表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/27

ドーベルわんこは揺れ動く

 進まない話、笑う少女。

 気がつけば少女と話している方がずっと楽しくなっていた。

「え?」

「婚約の話、水に流す。いい加減話が進まない」

 夏休みに入り、一日菜月がいるようになっていた。

「話が進まない?」

「あぁ。相手が覚えていて、なおかつ承諾した場合に限るって向こうには言われてる。だけど、一向に会えない」

「そんな……」

 表情が揺らめいていた。

「お前が気にする事じゃないんだ。ずっと想っていても相手から返事がない」

 そっちがかたついたら、付き合って欲しいという言葉は飲み込んだ。

「人生、色々ある。だから諦める」

「結構、話し聞いてるの楽しかったんですけどね」

 切なそうな顔で菜月が言う。

「お前は優しいんだな」

「え?」

「そんな顔、するな」

 頭に手を載せたが浮かない顔だった。

「おや、菜月大丈夫かな?」

「え?」

「ここから今日は索敵と支援してくれ。緋炎は陽光と一緒に」

「分かった」

 その言葉を受け、久し振りに陽光と駆逐に行く。

「何でだと思う?」

「知るか。おそらく俺と菜月が近づきすぎたからだろ」

 だから引き離したい。それだけだろう。

「何隠してるか分かんない子だからなぁ。思い切って自分で揺さぶりかけるつもりなのか?」

 その可能性もある。

「そういやさ、面白い話。あの子帰国子女か、国外にいい伝手ある」

「は?」

 駆逐しながら話していく。

「好も美恵ちゃんも驚いていた。あのポーチ、日本じゃ絶対置いてないやつなんだと」

 緋炎が血で汚してしまったポーチだ。確かに、同じものは見つけられなかった。

「しかもネットオークションで購入しようとすると、元値の百倍くらいするらしい」

「はぁ?」

 百倍という金額に驚く。

「だからレプリカや詐欺もあるらしいんだが、好は実際見ただろ?美恵ちゃんと二人で大盛り上がり。本物触ったって」

「魔術習っているせいか?」

「だと思うが、覚えきってない弟子に師匠は太っ腹じゃね?」

 大まかな場所は陽光がここで言っていく。そしてそこから詳しい場所が電話越しで入る。何とも奇妙だ。

「まぁ、国外でもなかなか手に入らない限定のものだ。だからこそ洗ってでも使おうと思った」

「そんな大事なもの、汚したのか」

 最初汚れていなかったが、血のついた手で触ってしまったがために汚れたのだ。

「お前ってホント、気がきかない。何で血のついた手で触るんだよ」

「悪かったな」

 口も動くが、身体も動く。このノリは楽しい。

「う~ん。こりゃ楽だね。支援メインでいいってのは」

「合わせないでやってるからな。お前は防御しないぞ」

「お前はって事は菜月ちゃんは守りながらやってたわけか」

「やっかましいわ!さっさと終わすぞ」

 ばつが悪くなり思わず怒鳴る。図星を指したと楽しそうに笑いながら言ってきた。

「ほいな」

 呪を唱え、互いに合わせもせずに倒していく。

「ホント、ここんとこ妖魔が多すぎだな」

 唐突に携帯が切れた。

「ちょっと……へ!?」

「どうした?」

「菜月ちゃん、帰っちゃったって」

「は?」

 思わず呪を練るのを忘れた。

「思いっきり聖さんが揺さぶりかけたんだろうなぁ……おそらく核心突いたとか?」

 襲ってくる妖魔をひらりとかわし陽光が言う。

「こういうことをやってる時にやりすぎだろ」

「だよなぁ……。だから俺が索敵とか?」

 作戦済みですか。嫌になってくる。

「さっさと終わすに限るな、こりゃ」

 陽光がのんびりと言う。

 チカラ任せ、それしかできない。それでもいいと思える。


 終わって帰るなり、陽光が口を開く。

「何言ったんっすか?菜月ちゃんに」

「別に、ちょっと確認を取っただけだ」

 それからしばらく菜月は来なくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