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転生者の贖罪  作者: 七篠
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ロマンへの武器製作依頼

 と言う訳で日を改めてドリームキャッチャーを作るところを佐々野穂香の前で作ろうとしていたら……


「意外と難しい物ですね」


 少し苦戦しながら一緒にドリームキャッチャーを作る涙がいた。


「あの、何で会長がいるんです?」

「さぁ?なんか俺に用があるらしい」


 ロマングループに向かっている途中、涙が俺の事を探していたようでそのままついてきたのだ。

 ちなみに今は人前なのでお互いに敬語を使ってる。


「それで会長。ただの交流と言う訳ではないんですよね」

「はい。今年の秋の交流会では佐藤柊さん、大神桃華さん、カエラ・ファーゲル・フォン・デラ・アモンさんの3名にお願いしたいと思い声をかけさせてもらいました」

「俺だけじゃなくて桃華とカエラもですか」

「はい。今年はお互い後輩の戦闘経験を養う事を主として行う事が決まりましたので、向こうには居なさそうな生徒達と経験を積ませたいとの要望だったのでみなさんがふさわしいかと」

「俺と桃華は問題ないと思いますが、カエラはどうでしょう。彼女は人間の血が濃いですが、思考に関しては普通の悪魔と変わりませんよ」

「その辺りは問題ありません。彼女もこの学校の生徒として義務を果たしてもらわなければ困ります。それに依頼料に関しては用意していますので喜んで首を縦に振ってくれるかと」


 買収する気満々か。


「まぁその辺は任せますが、前の悪魔の学校の時みたいに変な事させられたりしませんよね?」

「そう言ったことは起きないように細心の注意をしています。もちろん理事長にも協力してもらっていますのでほぼあり得ないかと」


 理事長が協力してくれてるなら大丈夫か?

 そう思いながら俺達の手は動き続ける。

 そんな俺の手元を見ながら佐々野穂香が興味深そうに言う。


「それにしても……柊さんって本当に慣れているんですね」

「まぁこういうのは何度も作ってたので」

「でもそれが本当に悪魔の貴族の方に売れるほどの技術なんて、なぜ作っていたんですか?」

「一つは繊細な魔力コントロールのため。魔道具の中でもこういう普通の材料を魔道具として作り上げるには多すぎず、少なすぎない魔力コントロールがものを言うからな。その訓練のためにひたすら作ってた」

「あ、その辺は戦闘科らしい理由なんですね」

「それでもできた物は近くの子供にあげたりしてたからそれなりに評判良かったけどな。あとロマン先輩、相談良いです?」

「ん?今次の科学武器の開発を構想していたのだが、どうかしたのかな?」


 ずっと空気だったロマンに声をかけた。

 いったんドリームキャッチャーを作る手を止め、札束を適当に机の上に置いた。

 それを見て驚く佐々野穂香。

 ロマンに関してはよく分からないと言う様子を見せながら俺に聞く。


「これは?」

「俺から制作依頼をしたくてな、とりあえず今はこんな風に金出せるよって言うアピール」

「ふむ。つまり君から正式に武器の発注を願うと言う訳か。以前のようにバットに付与を施す程度のものではなく、本物の武器が欲しいと」

「そんなとこ。これからもあのバッドは普段使い用として持ち歩く予定だけど、本気の戦闘用でも使える武器がそろそろ欲しいと思ってな。大金も手に入ったし、ここはいっちょ作ってもらおうかな~っと思って」

「なるほど……しかし100万を見せられても君の求める武器によって金額は簡単に跳ね上がるぞ。最大いくらまで出せるのか、それによって実現可能かどうかも変わる」

「そりゃそうだ。とりあえず5000万ならどう?」

「……それなら大抵の武器は作れるだろうが、本当にそんな金があるのか?」

「この間悪魔の貴族から大金もらったって言っただろ。その時の金」

「それなら納得だが、5000万で売れたのかね?」

「そうだったみたい」

「みたいって……まぁいい。具体的にどんな武器が欲しいのか、聞かせてもらおうじゃないか」


 ロマンも真剣な表情で椅子に座り手帳を取り出した。

 俺の求める武器が実現可能なのかどうか、確かめるためでもあるんだろう。


「言うけど多分相当難しいぞ。ぶっちゃけ共同開発の方が良いよなって思ってるし」

「それでもとりあえず言ってくれ。聞かなければ何も分からない」

「理想として剣、槍、籠手、鎌、弓、鎖分銅、銃、大砲の8種類に変形する武器が欲しい。もちろん絶対ではないが……できるだけ多くの形態変化に対応できる武器が欲しいんだ。様々な状況に合わせて変形する武器が欲しいって事だ。出来そうか?」

