夏休み明けのクラスメイト達
夏休みも終わり、久々の登校に休みボケが少し入っているが遅刻する事なくクラスに到着する。
クラスメイトと軽く挨拶すると、カエラと桃華が声をかけてきた。
「柊、久しぶり」
「柊さんお久しぶりです」
「2人とも久しぶり。元気してたか?」
「私は元気。夏休み中バイトの掛け持ちで色々稼いできた」
「私は実家に帰ってゆっくり過ごしてました。お父様と少し修行をしたと聞いていましたが、夏休みも修行とは真面目ですね」
「真面目じゃねぇよ。そうしないと体力とかその他もろもろ維持できないからしないといけないだけ。あとカエラはずっとバイトかよ」
「こういう時じゃないと堂々とバイトできないのよ。うちの毒親もその時くらいはバイト許してくれるし」
「何と言うか、本当にバラバラな夏休み生活だな俺達。普通は友達と一緒に遊びに行ったりするらしいぞ」
「本気でそう言う事したいって思ってる人いる?」
カエラが聞くが誰も手が上がらない……
悲しすぎるだろこのメンバー。
「あ、でもみなさんと交友は深めたいと思ってますよ。でもそれは夏休みじゃなくても良いと言うか……」
「まぁそんなところだよな。こうして学校に来れば基本顔を合わせることできるし」
「それもそうね。それぞれ家の事情とかもあるし、無理に長期休暇中に会う必要もないかもね」
「俺は特に家の事情とかないけど?」
「逆に珍しいわよ、本当の一般人は」
まぁこのクラスでは珍しい方か。
そう思っていると久々に聞いたチャイムが鳴る。
担任である大神遥が厳しいので席から離れていた生徒は慌てて自分の席に着いた。
チャイムが鳴り終わるのと同時に扉が開き、大神遥は言う。
「みなさんお久しぶりです。夏休みが終わったばかりですが引き締めていきましょう。今年の秋には交流試合がありますので」
また交流試合があるのか?
前みたいな面倒事に巻き込まれるのは嫌だな~っと思いながら聞く。
「今年は各学年から5名選出されたメンバーによるチーム戦です。今回一年生が戦うのはイギリスの方々です。もちろん同級生と戦いますので、他国の戦い方、どのような事に注力しているのか、ただ眺めたりするのではなくしっかりと学ぶように。詳しくは今日のロングホームルームで話しますので寝たりしないように。それでは夏休みの宿題を回収します」
チーム戦ね……
少し情報を集めておくか。
――
「で、秋の交流戦って何?」
「毎年行ってる他国の交流会ね。これに関しては悪魔とか天使とか、ほとんど出てこないから安心していいわよ」
詳しい事を知っているのではないかと学食でカエラに話を聞いていた。
もちろんこれも対価として支払う必要があるので学食のおごりという事で話してもらっている。
そしてカエラの隣には桃華もいる。
「基本的に人間同士の戦いになる事が多いわね。もし悪魔や天使が出るしても私のような人間との間に生まれた雑種ばっかりよ」
「自分で雑種とか言って悲しくなんねぇの?」
「悪魔社会じゃこれくらいの差別は当然。血筋の良さと家の階級で発言権も変わるんだから気にしなくていいわよ」
「あとこれはお父さんから聞いた話ですが、たまに精霊魔法を使う方もいるそうです」
「精霊魔法?また珍しいな」
精霊魔法とは、基本的に精霊と契約する事で精霊の力を借りて行使する魔法の総称だ。
火の精霊の力を借りて火の魔法を使う、水の精霊の力を借りて水の魔法を使うと言うのが割りやすいだろう。
ただこの精霊と言うのが非常に種類が多く、日本の八百万の神に近い。
とくにイギリスではアーサー王伝説出てくるように精霊が多い地域の一つだ。
ちなみに最も多いのは日本であり、日本の様々な気候や天災の影響で精霊にとって過ごしやすい場所だからと言われている。
