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転生者の贖罪  作者: 七篠
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ウェールズ騎士学園

「あ~、まだ体が痛い。あんたのその武器チートじゃない。私にも貸しなさいよ」

「お前には使えねぇよ。オーラで身体能力の強化下手くそだし、長距離武器は魔法の方が使いやすいだろうから要らんだろ。普通に持つだけでも結構な重量あるっていうのに」

「でもああいうのを見るとやっぱり武器も重要なんだなって思いますね。私も少しは武器を持った方がいいんでしょうか?」

「桃華の場合だと革製のグローブとかがいいんじゃないか?それから選ぶときは指ぬきの方が良いと思うぞ」

「何で指ぬきグローブなんですか?指先までしっかり覆われた籠手の方がいい様な気がしますが?」

「そりゃお前が爪で引っかいて攻撃するからだよ。確かに防御力を重視したいのであれば鉄製の籠手の方がいいだろうが、その場合爪は使えない。確実に仕留める牙さえ使えればいいと言うのであれば問題ないと思う」

「なるほど。それじゃ爪も使えるように指ぬきグローブの方がいいかもしれませんね」

「ちょっと。桃華と私じゃ扱い違くない?差別よ差別」

「仕方ないだろ?すぐそばに伯母と父親がいるんだから」


 そう言いながら影を見ると、影から顔を出したリルが『伯母さんって言われたくないな……』っと言う表情をしていた。

 でも友達に娘がいるのを考えると、おばさん扱いされても仕方ない気がするんだよな~。

 俺はおじさんの自覚あるから否定しないけど。


「で、何で俺ら生徒会室どころか理事長に呼ばれたんだっけ?」

「今度の交流試合についてでしょ。そのくらい覚えておきなさい」

「悪いな、新しいおもちゃをもらったばっかりの子供みたいにはしゃいでたから覚えてなかった」

「かっこいいですもんね。とんでもないお金かかってましたけど」


 桃華は値段だけはドン引きしている。


 ちなみにロマンから武器を買った後、色々魔術で補強及び長距離攻撃が出来るように調整した。

 と言ってもほとんどその調整をしたのはツーであり、なんか好き勝手に弄り回していたように感じる。

 普通の銃の様に低級魔法を発射したり、上級魔法を発射する事が出来る。

 しかもこいつを使って魔法を使う場合魔力消費量が少なく済む低燃費機能付き。

 ツーの魔改造好きは俺に似たかもしれない。


 こんな武器が5000万で済んだのは安かったと言わざる負えない。


「で、理事長はなんて?」

「これから対戦相手とビデオ通話だって。時差の関係でこの時間にしか通話できないみたい」

「あ、すっかり忘れてた。それじゃ向こうて今何時?」

「大体朝8時頃ね。地域によって微妙に違うかもしれないけど」

「そりゃこっちが時間合わせないとキツイわ」


 だから夕方なのか~っと思っていると視聴覚室に到着した。

 そこにはすでに涙と2年生もいてこれからビデオ通話する直前という感じ。


「みなさん揃いましたね。それでは通話を始めます」


 俺達が席に座ると理事長が言い、通話は繋がった。

 ぶっちゃけ英語は得意ではないのでほとんど右から左に聞き流してただぼ~っとしている。

 まぁ言葉は分からないが何を言っているのかの雰囲気は涙や他の人達が話している表情と口調、雰囲気から大雑把に推測する。

 全体的な雰囲気としてはそんなに悪くないが、俺達一年、特にベレトと桃華には随分驚いている様子。


 まぁ元々ヨーロッパ周辺は人間至上主義者が多い。

 その理由の一つとして元々精霊や妖精が誕生し辛い環境により、一定の地点に多くの精霊が密集している状態だ。

 更に悪い妖精、モンスターと言われる狼男やドラキュラのような存在が多かったのも人間至上主義の原因だ。

 彼らも元々は精霊や妖精の類だったと言われており、自然エネルギーが少ない地域で生まれてしまった事で自然エネルギーではなく、人間からエネルギーを補給するようになった。つまり人間を捕食する事で生きながらえる妖精と言う立ち位置になってしまう。

 それにより人間の天敵となった彼らから身を守るため、モンスター達を根絶やしにしようとした歴史もある。


 だからこそ人間の敵と言える悪魔や妖怪が人として扱われている事に驚きを隠せないんだろう。

 何度も言うが善悪関係なく神として祀れば神、と考えている日本人の方がかなり珍しいのはこの反応でよくわかる。

 まぁそれでも雰囲気が極端に悪くならないのは性格が温厚な生徒達を向こうが選んでいたからか、あるいは時代の流れとともに丸くなっただけか、強い嫌悪感は無い様で良かった。


 そして最後に眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の3年生が名乗った。


『初めまして。ウェールズ騎士学園3年生首席、グレイシア・ガラハッド。ガラハッド卿の子孫でもあります』


 あ、この人だけ日本が話してる。

 というかガラハッドの子孫なんだ。ランスロットの子孫じゃないんだ。


『例年通りの場合同学年で試合をするのが通例となっていますが、今回は戦いたいと思った者同士で戦うと言うのはどうでしょうか?』

「つまり学年に囚われず、戦ってみたい相手と戦うと」

『はい。昨今は龍化の呪いによって様々な種族が暴走してしまう事件が多発しています。もちろん最も人口の多い人間が多いのですが、それでも予想外の種族の方が呪われ、戦った事がないから対処が遅れた。などと言う事態に陥らないよう訓練しておきたい。というのがこちらの正直なところです』

「なるほど。そう言った訓練の目的もあると」

『はい。お恥ずかしながら、こちらは人との戦いばかりでして。それ以外の類と戦う機会も少ないのです。そのため更に対人戦に特化した物となってしまい、それを少しでも改善したいのです。ご協力いただけますか』

「その事は理事長から事前に聞いております。なので色々な方を対戦相手として申し分ないでしょう。特に彼は特殊かと」


 おい涙。変な期待を寄せるな。

 相手さんも一番普通の人間だろって不思議そうな顔してんぞ。


『それではそろそろ対戦相手を決めましょう』


 こうして対戦相手を決めて行く事になったが、俺は向こう側の生徒達を見てピンとこなかった。

 ぱっと見てこの人と戦いたいと思える人がいない……


「柊さんは誰と戦いたいですか?」


 話し合いに参加せずプロフィールとにらめっこしていた俺に涙が声をかけてきた。

 まぁ交流会と言うか、お互いに勉強しましょうみたいなのが強いのであれば誰とでもいいかと思う。

 興味があるとすればガラハッドの子孫だが、ああいう真面目ちゃんっぽい奴には真面目な奴をぶつければいいだろう。


「俺は特にこの人じゃないとダメだっていう方はいないので誰でもいいです」

「そうですか。それでは彼女はどうです?」


 そう言って指を指したのは2年生の女子生徒。

 赤毛の少女で精霊魔法の使い手と書かれている。

 前に精霊使いがどうこう言ってたのは彼女の事だったのか。


「俺でいいんですか?精霊使いなんてレアな存在、他に戦いたいと言う人もいそうですが」

「まぁ何と言うか、遠慮し合っているうちに余ってしまったようで」

「みなさんがそれでいいのなら」


 特に反対意見もないので頷いた。

 向こう側からも特にこれと言った苦情のような物もなく、俺は彼女と戦う事が決まった。

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