「………………一つ聞こう。何故私に頼った」

「あんなたらこういう変形武器に関する知識を持っていると思ったからだ。なんせ特撮に憧れて真似た武器を作っているくらいだからそう言う知識もあるんじゃないかと思った。特撮にはよくあるだろ、変形武器」

「………………」

「正直俺は弱いからあらゆる状況に対応できるように準備しておかないといけない。そのためには様々な武器を持つ必要があるが、それらすべてを持ち歩くのはあまりにも効率が悪い。相手がこの武器を使ってくるからこの武器を取り出そうとする前に潰されちゃ意味がない。だから1つの武器で複数の形状になる武器が欲しいと思った。協力してくれないか」

「…………………………」


 俺はそうロマンに頼んでみたが、メモを取った後は腕を組んで黙り込むだけ。

 やっぱり無茶ぶりだったかと思っていると口を開いた。


「近接武器の形状変化だけならできない事もない。だが長距離武器の変形は無理だ。銃や弓の場合弾と矢が必要となる。それらを始めから込めていた場合、中で暴発したり折れたりするリスクの方が高い。だから行うとすれば光線銃のような物になる。最低でも火薬は使えない」

「実用性がかなり低いか……」

「それに武器として使うという事は一定以上の強度が必要不可欠。様々な武器に変形させると言っても様々な方法があるが、武器として使うのであれば組み立て式は強度不足でろくに使えない。となると1つの武器を変形させて使う方が強度的に問題は起きにくい。だがその場合変形できる武器の変換数は……2つが限界だろうな。槍と薙刀、剣と刀のような似たような形状の武器ならどうにかならなくもないかもしれないが……それなら一つの武器を高性能に作り上げる方がよっぽど効率的だ。それでも変形に拘るかい?それから共同研究の言葉も私は気になる」

「やっぱりそう簡単にはいかないか。それから共同研究に関してはロマンの意見を尊重する。お前のロマンに反する行為だからな」

「その言葉で大体の事は予想できるが、あえて聞こう。どのように作るつもりだ」

「俺の魔術とお前の技術を合わせたハイブリットを開発したい」


 断るかどうかはロマンの反応次第。

 ぶっちゃけ思うが儘に形状を変形させる武器を作るには俺の技術では全く足りない。

 魔術だけに関しては子供の頃から訓練を重ねて付与魔法に関しては全盛期の3割程度は可能。あまり特別な付与は施せないが基礎的な物なら何重にも、いくつでも重ねて付与を施す事が出来る。

 だからロマンに頼みたい事は本体を作ってもらう事。

 その後俺が付与魔法で火薬を使わずに銃を撃てるようにしたり、矢を放てるようにしたい。

 もちろんそれだけではなく本体の強化も施すつもりだ。

 もし断られたら……下手くそなりに自分で作るしかない。


 俺の言いたい事を全て伝えた訳ではないが、本気である事はぶつけたつもりだ。

 だから後はロマンの反応次第……


「残念だが、断らせてもらう」


 ダメ、か。


「理由を聞いてもいいか」

「これに関しては私の意地、誇りと言っていい。それを捻じ曲げてまで行う理由がない。これが理由だ」

「……分かった。今回は諦めるよ」

「ふむ。意外とあっさりと引き下がるね。他に作ってくれる当てでもあるのかな?」

「そんな所ねぇよ。そうなったら自分で作るしかない」

「自分で作れるのに私に依頼したと?」

「そうじゃない。自分で作れたとしても見た目だけの張りぼてだ。剣もどきに槍もどきのなんちゃって武器になるからロマンに頼もうと思った。俺に出来るのは精々その時使いたい武器の形状に金属を変えるくらいだ。それを応用して剣の形をした金属の棒とかに形状変化させようと思っただけ。まぁそんなことするくらいなら複数の武器を持ち歩いた方が安全性は高いだろうな」


 色々諦めながら愚痴るように言うとロマンは少しだけ感心したような態度を見せる。


「私に断られた際の第二案はすでにできていたわけだ。それにその方法なら確かに耐久性という点だけはクリアできそうだ」

「その代わり俺が今使ってるバットと特に変わらない。形態変化武器の実用化は遠いな」


 天井を見上げながらしみじみと言った。


「…………」

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