精霊と言う種族は基本的に無邪気である。もっと分かりやすく言うのであれば子供っぽいのが多い。
気に入った人間が居れば親しくなるし、逆に気に入らない人間にはイタズラをして困らせる。
その気に入られた最大の形が精霊契約であり、精霊魔法の根幹である。
「精霊に気に入られるのってかなり難易度高いんじゃなかったっけ?」
「その通りです。小さな自然現象が意思を持って行動しているのに等しいですから、うまく使えばその属性に合わせた事なら何でもできます。でも下心などはすぐに感知する勘の良さもありますし、元々子供っぽい性格の精霊が多い事から扱いにくいとも言われています」
「その点私達悪魔は楽なもんよ。得があればその契約内の事は確実に実行するからね、あいつらは本当に気に入った奴の言う事を聞くか、気まぐれで適当にやってはいお終いもあるから質悪いのよ」
「まぁネットとかでも精霊を見つけることは出来ても契約にまで至った連中は本当にいないらしいからな。ほとんどは子供の頃の友達感覚で終わりっぽいし」
「そうなのよね~。あいつら本当に適当すぎて嫌い」
「あはは。カエラさんが言いたい事も分からない訳じゃないんですけどね……」
苦笑いしつつも否定はしない桃華。
と言っても俺は別に精霊が欲しい訳じゃないし、ぶっちゃけ俺のスマホの中にいるツーも精霊みたいなものだ。
ツーの元となったユグドラシルの枝が大樹になって意思を持った感じだから木の精霊と言っても間違いではない。
その後色々魔改造したから純粋な精霊とも言い難いが。
「それにしても娘にとはいえよく精霊使いがいる事を教えてもらったな」
「いえ、その精霊使いがいるのは3年生の方だそうですし、基本的には騎士の方が多いと思います」
「あとキリスト教徒もね。私との相性最悪」
「あっちの方は文化的に善悪をはっきり区別したがる性質の人が多いから、日本人みたいに悪魔だろうが妖怪だろうが良好な関係を築けるのであれば種族を気にしません。って連中の方が圧倒的に少ないんだろうよ」
「そう言う意味じゃ日本ほど楽な国はないわよ。私達悪魔は基本的に嫌われ者だし」
「悪魔のお仕事って基本的に地獄行きになるよう誘惑するのが仕事だからな。だからこそ魂を対価とした契約なんかも一応今もあるんだろうし」
「そんな契約する人間は全然いないけどね~。やるとしたら本当にクズな人間がするらしいわよ。子供を売って大金を得たいクズ親、みたいな」
「私達妖怪側に似た事をしようとしている人がいますよ。今時生贄を捧げられても困りますって」
「え、まだそういうことする人生き残ってんの?」
「意外といますよ。山奥の小さな村の人達とか、昔から私達妖怪を神と勘違いして崇めているお爺ちゃんお婆ちゃんとか」
「いや、狗神なら神様と変わらんだろ」
「私としては妖怪としての面の方が強いと思うので神様扱いされるのはどうしても違和感が消えないんですよ」
そう言う桃華はむずがゆそうにしている。
その辺の考え方に関しては人それぞれなのだろう。
それにしてもイギリスか……
あいつら元気かな?
「そう言えば今年はいるのか?円卓の騎士」
俺がそう言うと2人とも首を横に振った。
「居ないわよ。というか全くいない訳じゃないけどまだ若過ぎる。一応情報は集めてみたけど、どれも私達とは微妙に年齢が違うのばっかり。私達と戦う事はないわよ」
「ちょうど現円卓の騎士達は私達の親世代ですから、微妙な時期だったんですよね。確か3年生の方には1人いたような……」
「それどこの家の子だ?」
「そこまでは覚えていませんが……1年生の中ではいませんね」
それならいいのかな?
そう思いつつもあの3人はどうなったのか、少し気になる。




