ほんとはこれがふつー
「さて、次は誰が行く?」
「……僕が行こう。流石にこれ以上凄いものを見せられるとやる気がなくなる」
ジンの言葉に、ライトブラウンの髪に青と緑のオッドアイのホビットが立ち上がった。
それを見て、ジンは小さく笑みを浮かべた。
「Aランクで良いんだな?」
「それ以下はやらせてくれないくせによく言うよ。生憎僕はジンみたいに冒険に慣れてる訳じゃないし、レオやリサみたいな規格外でも無い。いきなりSSSとかやる気は無いね」
ルネは呆れ顔でそう言うとAランクのシングルメダルを取り、台座に向かった。
メダルを台座に置くと、ルネは武器を取らずに闘技場に降りて行った。
「武器、取らなかったな。ルネちゃん大丈夫なんかね?」
「さあな。ま、何か当てがあるから取らなかったんだろ。もし荒事の経験が無けりゃ、普通は武器で悩むはずだからな」
無手で降りて行ったルネに関してジンとレオが話していると、ルネの相手が出てきた。
相手は血に濡れたように真っ赤な虎だった。ブラッディタイガーと呼ばれるそれは北方の森に住む捕食者だ。
幼年期の鮮血の様な体色は毒を持つ事を知らせる警告色として働き、成獣の暗赤色の体毛は薄暗い森の中で保護色として働く。更に幼年期に身を守るために用いられていた毒は、成獣の爪や牙に回り獲物を仕留めることに使われるのだ。
なお、北方の狩人達の間ではこの成獣を一人で打ち倒す事が一流の証となっている。
「ねえ、ジン。Aランクってあれだけなの? 突破出来たら一流と言う割には少しお粗末な気がするんだけど?」
その対戦相手の強さがよく分かっていないリサが、少し拍子抜けしたような表情でジンに問いかける。
ジンはそれに対して大きなため息を吐いた。
「その認識は改めた方が良いぞ、リサ。油断してるとSランクの奴でもこいつにやられる事があるんだからな。正直、俺が見たAランクの敵じゃこいつが最悪だ」
「そんなに強いんですか?」
「見てれば分かる。こいつとの戦いを見て得られる教訓は多いから、しっかり見とけよ?」
ジンはそう言うと、ルネの方を見やった。
ルネはブラッディタイガーと相対し、睨みあいの状態になっていた。ルネは固く拳を握ったままジッと相手の動向を見ている。
一方、ブラッディタイガーはゆっくりとルネに迫ってきていた。目の前の獲物をじっと見据え、じりじりと低い大勢で距離を詰めてくる。
そして、両者の距離がある程度近づいた時、状況が動き出した。
「シッ!」
「ギャアアアアア!?」
ルネが小さく動いた瞬間、突如としてブラッディタイガーが悲痛な悲鳴を上げた。
左眼からは血が流れ落ちていて、その機能は失われてしまっていた。どうやら何らかの攻撃を仕掛けたようである。
「ガアアアアアア!」
その攻撃で一気にスイッチが入ったのか、ブラッディタイガーは一気にその凶暴性を発揮し、一直線に飛び掛ってきた。
巨大なヒグマほどもある巨体が、猫のように体を柔軟に使って四本の脚で地面を蹴り、獲物を捕らえるべく素早く走り出す。
それはまるで戦車が勢いよく自分をめがけて突っ込んでくるようなものであった。違いがあるとすれば、相手が生物で触れれば毒に殺されるといったくらいのものであろう。
「くっ……」
その攻撃を、ルネは横に大きくステップを踏んで回避する。赤黒い戦車の毒爪はルネの左肩の数センチ外側を通り、相手を仕留めそこなった。
そしてルネは着地直後の無防備な横っ腹に向かって握り拳の親指を弾いた。すると、青い弾丸の様なものが流星のように尾を引きながら飛びだし、ブラッディタイガーの腹を突き刺した。
「ギャウッ!?」
ブラッディタイガーは一瞬よろけたが、素早く体制を立て直してルネに襲いかかる。ある程度の衝撃を与えることは出来たようだが、効果的なダメージを与えられたわけではないようである。
