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転生者の贖罪  作者: 七篠
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佐藤柊の前世は誰でしょう

「で、どうする?本人から言質取ったような物だけど」


 柊と涙が話している部屋の前でずっと聞き耳を立てていた雫、タマ、リル、一、凛音だったが柊の話した内容は多分真実ではないかと予想している。

 で、雫は小さくなって顔を覆っていた。


「雫、良かったじゃない。涙のお父さんが見つかって。あなたの夫が見つかって」

「見つけるって何!?確かに誰なのか確かめたかったけどまさか本当に彼とは思わないでしょ!?」

『それじゃ私と結婚してもらえるようアピールしてもいい?』

「リルは普段からアピールしてるじゃない!!というか今の話本当なの?真実って事で進めていいの!?」

「まぁ……まだどこの誰なのか分かってないが、本人同士が良いと思っているならいいんじゃないか?」

「そうね……こればっかりは本人達の問題と言うか……」

「一さんも凛音さんも突っ込み辛いからって丸投げしないでいただけないでしょうか!一応涙からお爺ちゃんお婆ちゃん言われてるんですから!!」

「雫ちゃん顔真っ赤よ。嫌がってないなら籍入れちゃったら?」

「彼今年で17歳ですよ!!あと一年足りません!!」

「足りてたら籍入れる気?意外と乗り気じゃない」


 そう言いつつタマは気に入らなかった。

 何がと聞かれたら答えられないが、なんとなく気に入らない。

 心の片隅に何か引っかかりを感じる。


「でも本当にどうする?タバコ吸っても落ち着かないんだけど」

「まぁ唯一の物的証拠になりそうなのは魂の情報だけ、それを彼から提供してもらえれば唯一の証拠にはなるはずだ」

「でもそれは彼も分かっているのでは?それでも証拠がないというのには何か理由があるかもしれませんよ、あなた」

「だが彼は転生している。転生の最低条件は前世と同じ魂である事、本人が転生したというのであれば魂くらいは変化がないと思うのが当然だろ」

「あなたの言う事は最もですが……それなら私達の魂が感じられないのは何故ですか?」

「…………」

「おそらく彼の前世は私達の子供の一人、それなのに凌駕と日芽香は気が付いていない。そして私達も何となく彼を育てた気がするという程度で確信は持てない。そうなると誰かの子供を私達の手で育てた、というのが最も可能性が高いかと。そしてその相手が全く思い当たらない」

