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拝啓、親父殿。幼馴染が怖いです。  作者: F1チェイサー
第2章 おうじょさまのいらい
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さからえないひと

くぅ……間に合わなかった……3日おき更新……

 国王の闘いが終わり、赤髪のシスターの金鎚によって立たされていた死の淵から意識を取り戻すと、ジンは国王から全員を談話室に集めるように言われた。

 ジンが連絡をメンバーにしてから談話室に向かうと、そこには仲間達と共に国王に姫と御付のメイド、そして宰相が揃っていた。

 談話室に全員そろうと、国王は全員の前に立ち、その隣にはエレンが何やら小箱を持って立った。


「陛下、本当に宜しいのですか?」

「うむ。今にして思えば、このようなくだらない物がなくば安心出来ぬとは、余も随分と老いたものだ。その老いへの決別にはちょうど良い」


 不安げな表情を浮かべるエレンにそう言うと、国王は小箱を開けて中身を取り出した。

 中身はジン達一行が国王に雇われたときにサインをした、あの魔法の書面であった。


「皆の衆、良く聞くが良い。このグレゴリオ・ライオット・モンドバン、これよりこの血の契約書を破棄する。これは諸君らへの信頼の証であり、我が人生の転機である! しかと見届けよ!!」


 国王はそう言うとおもむろに書面を掴み、黄金に輝く右の剛腕で契約書を握りつぶした。

 そのあまりの圧力によって握りつぶされた書面は発火点を超え、国王の右手が赤い炎を上げる。

 そして彼が手を開くと、粉々になった灰がはらはらと地面に落ちていった。

 その場にいた一同は、国王の取ったあまりの行為に唖然とする。

 そして全員がこう思った…………


 ――――怒らせたら命が危ない、と。


「……ふむ、これにて血の契約は破棄され、諸君は自由の身となった。これからも、より一層の働きぶりに期待する」


 凍りついている一同を気にすることなく国王はそう言うと、話を一旦終える。

 そして、ふぅ、と軽くため息をついた後、別の話を始めた。


「時にレオ殿…………貴殿のその状況はどう言うことかな?」

「そ、それは俺が知りたいっす……」


 国王は笑顔で銀髪の男にそう話しかけ、レオは蒼い顔をしてひきつった笑みを浮かべた。

 なお、レオの状況はというと、


「おい、貴様ぁ!! いい加減我と代われ!! いつまでそうしていると言うのだ!!」

「えー、あーたん肩車してもらえてるんだからいーじゃん。私は肩車なんてたぶん滅多にしてもらえないんだし、その分にーさまの膝の上は私が使っても良いと思うなー?」


 現在ソファーに座っているレオの肩にはアーリアルが陣取っており、膝にはエルフィーナが座っている。

 アーリアルはレオの膝に座っているエルフィーナが気に入らないらしく、抗議をしていた。


「良くないわぁ!! 大体そこも我の席なのだぞ!?」

「でもでもー、お食事の時はあーたんいっつも座ってるでしょー? 私はこーでもしないとにーさまの膝には座れないもん」


 レオの頭をしっかりと抱え込みながら怒鳴り散らす銀髪幼女に対し、栗毛のお姫様はレオの胸に頬ずりしながら抱きつき、反論する。

 アーリアルはレオをどうしても独占していたいようであり、一方のエルフィーナは何が何でもレオから離れたくないようであった。


「うぎぎぎ……」

「む~……」


 射殺さんばかりの眼つきで威嚇する金色の瞳と、くりくりとした琥珀色の眼で放たれる抗議の視線。

 その間には、間違いなく火花が散っていた。

 一見、見た目十代半ば~後半のエルフィーナが子供相手に大人気ない態度を見せているように見えるが、実際は御歳数千歳を迎える世界の主神が一介のお年頃の少女に対してダダをこねると言う更にとんでもない事態となっていた。