「っ、効果が薄いっ……」
ルネはほとんどひるむ様子のない敵に歯噛みをしながら、襲い掛かってくるそれを右に避け、再び親指を弾いた。
次に狙ったのは後ろ足。相手が地面を蹴りだすために重要な、攻防の要とも言える部位である。青白い小さな弾丸が、彗星のようにその部分に突き刺さる。
「ガッ!」
ブラッディタイガーはバランスを崩し、砂煙を巻き上げながら地面を転がった。
それを見て、ジンはほう、と感嘆の声を上げた。
「ほう、操気弾とは面白いものを使うな」
「何ですか、それ?」
「自分の生命力を気功弾に変えて相手に打つ技だ。とは言うものの、本当はあんまり効率の良い方法じゃないんだけどな」
ジンの説明にユウナが首を傾げる。他の者も、この説明だけではよく分からないようである。
「どういう事ですか?」
「気功と言うものは生命力から生まれ、生体を通して伝えるのが一番効率が良く、無生物を透過して届き、相手の生命活動を乱す。だからほとんどの気功を使う技は素手で直接相手に叩きこむものだ。だが操気弾は離れた相手に気功を撃ち出す。これを主軸に戦ってると滅茶苦茶疲れるはずなんだが……」
ジンは気についての説明を簡潔に行う。
気功というものは生命力、つまり体力をそのまま力に変えて扱うものであり、大量の気を使うと肉体的な疲労が大きく溜まる。ゲームで例えるのであれば、スタミナやTPのようにMPの体力版を用いて攻撃を仕掛けるようなものである。
その特徴として、生物に大きな影響を与え、相手を外部からではなく内部から攻撃することが出来る。つまり、鎧の上から相手の内臓へ直接攻撃が出来るのである。
しかし、そのデメリットとして一回の攻撃に使うエネルギーが大きいため、連発をするとあっという間に疲れてしまうと言う最大の欠点がある。
更に操気弾は生物体ではない空気を通して伝えなければならないため、固めた気功が分散して弱くなってしまう。それは例えるならば、空気中ではあまり減光しない太陽光を海の中に通すようなものである。
それにより、直接相手に叩き込むよりも多くのエネルギーが必要となってしまうのだ。
それを聞いて、リサは首をかしげた。
「ねえ、それってわざわざ使うほど価値のあるものなの? 遠距離の攻撃が欲しいなら魔法や弓で十分なんじゃない?」
「あるんだよ、価値は。まず、武器が無くても使えるからとても身軽に動ける。二つめ、魔法じゃないから詠唱が要らず魔法の詠唱と同時に使える。三つめ、魔法が効かない相手にも十分通用する。四つめ、気功の性質によって相手がどんなに堅かろうと貫通してダメージを与える事が出来る。利点としちゃそんなところだ」
「へぇ、便利じゃない。アタシも覚えようかしら?」
「ちょい待ち。俺長い事宿で冒険者の客見てたがそんなん使う奴一人も居なかったぞ? そいつが本当に便利ならもっと使ってる奴がいてもおかしくねえだろ」
操気弾の利点を聞いて人差し指を唇にあてて考え事を始めるリサに対し、レオは自らの経験を話す。
それに対し、アーリアルが何か思い至ったような反応を示した。
「ふむ、と言う事は何か欠点がある、そう言う事であろう?」
「その通り。まず、気功を打ち出すのに桁外れの集中力がいることだ。拳で直接叩きこむにしてもある程度は必要なんだが、操気弾の場合は相手に届くまでの距離があってその間で拡散するから、十分な威力を持たせるために拳に込めるよりも遥かに集中力が必要になる。つまり、不測の事態に対応しづらい難点があるってことだ。次に、さっきも言った通り使うと凄く疲れる。これだけでまともに戦おうとすると、体力のない奴だと五分もすれば息も上がる。それから、気功の特性からゴーレムみたいなやつには効果が無い。岩の塊に生命力である気功を流したって、そもそも生命活動を行っていないんだから乱しようが無いからな」