「…………お前の言う事は最もだ。だがそれらも特定するとなるとかなり難しいぞ」

「きっと無理に特定しなくてもいいのでしょうが、気になります。あの子が誰の子なのか、知るべきだと私は思います」

「その辺りも定期検診の時にちゃっかり調べてあげますからご安心ください。はぁ、仕事増えるな~」

「ごめんなさいタマちゃん。でも意外と調べる気はあるのね」

「こちらもいろいろ事情があるって事です。私もはっきりさせたいって気持ちはありますから」


 柊の話を聞く限り最終的に選んだのは雫。

 でも自分にもチャンスがあったのであればなぜ選ばれなかったのか、ほんの少しだけ考えてしまう。

 そしてなぜ私達の前から消えたのかも聞きだしたい。

 全ての答えが柊の中にしかないという事実が気に入らない、というのがタマの本当に気に入らないところだ。


 それに対してリルは特に気にしていない。

 柊が誰との間に子供を残そうとも関係ない。自分はペット兼番犬としてずっとそばに居られるのだから別にいいと考えている。

 もちろん子供も欲しいが絶対というほどでもない。

 ただ今度こそ、片時も離れずずっと一緒に入れるのならそれでいい。


 最後に雫は悶絶していた。

 記憶にないとはいえ彼の前世と子供を残していたという事実かもしれない事に動揺を隠せないでいる。

 当然彼女の記憶には一切ないし、実感もない。

 だが彼の前世に体を許して子供を作ったという事実だけで悶絶してしまう。

 雫の貞操概念は非常に強く、自身がウロボロスという特殊で強い個体であるため気軽に体を許してはいけないと分かっているからだ。

 だが過去に体を許し、本当に子供をもうけてしまったと思うと自分はそういった事に軽い人物だったのではないかと考えてしまう。

 何より男性に裸を見られたことがある事実がどうしようもなく恥ずかしかった。


「うううぅぅ~」

「雫。転げまわってたって仕方ないでしょ。もう子供産んでかなり時間も経つんだからそんな事で転げまわらない」

「だって知らない間に男性に体を許してたって思うとやっぱり恥ずかしいじゃない!!」

「それはそうだけど、それは妊娠発覚した時に通った道でしょ。身に覚えのない妊娠だってみんなして大騒ぎしたの覚えてるでしょ。特にバカ

「あの時は凄かったな……うちに来て雫ちゃんと交流関係のある人物全員調べまわって、少しでも疑いがあったら刀振り回しながら追いかけてたからな」

「あの時の渉君は本当に怖ったわね……目も血走ってたし、あれは地獄の鬼も驚くわよ」

「だが結果どこの誰との間の子供か分からず、単為生殖じゃないかと思って生まれてみたら明らかに他の遺伝子情報が混ざってたし」

「そしてまた渉君が発狂しながら犯人を見つけ出そうとしていたけど……すでに死んでいたんじゃ見つけられないわね」

「もしかしてこの事実を隠したいから消失魔法ロストで全員の記憶を消したとか?」

「そんな事で俺の人生真っ白にしませんよ」

「そりゃそうだ。そんな事で消失魔法を使ってたらキリがない――」


 話している間にいつの間にか柊が部屋から顔を出していた。

 しばらく固まる全員に柊は呆れながら言う。


「みなさんの声部屋の中まで聞こえてましたよ。他の人に聞かれても困るので入ってください」


 柊とリル以外全員聞かれてた……っと思いつつも部屋に入って対面する。

 柊の膝の上にリルが頭を乗せながら撫でられ、涙はじっと母親である雫を見つめる。

 なんだかいたたまれない空気でありながらも柊は言う。


「とりあえず俺は涙の事を俺の子供だと思っています。その理由としては夢現を使ってきたり、涙の中にピュアとギアがいるという点です。それ以外の事は深く言うつもりはないのでそっとしていただけると助かります」


 そう言った柊だがまだ周りの空気は重い。

 そこにタマが全く空気を読まずに発言する。


「ちなみに柊君が雫を抱いた記憶ってあるの?」

「タマ!?」

「あるよ」

「柊君!?」

「それって何回したの?」

「死ぬ前日に一回だけした。ぶっちゃけまさか妊娠しているとは思いませんでした。てっきり後で誰かと結婚して生まれてきたのが涙だと思ってました」

「それ本当?本当は何度もしてたんじゃないの?」

「いやこれに関しては本当です。マジですガチです。はぐれた後にサマエル達と一緒にバカやってたので理事長とそんなことする暇全くなかったです。はい」

「どっちから誘ったの?」

「理事長の方から」

「嘘でしょ!?」


 柊の答えにさらに驚いた雫。

 顔は真っ赤になり過ぎてすぐにでも倒れそうになっている。


「まぁ経緯は省きますが、涙が俺の疑似人格を魂の中なり精神なりに宿している時点でかなり俺の子供である可能性が非常に高いと思っています。養育費とかはちょっと待ってください。まだバイトしかしていないでまとまった金とかないです」

「それに関しては特に問題ないけど、あっさり認めるのね」

「こういうのは思い切って認めた方が先に進めると思いますから。それに涙が俺の事を父と呼んでくれる間は父で居たいと思っているので」

「それじゃそのためにオーラを少し分けてくれもいいかしら。それで証明されるはず」

「それは俺も考えたんですが……う~ん」


 何か不安があるのか柊は考えながらオーラと魂の欠片を試験官に入れる。

 タマはそれを大切に収納しながら聞く。


「何か懸念点でもあるの?」

「まぁ少しだけ。でもこれは考えすぎか?」

「とりあえず話してみて。内容を聞いてみないと何とも言えないから」

「それじゃ軽くですが。前世の俺って強くなるためにいろんな神仏に会って喧嘩したり、そのオーラを軽くばって強くなってきたんですよ、で、その奪ったオーラを利用して自身の魂に組み込む事で身体的、魔力的に強化してきました。だから俺の魂には非常に多くの魂が混在している状態なんです。これでも俺だけのオーラと言うか、魂って正確に検出できます?」

「調べてみないと何とも言えないけど、さすがに大丈夫でしょ。例え様々なオーラが混在しているとしても大元であるあなたの魂は健在なのは間違いないし、オーラの量で見分ける事は可能。そのオーラと涙のオーラを比較すれば確定できるはずよ」

「分かりました。よろしくお願いします」

「それで、私達とあなたの前世ってどんな関係だったのよ?」


 タマは無難だろうと思いながら聞いたが、柊は苦虫を噛み潰したような表情をしながら言う。


「前にも言った通りバカやっているところを捕まえに来るライバル関係みたいなものですよ」

「嘘。そんな奴に雫が心を許すわけないでしょ。もっと言えばリルは雫以上に疑り深いし、本当に腐った連中と付き合うとは思えない。正直に言って」


 強く言うと柊は諦めたようにぼそりとつぶやいた。


「……学校の同級生、そして先輩後輩ですよ」

「誰と同級生」

「理事長とタマ、渉先生とですよ」

「それじゃリルは後輩って事ね」

「ええまぁ。昔リルが抱えてた問題を解決した時に滅茶苦茶懐かれて、主従契約を結びたいと言われるくらいの仲でした。まぁ事情で契約しなかったんですけど」

「……つまりリルが狼の姿から人間の姿になれないのはあなたのせいって事ね」

「その通りですよ。俺がはぐれる前にリルを同じ道に引きずり込む責任も勇気もなくて、置いてけぼりにした酷い飼い主ですよ」


 そう言いながらリルの頭を撫でる柊は辛そうな表情を無理矢理笑顔で隠そうとしていた。

 柊の言いたくない事、隠したい事が大まかにでも分かっただけでも収穫である。

 何より魂の情報を手に入れた事は非常に大きな手掛かりだ。

 涙との親子関係の解明だけではなく、様々な違和感に対しても解明するヒントになるかもしれない。

 特に彼の中に居たもう一人の自分に関しても分かる事が増えるかもしれない。


「そう。それじゃ私から聞きたい事はまた今度でいいわ。他の皆さんは何か聞きたいことある?」


 そうタマが聞いた時に凛音が聞いた。


「では私から一つだけ聞かせてください――あなたは誰の子ですか」


 そう凛音が聞いた時、柊は苦笑いしながら言った。


悪魔の神(サタン)と先代ウロボロス(オーフィス)の子って言ったら信じてくれます?」

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