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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第1章 じゅんびきかん
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ありえん(わらい)by ジン

遅筆で大変申し訳ない。

だが、リアルとの兼ね合いでこれが精一杯なのです!!

くぅ、文才があって逼塞の早い人がうらやましい!!


「ユウナ、お前の番だ」

「あう……」


 ジンはそう言ってメダルを差し出し、ユウナに闘技場に行くように促した。

 ユウナは青ざめた顔で台座を見、そしてジンの顔を見た。先程のルネの敗北の光景が頭に残っていて、強い恐怖を感じているのだ。


「あ、あの……どうしても行かないとダメですか?」

「この先俺の行く場所に最後までついて行くのならば、この程度でビビっているようじゃ話にならん。どうする? あきらめて帰るのもありだぜ?」


 怖がるユウナにジンは突き放すように言葉を投げかける。

 その無慈悲な言葉を聞いて、黙っていない者が約一名。


「ちょっと、ジン! いくらなんでもそんな言い方はないでしょ!? ユウナはアンタのことが心配でたまらないからついて行くって言ってんのよ!?」


 まくし立てる様にリサが吠える。しかし、ジンはそれを軽く受け流して反論する。


「じゃあ、俺に無理やりついて行ってユウナが魔物に殺されました、なんてなったらどうするつもりだ? そりゃユウナが俺のことを心配してくれているのはわかる。だが、俺からしてみりゃ好き好んで幼馴染を危険に巻きこみたくはないんだよ……だいたい、本音を言えばお前らだって連れていくつもりはなかったんだぜ? だからここに連れてきて、本当に連れて行って大丈夫なのかを見るつもりだったんだ。ユウナ、もし本気で俺についてくるつもりなら勝てとは言わん、覚悟を見せてみろ……これが、俺のできる最大限の譲歩だ」


 ジンはそういうと、台座にSSSランクのシングルメダルを置いた。そのハードルの高さは、ジンの幼馴染を傷つけたくない一心で設定したものであった。

 控室が闘技場に変わり、中へ続く門が開く。

 ユウナは息を飲んで藤色の着物の袖を握り、闘技場に向かおうとする。


「待ちな。ユウナの得物は俺が選んでやる……ユウナならこれが一番肌に合うだろ」


 ジンはユウナを引き留め、一振りの小太刀を手渡した。ユウナはそれを受け取ると、ゆっくりと引き抜いく。 

 その瞬間、その場にいたものは刀に吸い寄せられるような感覚を覚えた。

 その刀身は鏡のように磨かれていて白い光を放ち、芸術的な造形の刃紋は見る者を惹きつけた。鍔には舞い散る紅葉が象られている。

 それは、素人が見ても名刀だと分かるものであった。


「これは……」

「俺がムラクモに立ち寄ったときに譲り受けた業物で、『紅葉嵐』とあだ名される名刀だ。どう言う訳か知らんが持ち手を選ぶ刀で、俺には振ることは出来たが使いこなせん。ユウナなら使えるんじゃないかと思うんだが……」


 ユウナはそれを鞘にしまうと、大事そうに抱きかかえた。目をつむり、大きく息を吸って吐きだす。


「……覚悟は出来ました。ジン、私はこの刀に懸けてこれを乗り越えてみせます」


 ユウナが目を開くと、ジンは笑みを浮かべた。

 そこに先ほどまで怖がっていた少女の顔は無く、強い意志をたたえた鳶色の瞳があったからだ。


「ああ、頑張ってきな。俺は観客席で待ってるからな」


 ジンはそう言うと観客席に入って行った。

 ユウナはそれを見送ると、深呼吸をして左手で刀を握り締め、闘技場の真ん中に進んでいった。


「おいジン。ユウナちゃんにあんなもん渡して良かったのか? あの小太刀、結構な業物じゃないのか?」


 観客席では、ジンがユウナに対して刀を渡したことについてレオが問い詰めた。

 その問いに対して、ジンは澄まし顔で答えた。


「良いんだよ、あれで。どうせ持ってたって俺は使わねえし、ユウナだって包丁使って戦うよりかマシだろ? ユウナの戦い方見てると基本は小太刀を使った高速戦闘みたいだし、丁度いいと思ってな」

「……そんなこと言って、ホントはユウナに怪我して欲しくないだけなんじゃないの?」


 リサの一言にジンは無言で着席する。それを見て、リサは大きなため息をついた。


「はぁ……もっと素直になりなさいよジン。アンタがユウナのこと好きなのは分かってるんだからさ」

「うるへー! そんなんじゃねえ! 幼馴染を心配するのは当然だろうが!」

「ジン……男のツンデレは正直キモ……」

「打っ血KILL!」

「ひ、ひでぶーーーーー!」


 レオが一言つぶやいた瞬間辺りが光に包まれた。

 それが収まると後にはスケキヨ化したレオと、『天』の一文字を背負いジョジ○立ちするジンが残されていた。


「……ここは死んでも生き返るようなところなのですが……」

「そういうツッコミは野暮ってものさ。そんなことより、せっかく話が面白い方向に転がってるんだ。これに乗らない手はないだろう? ……という訳でジン、ユウナとの関係はどうなってるのかな?」