「成程な。強力ではあるが実戦では使いづらいと言うところか」
アーリアルが納得したように頷く横で、今度はルーチェが静かに手を上げた。
「質問があるのです。今、気功はゴーレムの様な無機物には聞かないと言ってましたが、私は武道家が気を込めた拳で岩を砕くのを見た事があるのです。これはどういう事なのですか?」
「ああ、それは厳密には気を使っている訳じゃない。生命力を力として使うって話になるな。これは単純で生命力をある一か所に回すことで威力や強度を一時的に強化するってだけの話だな。こいつは生物だろうが無機物だろうが何にでも使えるし、俺が知ってる達人は指パッチンで空気を振動させて遠くの物を真っ二つに出来る。ちなみに、極大の威力は先程御覧になった通りだ」
「先程?」
ジンの言葉にルーチェは首を傾げる。
それに対しジンは、
「……レオが闘技場の床を爆砕した、あれだ」
と、どんよりとした雰囲気で語るのだった。
「おお、あれがそうなのか!? いや、少しばかり気合を入れて振ったんだが、そうか、あれか!」
「ああ、で、分けるのがめんどくさいんで、気功と生命力を使って作る力を合わせて『気』と呼んでいる訳だ……と言うかレオ、知らんで使っとったのか己は!」
レオの発言に思わずつっこむジン。食材の正体を知らずに料理をするようなものなので、当然の反応である。
その一方で、アーリアルは心底残念そうな表情をした。
「むぅ……闘技場の床を爆砕……レオ、今ここでやってみてくれぬか?」
「その前に一つ訊きたい事があるんだがよ、何でお前は未だにここに居るんだ?」
レオは自分の膝の上にちょこんと座っているアーリアルに尋ねた。
どうやらアーリアルはレオのことがお気に入りのようで、べったりとくっついている。
「何を言うか、私はまだリサに約束を果たしてもらってないのだぞ? レオと遊ぶまでは絶対に帰らんし、そもそも帰りたくない」
「はぁ……しゃあねえな……」
アーリアルはむすっとした表情でそう言うと体勢を入れ替え、レオにぎゅっと抱きついた。それに対して、レオは溜息を吐きながら為すがままになっている。
その光景は、知らない人間が見たら幼い少女が父親に甘えているようにしか見えない。
その様子を、他のメンバーはジッと見ていた。
「ねえ、ジン。あの二人見て、どう思う?」
「凄く……親子です……」
「と言うか、何で神様があんなに懐いてるのですか?」
「あの……ルネさんの訓練は見なくて良いんですか?」
ユウナの指摘に全員闘技場の方を向く。そこでは、ルネが先程と同じような戦い方で戦闘を続けていた。
相手の攻撃を避け続けながら操気弾を放ち、安全な位置から確実にダメージを与えていく。
「くっ……はぁ、はぁ……」
しかしその息は上がっていて、段々と余裕が無くなり始めていた。消耗の激しい操気弾を使い続けたせいで疲労が溜まり、段々と足が鈍ってくる。
ブラッディタイガーの攻撃は徐々にルネの体に迫ってきていた。
「おいおいおい、ルネちゃんあれじゃ不味いんじゃねえのか?」
「だな。操気弾は体を内部から攻撃する技だ。ブラッディタイガーは毒を持っているから接近戦が危険と言う事と、脂肪が分厚いぶん通常打撃では通りにくい事を考えると、気功を用いるこの方法は間違いじゃない。が、こいつみたいな生命力の塊では倒すのに時間がかかる。それに、ルネがどこで覚えたか知らないが、少しばかり気の拡散によるロスが大きい。あれじゃ倒しきる前にルネの体力が尽きる」
ルネの様子を冷静に観察するジン。その予測は、残酷な結果を指し示していた。
