表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の贖罪  作者: 七篠
125/216

ベレトの試合

 交流試合当日。

 軽く準備運動をしながらベレトと桃華と話す。


「初戦がんばれよベレト」

「ファイトですベレトさん!」

「気楽にやらせてもらうわよ。情報も対策も練っててきたし」

「俺達はここで見守らせてもらうぞ」

「はいはい。いい勝負になるよう頑張るわ」


 そう言いながら1年生の選手控室から出て行った。

 気合が入り過ぎている訳ではなく、かと言って気が抜きすぎている訳ではない。

 ちょうどいい感じだと思いながら見届けると交代するように涙が入ってきた。


「一緒に観戦してもよろしいですか?」

「……断れないのでどうぞ」


 そう言うと俺の隣に座った。

 桃華と涙に挟まれて両手に花状態。少しうれしい。


「何やら悪い事をしたと噂で聞きましたが本当ですか?」

「いいえ。自分達で情報を収集して対策を考えてきただけですよ」

「それは良かったです。なんでも試合前にウェールズ騎士学園にハッキングされたとの情報があったそうなので、こちら側から何かしていないか心配だったんです」

「ハッキングなんてしませんよ」


 俺は堂々と言うが桃華は口を真横にしてしゃべらないようにしているのでハッキングしましたと言っているような感じだ。

 口に出さない分まだマシと言えるかもしれないが。


「それならよかったです。それで彼とカエラさんの相性はどう見ていますか?」

「そうですね……2人とも攻めの姿勢が強いのでどちらが攻め切れるか、あるいはどうやって隙を作るかっと言う所が焦点になるんじゃないですかね。魔法でも武器でもその辺りは発想力が大きな決定打になるんじゃないかと思います」

「なるほど。私にとってはどのように相手の攻撃をさばく事が出来るのかに注目したいと思います」


 何て話している間に第一試合が始まろうとしている。


『これより!!八百万学園対ウェールズ騎士学園の交流試合を始めます!!』


 今日も司会をしている連中は楽しそうに実況をする。

 本当に他人事だな~っと思いつつも試合をのんびり見る。


 前回の悪魔学校との交流試合との違いは武器の使用制限がない事。

 極端な言い方をすればどんな武器を持ち込もうがかまわないっというルールになっている。

 それはこちら側も同じなのでイーブンとは言い難いが、その辺は学校や個人で調整するように言われている。

 ちなみに俺の装備は主武器であるバットと副武器であるシロガネに設定しておいた。

 それ以外の武器を使用した場合反則負けになる。


「ツー。一応試合を全て記録保存しておいてくれ」

『了解しました』


 この後の反省会のためにも用意しておく方がいいだろう。

 勝った負けただけではなくあの時どのように動けばよかったのかなど、見返す事が出来る。

 俺が見た目通りの年齢の時はそんなもんなかったから本当に便利な世の中になったもんだ。


 なんて思っている間に試合が始まった。

 相手選手、ゴドフリーはいきなり槍をカエラの顔めがけて投げて来た。

 槍と言っても1メートルくらいの短いものだが、カエラは何なく身体を逸らすだけで回避したがすぐに腰の剣を抜いてカエラに迫る。


 でもこの程度は俺が徹底的に苛め抜いておいたので動揺は見えない。

 むしろ掌をゴドフリーに向けて雷の低級魔法を放つ。


 これに関しては俺が教えておいた。

 相手はどれだけ鎧で身を固めていたとして、ただの金属を使っているのであれば簡単に攻撃は通る。

 しかしダメージが見当たらない場合は魔法か何かで防御している可能性があるのでそれを確かめるためにもちょうどいいと。


 これにはカエラも納得していたので素直に実戦で使ったようだ。

 そしてゴドフリーの反応を見る限り、少しは魔法の効果が見える。

 カエラの表情には手ごたえがあったようで足元が少しおぼつかない。

 おそらく電撃のせいで少し足がマヒしたのだろう。


「良い魔法の選択ですね。これも柊さんの指示で?」

「アドバイス程度ですよ。鎧は鉄製が多いので電撃系なら魔法防御など関係なく通じる可能性があると教えただけです」


 画面を見ながら言っているがゴドフリーの動きに少し違和感を覚えた。

 軽くとはいえ麻痺していた足がすでに回復している。

 低級とはいえこれほどまでに回復が早く終わるだろうか。

 それにもう既に槍を振り回し元気に大暴れ。


 もしかして……あいつ防御じゃなくて回復に力を注いでいたのか?