 一人冷静に言葉をこぼすルーチェ。それに対し、ルネはニヤニヤ笑いながらジンに詰め寄る。


「でえええい、おのれらユウナがこれから戦うんだからしっかり……」

「SSSクリアおよびクラスレコード更新おめでとうございます!」

「……何ですと?」


 話題を逸らそうとしたジンの耳にとんでもない情報が入ってきた。

 受付嬢のその声につられて闘技場を見ると、中では黄金に輝く巨大な雄牛が首を刎ねられて倒れていた。


「ば、ばかな……幻想とは言え、あの罰の雄牛が人間如きに瞬殺されただと……?」


 それを見たアーリアルが信じられないと言った表情で声を漏らした。

 ジンもアーリアルのいう罰の雄牛、ゴッド・ブルがあっさり倒されたことに唖然としていた。


「は、はぁぁぁぁ……」


 その惨状を作り出した本人はと言えば、闘技場の真ん中で肩で息をしながら座り込んでいた。

 手には血のついた紅葉嵐が握られている。そのことからも、ユウナがその手で目の前の怪物を打ち倒したことが分かる。


「いったい何が起きたんだ?」


 ジンはベンチから立ち上がり、台座の横に置いてある青い石に手をかざした。

 すると、ジンの脳裏に先ほどのユウナの戦いが映し出された。




 闘技場に現れたユウナの前に、神々しい光を放つ巨大な神の雄牛が現れる。その姿は見るものに畏怖の念を感じさせ、自らの罪を悔い改めさせるものであった。

 雄牛は自分に牙を向く挑戦者を見据えると、罰を与えるべく金色の雷を纏いつつ稲妻のごとく走りだした。


「はっ!」 


 それに対し、ユウナは突っ込んでくる雄牛に対して真っ向から立ち向かい、連れ違いざまに抜刀した。

 両者は音もなくすれ違い、立ち止まる。

 次の瞬間、雄牛の頭は地面に落ち、少し遅れて体が倒れこんだ。




 そこで映像は終わっていた。

 時間にして、わずか十秒。

 ジンの常識では全く考えられない出来事だった。


「……一つ訊きたいんだけど、良いかい? あの雄牛って、どれくらいの強さなんだい?」

「曰く、城壁を豆腐を砕くように易々と突き破って暴れまわり、疾風迅雷の速さで動き回るうえに矢も剣も槍も効かず、傷一つつけられずに騎士一個大隊が全滅するレベル」

「ああもう、核爆発は起こすわ天の主神は呼ぶわ神の雄牛を瞬殺するわおまけにドラゴンで遊ぶわ、貴方達はいったい何なのですか!?」


 あまりにあっさり倒されてしまい、敵の強さがわからないルネの質問にジンが答えると、ルーチェがそのあまりの非常識さに大爆発した。

 どうやら彼女の理解を超える出来事が多すぎて、臨界点を超えたらしかった。


「俺はまだあいつらほど人間やめてないぞ!? ドラゴンを倒す奴なんざ俺のほかにも……」

「倒す人はいても貴方みたいに遊ぶ人が他にあるものですか! だいたいジンは魔法寄りの魔法剣士なのに、まったく魔法を使っていないのです! 少なくとも、絶対に本気は出していないのです! これを化け物と言わずして何と言うのですか!」

