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転生者の贖罪  作者: 七篠
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悪霊退治に行く

 その日の夜、とある廃ビルに溜まっている悪霊達の住処に俺達は到着した。

 ここで俺達の実力をガブリエルに見せるのが目的なので特別強いというほどではないが、とにかく数が多い。

 周囲の悪霊達がこのビルに集まってしまったらしく討伐するのも大変そうだ。

 俺は銃とシロガネを取り出し、構えているとガブリエルは俺達に言う。


「本日はみなさんの実力を確認したいと思いますぅ。なのでぇ、今日はみなさんと協力するよりも各個撃破をお願いしますぅ」

「それってバラバラに動いていいって事ですか?」

「はいぃ。あえてバラバラに動いて個人の実力を見せてくださいぃ。チームメンバーとしての強さはまた後日と言う事でぇ」


 俺の質問にガブリエルはのんびりと答えた。

 一体どんな意図があって個人戦を望んでいるのかは分からないが、言う事を聞いておくか。


「各個撃破って言ってもある程度作戦は必要ですよね?ぶっちゃけどうします?」


 俺が涙達に聞くと全員少し考える。


「そうですね……個人の実力を確認したいという事なら各階層ごとに一人ずつ配置、その後戦闘を開始と言う事でどうでしょう」

「私は構いません」

「あたしも問題ないわよ」

「了解。そんで誰がどこの階層いきます?」


 このビルは地上五階建て、地下二階の商業ビル。

 地上は既に壁は取り払われ残っているのは支柱となる柱と壁だけ、天井も上の階の床しか残っていない。

 かなり広々としているが地下の方はビルを支えるための太っとい柱が残っているため少し狭い。しかも悪霊達の量は地下の方が多い。

 おそらく薄暗い所を好んでいるからだろう。

 悪霊ってのは人が怖がるような場所に好んで住み着き、人を襲う事が多いので当然だ。

 その代わり地下から遠ざかるほど悪霊の数は少なくなっている。


「私はどこでもいいですよ」

「ならあたしは1階をやらせてもらうわ」

「それなら……2階にしましょうか。少しでもガブリエル様に良い所を見せたいので」

「柊さんはどうしますか?」

「それじゃ……4階と5階をしますか。この二つは悪霊の数が少なそうなので俺がまとめて潰しておきますよ」

「本当に大丈夫ですか?一人で二つの階層を攻略するのは大変そうですが」

「本当にヤバそうな時があったらリルに頼る事が出来るのが俺です。なので俺が適任かと」


 涙にそういうとリルが俺の影から顔を出して軽く吠えた。

 それを見るとそれもそうかと納得してくれた。


「分かりました。それでは私は3階を担当します」


 こうしてそれぞれ担当する階層が決まった。

 エレベーターは機能していないので仕方なく階段で4階に行き悪霊達の前に出る。

 悪霊は人型の黒い靄のような形でほとんど生前の影も形も残っていない。

 ただ恨みや憎しみだけが残ってしまい人に迷惑をかける。


 だから彼らは生前の誰かの恨みと憎しみの影法師。魂も意思もないただ存在しているだけの物。

 だがそれでも彼らの前に姿を現した後、手を合わせた。


「みなさん。お疲れさまでした」


 生前の彼らが善人だろうと悪人だろうと関係なくシロガネで彼らを切り伏せた。

 滅技『円』で四方八方から襲ってくる悪霊達を一気に切り伏せ、この地から解放する。

 悪霊達は斬られると砂が風化したように消えていく。

 実態もないため彼らをどれだけ倒しても何も残らない。血痕も戦った形跡も全てだ。


 戦闘とも言えないただの浄化行動に一段落済んだ後に5階に行ってまた同じ事をする。

 俺が担当している階層は全て浄化し終わり再び手を合わせ静かに祈る。

 最初から魂も何もない者達だったが、それでも生きていた事は事実。手を合わせるくらいはしておきたい。


「意外と優しいのですねぇ」


 ずっと俺の事を見張っていたガブリエルがガラスのない窓に腰を掛けていた。


「他のみんなの事は見なくていいんですか」

「見てはいませんが感じてますよぉ。でもあなたが一番早かったのでこうして少しおしゃべりしたいなぁって」


 のんびりとした言い回しだが明らかに俺の事を警戒している。

 俺が本当に敵ではないのか、天使の視点で確認していると言ったところか。


「で、聞きたい事は何です」

「聞きたい事なんて特にありませんよぉ。ただぁ、あなたがどんな人なのか見ておきたかっただけですぅ」

「……そうですか。お話がないのであれば1階に行きます」

「それでいいですよぉ。頑張ってくださ~い」


 手を振りながら余裕丸出しのガブリエルに見届けられながら1階に向かう。

 まぁ問題は地下2階か。


 おそらく俺が戦った悪霊達は自分達より強い悪霊に引き寄せられていた可能性が非常に高い。

 そして地下の方から強くて嫌な気配を感じるからそこに悪霊の親玉がいる。

 しかも俺と似た気配がするから呪われているんだろう。

 いや、呪われているから強い悪霊になった、の方が正しいか。

 少し面倒な事になりそうだと思いながら1階に行くともう既にみんな集合していた。


「1階から上の階は全て終わりました。地下に関してはどうします」

「全員で攻略しちゃいましょ。範囲が広いので個別撃破しましたが、残っている階層は二つだけ、それならみんなで一気に片付けた方が早いかと」

「今回はしゃべるわね。何か企んでない?」

「企んでいませんよ。ただ明日も学校なので早く終わらせられるなら終わらせたいだけです」

「ガブリエル様は個人の実力を見極めたいと言っておりましたが、無視していいのでしょうか?」

「やり方はこちらに合わせてもらうしかないでしょ。それに危険は少ない方が良いと思います。地下の悪霊達は少し強そうですし」


 俺の言葉に反論は出てこなかったので全員でまずは地下1階から浄化する事となった。

 内容に関しては変わりないが、悪霊達の質が違う。

 さっきまでは黒い靄のような姿だったが、地下に居る悪霊はゾンビのような姿をしている。

 所々筋肉や骨が見えていたりちょっとグロテスク。

 でも俺達にとっては特に関係ない事なのでその程度でうろたえたりはしない。


 シスターは聖書の祝詞で浄化するし、銀毛は狐火で焼き払い、涙は被害が出ない程度の小さな魔力弾で浄化していく。

 俺は懐にしまっていた銃で浄化しているので一人だけバイオハザードみたいな感じになっている。


 少し地下2階にいる強そうな奴に対して少し気配を探ってみるが、特に反応はなし。

 一応大人しくしているようだが、仲間がやられている事にも気が付いているはず。

 それでも何もしてこないという事は仲間意識が低いのか、そこまでの感情を持つほど知性を持っていないのか。


 悪霊でも力が強ければ知性を持ったりすることもあるが、どうやら今回はそこまでの悪霊はいないらしい。

 だがこれもあくまでも予想。実際に対峙してみないと分からない事の方が多い。


 既に次の事を考えている間に地下1階の浄化が終わった。

 次は問題の地下2階だ。

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