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転生者の贖罪  作者: 七篠
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妙と合流

 本堂を飛び出してすぐ俺達は俺と同じ気配、呪いの気配を頼りに敵の捜索を開始した。

 現在はおそらく妙だけが敵と戦っている状態なのだろう。その銃声を頼りに敵にたどり着く事も可能だと思えるほどに銃声が鳴り響いている。

 銃声のする方に向かっていると案の定呪われた妖狐たちが妙を探していた。


 撃たれる可能性しかないのになぜ堂々と探しているのか疑問に思っていたが、その理由はすぐに判明した。

 妙に撃たれたと思われる敵の傷がすぐにふさがり、何ともなかったかのように捜索を再開し始めたからだ。

 どうやら今回呪われている連中の特徴は、回復らしい。


 妙の唯一の弱点と言えば、おそらくこの回復してくる相手だろう。

 本来回復魔法の類は非常に難易度が高く、ただ傷をふさぐだけでは殺菌、滅菌が出来ていないのでその状態で傷だけをふさぐと後から腐ったり化膿してしまう。

 なので本来であれば回復系魔法は非常に難しい。

 だがあいつらの場合少し違う。

 常にオーラで身を包む事で打ち抜かれても傷口から菌が侵入しないようにしてるようだ。

 ついでに脳天や心臓を撃ち抜いても止まらない点を見る限り場所は関係ないらしい。


 確かにこれ妙にとって相性最悪だな。

 それにどれくらいの傷で回復できなくなるのかも分からない。

 となると攻撃方法はあれだな。


「リル。かく乱」


 そう指示を送るとリルは敵の足元を走ってかく乱し始めた。

 だが敵はリルに攻撃する事よりも妙の居場所を見つける方を優先しているのかリルを攻撃しようとしない。

 だが注目を集めてくれればそれでいい。


 俺は気配を消しながら一瞬で相手の後ろを取り、触れた。


「がっか!?」


 瞬間敵は俺に精気を吸い取られ一瞬でミイラのように骨と皮だけになる。


「貴様!!」


 手を向けるときにはもう遅い。

 それよりも俺の手の方が早く触れて相手の精気を無理矢理ひっぺかえす。

 これにより敵は一気に精気を失った事で肉体がミイラのようになり、そのショックで気絶する。

 他の連中も俺の危険性に気が付いたからか、標的を妙から俺に変えて走りながら錫杖を振りかざす。

 防御するわけでもなくただ突っ込んでいく俺に対して笑みを浮かべる敵だが、問題なく信用できる。

 走っていた敵は足を撃ち抜かれてタタラを踏む。いくらすぐ回復すると言っても数秒の時間は必要だし、その衝撃を無かったことにするような物でもない。

 前かがみになりながらバランスを崩した敵に俺は余裕で触れ、生気を搾り取った。


「ごちそうさん」


 妖狐たちは呪いごと生気を失った事で人型を維持する事すらできず、狐の姿になってしまった。

 このまま殺してもいいが……それの判断は向こうに任せるか。


「で、こいつらどうする?」


 後ろに向かって声をかけると妙が姿を現した。

 おそらく妖術で姿を消していたか、普通に隠れ潜んでいたんだろう。

 あっさりと姿を現した妙は倒れる狐たちを妖術で縛り上げて強く冷たく言う。


「次は脳天ぶち抜く」


 ただ冷たく言い放った言葉に瀕死の狐たちは震えながら縮こまる。


「殺さないんだ」

「そんな簡単に殺しても後始末が面倒だもの。それよりなに、あの動き」

「あの動きって……特に変な動きはしてなかったと思うが?」

「あんた私が足を撃ち抜くと思って突っ込んで行ったでしょ。何勝手に人を作戦に組み込んでる訳」


 俺に銃を向けながら冷たく言い放つ妙にリルがおろおろし始める。

 だが俺は余裕をもって、それが当然だと言い放つ。


「お前は徹底した効率派だろ。敵を効率よく倒すためなら嫌いな相手だろうとも援護もするし、助けもする。渉との大きな違いはそこだろうな。あいつは嫌いな相手だと手を組む事すらしないから」

「………………やっぱり気持ち悪い。その代わり契約よ」


 そう言って小指を出した。

 もしかしてこれ……


「今回の事を協力してあげる代わりにあなたが知っている情報すべて教えなさい。それが信用を得るための最低条件。間違った事は言ってないはずだけど」


 やっぱり。『指切り』か。

 指切り、正確に言うと『指切りげんまん』。

 妖怪同士で使うありふれた呪いの契約だがその効果は非常に安定している。

 どのような呪いなのかと言うと、契約違反をした場合指が一本斬り落とされる呪いだ。もちろんただ斬り落とされるだけではなく二度と失った指を生やすことは出来ないし、落ちた指を拾ってくっつける事も出来ない。