 その場合回復させる術式を破壊するか、その供給源を破壊するしかない。

 大抵は自身の魔力が供給源である事が多いが……資料では特別魔力量が多いとは記載されていない。

 そうなると他に供給源となる何かを持っている可能性が高い。普通に考えれば魔石、魔力の結晶体を保持している可能性が最も高いが、ぱっと見る限りブレスレットやアミュレットのように身に付けている様子はない。


 となれば……服か?

 鎧の下にきている服の中に隠し持っている可能性が最も高いか。

 服の中に隠しているのであれば破壊するにはさっきよりも強力な電撃か、鎧の外から強い衝撃を与えて魔石を破壊するしかない。

 まぁこれがもし仮に契約している精霊や魔物などから供給されている場合そいつを倒さないといけないから手の出しようがないけど。

 だが事前にそう言った契約関係のある存在はいないようなので流石にこれは考えすぎかもしれないが。


 ベレトは四方八方から魔法を放ってゴドフリーに攻撃するが、槍を使って魔法は全て撃ち落とされている。

 だが魔法による効果、熱や麻痺は少しずつ蓄積しているようで動きは少しずつ鈍くなっている。

 鎧の関節部分を凍らせて動きを止めたりしているのを見る限り防戦一方と言う訳でもない。


「練習試合としては良い感じですね」

「まぁ向こうはそろそろ意地出してきそうだけどな」


 桃華の言葉に俺はそう言う。


 どうもゴドフリーと言う男は短気のようだ。

 最初こそ槍で魔法を撃ち落としていたのに少しずつ雑な槍さばきになってきた。

 単なる集中力の低下か、あるいは疲弊によるものか力任せの動きが増えてきた。


 それに比べてベレトは汗をかきながらも冷静に自身と相手の状態を確認できている。

 ベレトは体力の限界が近づいてきており、ゴドフリーは集中力の限界が近い。


 どうなるかな?っと思っているとゴドフリーの方が勝負を終わらせに来た。

 体育館の端まで下がると、槍を抱えて突進してくる。


 弾丸、いや大きさ的に大砲やミサイルと言った表現の方が適切か。

 そんな物が襲ってきたのだからここでベレトの力が試される。

 どうせこうして見ている事しか出来ないんだからどうしようもないんだけど。


 ゴドフリーの槍がベレトを捕らえた瞬間、ベレトが消えた。

 どうやらゴドフリーが突っ込んだのは幻術で生み出されたベレトだったらしく、本物は既にどこかに避難していたらしい。

 そのままゴドフリーは壁に激突し、槍を壁から抜こうとしたときに巨大な氷柱で動きを封じられた。

 それこそ相手を一切動かせないように氷の茨の様に棘が関節の間に入り動きを阻害。さらにゴドフリーの背後から相手を凍結させる魔法で下半身を氷漬けにしてから魔力弾でいつでもとどめをさせる状態になっている。


 流石にこれは完全敗北とみなされたのか、アナウンスによりベレトの勝利が確定した。

 魔法を解除した後優雅に礼をして去るベレトだが、疲労の色は隠しきれない。


「ちょっと迎えに行ってきます」

「私も行きます!」


 検討したベレトを迎えに行くと、本当に体力が尽きたという感じでフラフラと歩くベレトを廊下で発見。

 何も言わずにベレトの腕を担いで控室に戻る。

 桃華も反対側の腕を肩にかけて一緒に移動させてくれる。


「ちょっと。汗まみれなんだから。こっち来ないでよ」

「歩くのもキツそうなのに黙ってられるかよ」

「あなたのしごきに比べたらあれくらい何てことないわ」

「俺達の中で一番体力ない癖によく頑張ったよ」

「それはどうも」


 控室についてベンチに座らせると何故かベレトは俺の事をじっと見てきた。


「なんだよ」

「ちょっと出て行って」

「何で?次桃華の試合だから見たいんだけど」

「シャワー浴びるの!!出て行って!!」

「それは失礼しました」


 俺は渋々控室から廊下に出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