「人間だ!」

「シャラップ!」

「ごふっ!?」


 ジンの頭の上にルーチェは分厚い生物写本の角を打ちおろした。

 ジンは殴られた部分を抑えてうずくまっている。


「ぐおおお……見た目に反して何て腕r」

「ジン! やりました!」

「をわ!?」


 ジンが立ち上がろうとすると、ユウナが猛烈な勢いで突っ込んできた。

 体勢が崩れていたジンは受け止めきれず、押し倒される形になった。


「約束ですよ、これで連れて行ってくれますね!?」

「あ、ああ……流石にあんなの見せられちゃしょうがない。と言うか、貴女やっぱり主戦力として頑張ってください、俺は寝てますので」


 満面の笑みで抱きついて報告をするユウナ。それをジンは困ったような笑みを浮かべて聞き入れる。

 一緒についていけることにユウナはもちろんのこと、ジンもどことなく嬉しそうであった。

 その光景を、レオとリサがニヤニヤ笑いながら見ている。


「おい見ろよ、ユウナちゃんメッチャ嬉しそうだぜ。よっぽどジンと一緒に行けるのが嬉しいんだろうな」

「ジンもジンで抱きつかれて押し倒されても無抵抗だしね~。ところで、今回ユウナがあっさりSSSをクリアした要因は何だと思う?」

「何って、そりゃ一番の要因はあれに決まってんだろ」

「あら、やっぱりそう思うかしら? やっぱあれよ、あれ」


 そして、二人は笑みを一層深めて、


「二人の愛の力よね~♪」

「二人の愛の力だな~♪」


「聞こえてんぞテメェら!」

「でも、否定はしないっと」

「ルネぇぇぇぇ!」


 二人の会話を聞いたジンはそう言って吠えたが、ルネの追撃を受けてさらに咆哮を上げた。

 その後、しばらくの間ジンはいじられることになるのだった。


「愛……ジンの愛情……うふふ……」


 腕の中にしっかりと紅葉嵐を抱き、自分に甘えるユウナを受け入れながら。




「さて、これで全員の戦闘フォームのチェックが終わった訳だが」


 何とか場を静めてジンが話を切り出した。

 ちなみに、ユウナはベンチで紅葉嵐を抱いて蕩けた表情を浮かべている。


「全員もう一度戦闘をしてもらうぞ」

「オーケー、んじゃ俺からだな」


 ジンの一言を聞いてすぐにレオが得物のハルバードを担ぐ。

 しかし、レオが台座に向かおうとすると、


「レオ、使うメダルはSSSのゴールドメダルだ。間違えんなよ?」

「は?」

「今回使うのはフィールドだけだからな。ゴールドメダルを置くとフリーの闘技場が使える」

「まあ、良いけどよ……」


 レオが言われるままにメダルを置くと、再び豪奢な闘技場が目の前に現れた。

 ジンは銀の大剣を担いで中に入ると、中から全員に声をかけた。


「あ、今回は全員参加な。ちゃんと準備してから入れよ?」


 ジンの声に従い、全員準備をして中に入る。

 全員が入ったところでジンは門を閉じ、中央に集合させた。


「ちょっと、ジン? モンスターが出てこないけど、どんな戦闘をするつもり? これじゃ、せいぜい軽い訓練くらいしか出来ないわよ?」

「いや、出来るさ。ここは幻想空間、死んだって生き返るんだ。思いっきり暴れられるぞ?」


 ジンはそう言うと、全員を前に不敵に笑う。その表情を見て、全員息を飲んだ。

 ジンの纏う空気はガラリと変わり、重圧を感じる。


「これからお前ら全員で俺に掛ってもらう。俺を戦闘不能にできたらお前らの勝ち。逆にそっちが全員戦闘不能になったら俺の勝ちだ。ちなみに俺は本気で行く。気ぃ抜いたら首が飛ぶと思いな」

「は、はぁ? おいコラ、テメェ初心者相手に本気を出すとか大人気ねえんじゃねえの?」


 ジンの発言に、レオは思わず呆けた表情でそう答えた。世界的な英雄が、初心者である自分達に本気を出すと言うことが信じられないのだ。

 しかし、それに対してジンは首を横に振った。


「悪いが俺は一切手を抜かない。はっきり言っておく、俺はぶっちゃけお前らより優っているとは言えん。レオに力じゃ勝てんし、リサほど頑丈でもなく、剣の技量じゃユウナのほうが上だろう……だが、そうでなければ面白くない。ユウナ、俺はあの時強くなりたいって言ったよな?」

「え、ええ」

「俺は正直自分がどれほど強大な力を持っているか分かっていないお前らが怖い。それと同時に、俺はこんな身近な所に強敵がいることを嬉しく思っている……越えさせてもらうぜ? ルーチェも俺の本気を見たいようだし、相手にとって不足はない」


 ジンは心底楽しそうにそこまで話すと指を鳴らした。

 すると、地響きとともに闘技場の地面からたくさんの木が生えてきた。闘技場は、一瞬にして鬱蒼とした森に変化した。


「うおおお!? 何じゃこりゃあ!?」

「す、すごい……これがジンの本気なのですか!?」

「クッ、この程度で驚くなよ。俺は自分が戦いやすいフィールドを作っただけだぜ? そうだな、言ってみれば蜘蛛の巣みたいなもんだな」


 驚く面々に対してジンは攻撃的な笑みを浮かべてそう言う。そのジンを前に、全員武器をとり出し、相手を見据える。

 そんな面々を見て、ジンはその獰猛な笑みを深めた。


「……良い面構えしてるじゃねえか。だが、忘れるなよ? 今のここは俺のテリトリー、至る所に罠を仕掛けてある。俺の師匠『女郎蜘蛛』の受け売りで余程気をつけないと分からないくらいのな。見えない罠は……怖いぜ? それじゃ、俺の師匠の言葉から始めさせてもらおうか」


 ジンはそう言うと剣の柄に手をやり、ゆっくりと引きぬく。

 残る全員も、構えてジンの動きを警戒する。







「……俺の巣の中で、精一杯あがいてみせろ!!」 







 ジンはそう言うと、相手に向かって突っ込んで行った。




チートここに極まる。

と言うか、戦闘時間短すぎてやっぱユウナさん出番少ないよ!?

……おっかしいな~……一番主人公に近いポジションなんだけどなぁ?

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