そうこうしている間に、疲労で頭が回らなくなってきたルネが、だんだんと壁際に追い詰められていく。
「ガウッ、ガアアアアアアアア!」
「なっ……!」
ブラッディタイガーは一度壁に向かって跳躍することでタイミングを外し、回避行動を取った直後のルネに向かって跳びかかった。
ルネは何とか回避しようとするが、避けきれずにその右脚を爪が掠める。傷口からは血が流れ出し、白いソックスを赤く染め上げた。
「くあっ……このっ!」
「グガァ!?」
ルネはすぐ横に着地したブラッディタイガーに掌打を掛けた。生命力を力に変えた強力な一撃によって、ブラッディタイガーは壁に叩きつけられて崩れ落ちた。
が、頑丈な骨と分厚い脂肪によって守られている狩人にとっては大した痛手にならなかったようで、すぐに立ち上がって攻撃を仕掛ける。
「うっ……くはっ……」
右足の傷の痛みと即効性の高い毒による強烈な目眩と吐き気に耐えながら、ルネはそれを避ける。
しかし十分な距離が得られず、今度は左脇腹に爪がかかる。白いシャツごと脇腹を切り裂かれ、焼けつくような激痛がルネに襲いかかった。
「ぐああああっ!!」
痛みと衝撃でルネは地面に転がる。激しい出血と猛毒の左様で朦朧とする意識の中、左手で脇腹を押さえ、血反吐を吐きながら立ち上がろうとする。
しかし体を起こす右腕の力は弱く、震えて立ち上がることが出来ない。
ブラッディタイガーは容赦なくそこに襲いかかった。
「ギャウウウ!」
「うあっ!? がっ……」
「う……あ……?」
「お、お目覚めの様だな。気分はどうだ?」
ルネが眼を覚ますと、そこは闘技場ではなく元の控室だった。
起き上がってみるとベンチの上に寝かされていたようであり、隣ではジンが瓶入りの飲み物を飲んでいた。
「そっか……僕は負けたんだな」
先ほど喉を食い破られて負けたルネは、自分の喉元をさすりながらそう声を零した。
体調や外傷をチェックするが、異常は見当たらない。訓練場の効果で、怪我や死亡した事実がなかったことになっているようである。
「まあ結果的にはそうなるな。正直、あんまり上手い戦い方じゃ無かったのは事実だ」
ジンはルネの呟きに関して、自分の思った事を素直に述べる。
ルネはそれに対して苦笑いを浮かべた。
「ははは……それじゃ、僕は戦力外って訳だ。どうする? これじゃお役に立てない訳だけど……」
「いや、契約は解除しないぞ。見た限りでは体の動かし方は悪くないし、最初の一手で眼を潰して死角を作ると言う方法も使える。それに操気弾が使えるならすぐに他の気も使いこなせるようになるし、少し鍛えれば十分俺の行く先でも耐えられるはずだ」
落ち込むルネにジンはすかさずフォローを入れた。
すると、ルネはパチクリと眼を瞬かせた。てっきり、クリアできなければ契約を解除されるものだと思っていたからである。
「え? でも、僕はAランクをクリアできなかった訳なんだけど……」
「誰がすぐ出発するなんて言ったよ? 引く手数多のAランク相当の盗賊や学者がそうゴロゴロ転がっている訳無いだろうが。だから最初っから有望そうな奴を引っこ抜いて、実戦に耐えられるように鍛えてから出発するつもりだったんだ」
ジンの言葉をルネは呆然としたまま聞き入れる。そして、ホッとしたようにふっと息を吐いた。
「そうか……じゃあ解約は無しか」
「当然。今の戦闘やスリのスキルを鑑みてもお前は優良物件だからな。育ってくれりゃ俺としても願ったり叶ったりだ」
ジンがそう言うと、ルネは嬉しそうに笑った。自分に見込みがあると言うのが余程嬉しいらしい。
「修羅にそこまで褒められるとは光栄だね。それじゃ、早速教えを請うとしよう。今の戦闘、どこが不味かったと思う?」
