもっと簡単に倒せたと思いますがぁ?」

「まぁそうですね。でもやる気なかったので」

「やる気がないぃ?もしかしてこのお仕事辞めたかったんですかぁ?」

「そうじゃなくて、あなたの言葉が理解できなかったので」

「……?私の言葉ぁ?」

「最初に俺達の個人の力を見たいからと言ってバラバラに戦うよう指示していましたよね。俺はどうもあの言葉が信じられなくて、ずっと疑ってました」

「……」

「あの悪霊達を倒す事に対して確かに個人でも撃破可能だと判断した、それその物は特に違和感を感じていません。しかし今回の地下でそれなりの強敵と戦うという条件付きの戦闘において個人の戦い方を優先しろと言うのは違和感がありました。なので俺は個人で戦うのではなく、わざと集団で戦うように呪いの力を使わずに戦う事にしました。その意図を教えていただけませんか」


 俺がそう聞くとガブリエルの視線は少し鋭くなった。

 一体どんな意図だったのか、それとも知る必要はないと答えてくれないのか、どちらなのか身構えているとプラカードを取り出しながら茶目っ気全開で言った。


「どっきり大成功~」


 ………………

 その反応にどう反応すればいいのかよく分からなかった。


「あ、あら~?こうすれば問題ないと聞いていたんですけどぉ??」


 困惑している俺を見てガブリエルは本気でこれでどうにかなると思っていたらしい。

 訳が分からないのでとりあえず聞いてみるしかない。


「一体何がどこまでがドッキリだったというつもりですか」

「いえ~これは~そのぉ……ただあなたと話しやすくなると聞いたのでやってみただけでドッキリは何もありません~」

「それで、俺と何が話したいので?」


 まるで何が言いたいのか分からないのでさっさと用件を聞く事にする。

 ガブリエルもことごとく失敗した事で素直に言う気になったのか、苦笑いを浮かべた後に真剣に言う。


「少し気になった物ですから。あなたが呪われており、我々の主を再び殺そうとしていると」

「その主はお前達天使を容赦なくすべて堕天させたはずだが?そんな神に対してまだ主と言えるのか?」

「人間の方から見れば裏切られた、見捨てられたと感じると思うかもしれませんが、私達天使が主の求める天使の姿から大きくかけ離れてしまった事も自覚していますから。あまり恨みのような感情はないんです。あえて言うなら、やっぱりこうなっちゃったか。という感じですね。私達も予想していましたから」

「……覚悟の上って事か」

「はい。私達は本来種の目であり耳であり手でした。私達は神の言葉を聞き信者達を導くのが仕事であり、私達の意思で信者達を導くのは違います。私達の意思はあくまでも私達の意思で、主の意思ではありませんから」


 前にも同じ事を言ったな。

 それが天使としての生き方という奴なんだろう。

 その生き方に対して何かを言うつもりはない。

 これは種が違うからこその思考の違い。どうしても他種族では理解する事ができないところがあるのは分かっている。


「それで、お前達の主が復活しそうだから、その前に俺を消すってか?」

「そうでしたら水地雫に協力なんてしていませんし、聖戦で新たな天使達、及び主に立ち向かったりはしません。もうあの瞬間から私達は堕天使なのですよ。私達は私達のやり方で信者を、人間の皆さんを守っていくと決めたのですから」

「その言葉が少しでも他の連中の耳に届けばいいのにな。とんでもねぇ貧乏くじ引いて大変でしょ」

「ええ。おかげでこの世界のバランスは大きく崩れました。そして再びそのバランスが私達の主によって崩れるかもしれないのであれば、それを正すのが私達だ天使の役目ではないかと」

「そんな事を考えているなら、確かに天使とはもう言えないな。あんたの言うように神の言う通りに動くのが天使だからな」


 堕天使として生きている間に俺が知っているガブリエルと大分変ったのではないかと考えていたが、思っていたよりも変わっていないらしい。

 その事にホッとしつつも、俺が苦手だった部分もそのまんまなのかもと思うと少し複雑だが。


「で、結局何であんな事を言った。何を確かめたかった」

「あなたの心を確かめたかった」


 あまりにも真剣な表情で言う物だから驚いた。

 その間にもガブリエルは続ける。


「なんとなくですが私はあなたの実力よりも心の方を知りたかった。だからわざと個人主義のような事を言い確かめました。その言われた場合あなたはどう対応するのか、どのような行動に移すのか確かめたかったのです。そのためにあのような事を言いました」

「それで俺は危険ですか、それとも信用できますか」

「危険信用という物ではないですよ。それらに関しては雫と涙ちゃんが信用している時点で大丈夫だとお墨付きをもらっているような物ですし、そう言った不安はありません。ですのでどのような行動をするのかだけ確かめたかったのです」

「それで確かめてみた結果はどうですか」

「やはりあなたは危ないと思います」

「それはどのような意味で?」

「あの時あなたは他のメンバーと協力する事を優先していましたが、同時にメンバーを枷のように感じていたのではないかと感じました」

「…………」

「彼女達はまだまだ経験が浅く、私の言葉通りに悪霊達の各個撃破と言う行動に出ました。それを否定してチームで動く事、その重要性と生存確率についてまだ理解しきれていない点が多く、その事に苛立ちのような物を感じました。あんたは前世での戦闘経験を元に戦っているので彼女達に合っていないようにも感じました。実力差はあれどもう少し戦闘経験のある方々と組みたいというのであれば、私から雫にお伝えしますが?」


 やっぱりその辺は大天使だな。俺が感じていた事を正確に当ててくる。

 だが涙のそばを離れるつもりはない。


「ありがたいお言葉ですが、涙の近くに居たいのでお断りさせていただきます」

「それは何故です?」

「お父さんなんで。父親として娘がもし危険な目に遭った時にすぐ近くで守ってあげられる距離に居ないと不安だから」

「そうですかぁ。それじゃさっきの話はなかったことにしてくださいぃ」


 真面目な話は終わりという事か、普段通りの話し方になり目もいつもの眠そうな優しい目に変わる。

 もし仮に変えて欲しいと言った場合どうなってたんだろうと少し考えたが、すぐに忘れる事にした。

 俺は涙の父親として一緒に居てあげたいという気持ちが一番大切にしたいから。


「それから何ですけどぉ、あなたの呼び方について少しお願いしてもいいですかぁ?」

「なんだよ。人前でなら敬語を使うがそうでない時は呼び捨てにさせてもらうぞ」

「私の事ぉ、お姉ちゃんって呼んでくれませんかぁ?」

「…………普通に嫌だ」

「何でですかぁ~!それくらい良いじゃないですかぁ~!」

「まだ俺達そんなに親しくないでしょ!?変なこと考えられそうな気がするから断る!!」

「そんなぁ~。せめて二人っきりの時だけでもぉ~」

「嫌な物は嫌だ!!」


 何て騒がしくしながらも変える。

 やっぱ変わってねぇな。天使の姉ちゃんは。

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