 もちろん互いの意思の確認の上呪いを解除することは出来るが、そうでない一方的な契約の破棄の場合でも破棄した側が指を失う。

 単純だが呪いが継続しているかどうか視認する事が出来るし、裏切ったかどうか確かめる事も出来る便利な呪いだ。


 それにしても、相変わらず正論が好きだな。

 悪くはないんだろうが……堅苦しい。


 俺は両手を上げて降参のポーズをしながら契約を拒否した。


「残念だが全部教えることは出来ないし、証明も出来ない。だから契約しない」

「そう。それならあなたはこれから先も私に信用できない相手として認識されるし、今後私がいつあなたを撃ち抜くか分からない恐怖におびえる毎日を送る事になるけど、それでいいのね」

「それは確かに怖いな。でも話せない」

「……大抵の奴はこの時点で折れるのに、一体どんな秘密を隠し持っているんだか」


 妙は指切りを止めて仕方なく銃を下した。

 それを見てリルはほっとするが妙は俺の目の前に指を突き付けて念押しする。


「それじゃあなたが話せる範囲で教えなさい。何であなたはそんなに私達の事を知ってるの」

「……戦いながらでもいいか?ずいぶんな数のお客さんが来てる」


 なんてぺちゃくちゃしている間にずいぶん集まってきた。

 背中合わせで資格を作らないようにする俺達を取り囲むように集まった敵さんの数は……ざっと100か?


『敵戦力を確認。結界内に存在する敵の数は総勢240名。その内倒された数は56名。現在マスターたちを取り囲んでいる数は144名です』

「戦力分析ありがとさん」


 ツーが正確な情報を教えてくれた。

 さて、144人相手にするとかマジで大変。前世の頃なら大丈夫だっただろうが、今の俺じゃ確実に死ぬ。

 サポートしてもらわないと生き残る事すら難しい。


「前衛として前に出るからフォローよろしく」

「は?あんた一番弱いんだからあんたがフォローよ」

『危ないからサポートに行って欲しいな』

「何言ってんだよ。お前ら女なんだから後衛。傷だらけになっても問題ない男が前に行かないでどうする?」

「うわっキッモ。それ一体いつの時代の話?そんなの関係なく強い奴が前衛に出るもんでしょ」

「だってお前の武器銃じゃん。安全地帯から撃ってフォローしろよ。マシンガンタイプに変形させれば足止めくらい出来るだろ」

「はぁ!?銃だからって前衛出来ないと思ってるわけ!!あったまキタ。意地でも前衛で相手ハチの巣にする」

『えっと二人とも?私が一番前衛得意だから私が行こうと思ってたんだけど……』

「ダメよリルさん。この男に男女差別された~、傷付いたな~。こんな程度の弱い男に弱い奴判定されて気に入らないから私一人でやる」

「お前こそもう少し女の自覚しろ。それに差別じゃない、区別だ。女は子供を産めるという未来につながる役目を持ってるんだからもっと体を大事にしろ」

「セクハラー!!今度はセクハラよー!!やっぱあんたからハチの巣にしていい?」

「あ?そんな無駄な事したら余計に苦戦するぞ。元々超距離からねちねち攻めるがコミュ障が」

「はぁ!?私のどこがコミュ障だって言うのよ!!」

「身内以外から勘違いされまくって距離取られてる奴のどこがコミュ障じゃないって言うんだよ!!どうせ今でも正論パンチとどうでもいい奴とは話さない理論でろくに他人と話してないんだろ!!これをコミュ障って言わないでどうするんだよ!!」

「全然コミュ障じゃないわよ!!コミュ障って言うのはね――」


 なんて言い合っている間に敵から俺に向かって狐火が放たれた。

 即座に俺達は前に飛び出し、一発目の狐火は避けたが敵は次々狐火を放ってくる。


「それじゃやっぱりお互いにフォローするのは無しな!!敵を1人でも多く倒す、あるいは殺した方の勝ち!!」

「それだけは賛成!全員ハチの巣にしてぶっ殺す!!」

『何で2人とも喧嘩しちゃうの……』


 妙は俺の提案に乗り、リルは呆れながら残念そうにうつむく。

 そうなったら遠慮は一切なし。

 本気の殺しの時間だ。

 手加減して妙に勝てるわけがない。


「悪いなお前ら。俺のエゴのために死んでくれ」

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