「そうだな……まず一番最初に武器を何も取らなかったのが不味かった。武器ってのは何も攻撃するだけじゃなくて防御にも使える。特に今回みたいな毒持ちの相手には最低限の防御の手段が必要だった」
ジンは先程のルネの戦いを思い出しながら改善すべき点を上げていく。
ルネは背筋を伸ばし、ジンの眼を真っ正面から見て話を聞く。
「ふむ……動きの邪魔になると思って取らなかったんだけど、ダメだったか……他には?」
「二つ目は操気弾にこだわりすぎた事。相手と離れて戦いたいのは分かるが、折角眼を潰して死角を作ったんだ。こういう時は接近して一発叩き込んで吹っ飛ばした方が距離も取れるし、操気弾に頼るよりも効率が良い。さっきの一撃喰らった時の掌打みたいな感じだな。まあ、この辺りは経験がものを言う部分だし、おいおい覚えていけば良い」
「成程、ああ言う風にすれば良かったのか。次は?」
「三つ目は操気弾の気の圧縮が弱い事。要練習だな」
「少しは通用するかと思ったけどね。まだまだだったか」
「あとは訓練する間に見つけ次第教えるとしよう。今はとりあえず休みな」
「ああ、そうさせてもらうよ……ところで、他の皆は何処に?」
ルネが周りを見回しても、ジン以外のメンバーが見当たらない。
荷物が置いてある所からすぐに帰ってくるものである事は分かるものの、全員で外に出る理由がルネには思いつかなかった。
「あいつらか? ……まあ、少し良くないものを見ちまったからな。少しばかり外の空気を吸いに行った」
「……ああ、そう言う事か。流石に人が捕食されるところなんて見ればね……しかし、眼を塞いでやるとかしなかったのかい?」
ジンは苦笑しながら質問に答え、ルネは客観的にみた自分の敗北を想像して溜息を吐いた。
確かに、今まで平和に暮らしてきた人間がいきなり目の前で人が食い殺される場面に出くわしたりしたらトラウマ物であろう。
だからこそ、ルネは新しい疑問を口にした。
「しないさ。あいつらには血や怪我、それからある程度の死に慣れてもらわないと困る。下手すりゃ死者が出る様な所に行くんだ。誰かが死んだからと言って冷静さを欠くようじゃ全滅の危険がある。だから、ルネには悪いが最後まで眼を離すなとも言ったし、これから先そういう訓練もする」
「……皆、本当に初心者だったんだね……」
「ようやく信じたか」
何処となく信じられない、と言った表情で語るルネに、一つの事を成し遂げた顔でジンは答えを返した。
ふと、ジンは何か思いついたように人差し指を立て、ルネに向き合った。
「そうだ、そう言えば一体どこで操気弾なんて覚えたんだ? 独学にしたってなんたってそんなマイナーなものを?」
「ああ、それは情報の代金代わりに受け取った指南書に書いてあったから覚えたんだ。何も武器を持たずに済むし、騎士の鎧も関係ないから便利だと思ってさ。他にも色々書いてあって一通り練習はしたから、スラムなんかで襲われても対処出来るくらいにはなったよ」
ルネは情報屋という立場上、あまり合法とは言えないようなことをすることもある上、治安の悪いスラム街などにも出向くことがあるため、必然的に生き延びるためには身を守るための手段が必要になる。
つまり、元々荒事に関してはそれなりの心得はあるのだ。
「ほう、道理で体捌きが素人にしては上手すぎた訳だ。実戦で磨かれた能力だったのか。それに気の込め方があまり上手くなかったのはそれ以上の強さの師が居なかっただな」
ジンは納得したように頷くと、手にした飲み物を飲み干して立ち上がった。
「さてと、体術だの気の運用だのの特訓は明日からにして、今はさっさと他の奴らを呼び戻しますかね!」
「そうだね。時間は有限、早いに越したことは無いか」
二人はそう言ってうなずき合うと、部屋の外へ歩いて行くのだった。