「……ふふっ♪」


 その光景を、後ろに付いているメイドは楽しそうに眺める。

 しかしその視線は決して穏やかなものではなく、ねっとりと絡みつく舐めるような視線であった。

 その瞳の奥では、如何にしてレオに気に入られようかと言うことを思案しており、更に逃げ場を立つ手段についても画策しているようであった。


「さて、レオ殿。貴殿とは一度じーーーーーーーーーーーーっくりと腹を割って話したいと思っていたのだが、どうだろうか?」


 その三人に囲まれたレオの肩に、国王はポンッと手を置いた。


「……ひっ!?」

「……きゃぁ!?」

「……っ!?」


 レオが肩を叩かれた瞬間、世界が凍りついた音が聞こえたほどのプレッシャーにアーリアルとエルフィーナが悲鳴を上げ、ソレイユの肩がびくりと震えて思わず身構える。

 三人が国王の方を見ると、国王はそれはそれは穏やかな笑顔を浮かべていた。

 ……ただし、眼は獲物を狩る獣王のそれであったが。


「…………は、はい?」


 レオはぞくりとした殺気に冷や汗をだらだらと掻きながら、上ずった声をあげた。

 国王からはまるで一万からなる大軍を一人で薙ぎ倒さんばかりの眼光と威圧感が放たれており、今にもそれを実行してしまいそうなまである。

 もちろん、そんなものを真正面から直接ぶつけられては堪ったものではない。幾らレオでも、怖いものは怖いのだ。


「なぁーに、そう時間は取らせんよ。ただ少し、話がしたいだけだ」


 恐るべき威圧感を放ちながら国王はそう言い、レオの肩を軽く叩くと、エルフィーナとアーリアルに眼をやった。


「フィーナ、アーリアル殿。余は少しレオ殿と男同士、一対一で話し合いがしたいのだ。少し席をはずしてくれぬか?」

「……ひっ……」

「……お、おとーさま?」


 激しい重圧を発する国王に危険な物を感じ、咄嗟にレオのことを自分の身体で隠そうと二人。

 二人はレオに必死でしがみついている。彼女達は怖いながらも、何とか彼を守ろうとしているのだ。

 それに対して、国王はにこりと笑みを浮かべて頭を下げた。


「この通り頭を下げても駄目かな?」


 非常に穏やかな声とは裏腹に、ドドドドドと大地が震えるような擬音が聞こえてきそうな雰囲気で頭を下げる国王。

 それを見て、速やかにソレイユが割って入りエルフィーナを抱き上げ、アーリアルをリサが素早く避難させる。

 そして、レオがフリーになったと見るや、国王はレオの肩を抱いて部屋の外へと歩き出した。

 レオは恐怖のあまり何も言えず、黙ってその隣を歩いていく。

 ……その様子は、看守がこれから処刑台に上る死刑囚を連行するような光景だった。


「さあ、レオ殿、こっちで話をしようではないか。お互いに言いたいこともあるであろう、思う存分話すが良い……」


 国王がそう言うと同時に、談話室のドアが閉まる。

 その音は、まるで地獄の門が閉まるかのように重たいものであった。


「レ、レオーーーーーー!!!」

「レオにーさまああああ!!」


 その様子を泣きそうな顔で見送る二人。

 二人は国王を引きとめようと後を追ってドアを開けるが、そこには誰もいなかった。

 それを見届けると、白いローブのハーフエルフが話をそらすべく口を開いた。


「それにしても、国王陛下があんなに武闘派だったなんて知らなかったのです……」

「全くだ……まさか一介の国王が俺をあそこまで追い詰めるほど強いなんて反則にも程があるだろ……」


 深緑の眼のエルフの呟きにジンが群青の髪の頭を軽く掻きながら答える。

 それを聞いた瞬間、ルネは青と緑の双眸を丸く見開いた。


「追い詰められたって……君は陛下と闘ったのか!?」

「ああ。はっきり言おう、ありゃ化け物だ。剣で斬りつけりゃ鋼鉄を殴ったみたいになるわ、俺の切り札一つを手刀で切り裂くとか何事だよ……まあ、勝ったけど」


 ジンの言葉を聞いて全員押し黙る。

 ジン本人は世間では修羅と呼ばれる英雄であり、冒険者でなくともその名前を知っているレベルの英雄なのである。

 そんな彼をまさか非戦闘員であるはずの国王が追い詰めるなど、思っても見なかったことであろう。

 しばらくして、リサが腕組みをしながら溜め息をついた。


「……ねえ、そんなお化け、暗殺出来る奴なんているの?」

「……いないだろうなぁ……て言うか、いたら怖い」


 深くため息をつきながらジンは返答した。

 再び無言。全員護衛の存在意義について考えているようだ。


「……話は変わるけど、フィーナも随分レオに懐いたものだね」


 悪い空気を払拭するかのようにルネが違う話題を切り出した。 

 ルネのその言葉に、エレンが頷く。


「本当にね。姫様がああまで気を許すことは陛下や私以外には無かったのだけれど?」


 エレンから紫色の瞳を向けられ、ジン達幼馴染ーずは苦笑いを浮かべて頬を掻く。

 どうやら、彼らには何やらその心当たりがあったようである。


「そりゃあねえ……」

「まあ、レオのことですし……」

「あいつ、昔っから子供には大人気だったからな……」


 レオは気前が良く兄貴肌であり、大体のことに寛容であるために子供たちからの人気は高かったのだ。

 そしてそれは貴族であろうと貧民であろうと変わらないため、色々な方面に知り合いを作ることにもなったのだった。

 ちなみに、レオは村の人間からは年下キラーとして名が通っており(本人知らず)、一方のジンは年上キラーまたはマダムキラーとして名を馳せていた(本人知らず)のは余談である。


「むむむ~ 私そこまで子供じゃないですよ~だ……」


 三人に言外に子供だと言われて、エルフィーナがリンゴの様な頬を膨らませる。

 エレンはそれに苦笑すると、次の話題を切り出した。


「そうだ、ジン、次の護衛に関してなのだけど、貴方には私に一人でついて欲しいのだけど、良いかしら?」

「ん? 別に構わんが……どうかしたのか?」

「貴方のことを他の貴族に知らせておきたいのよ」

「ああ、そう言うことか。了解した」


 エレンのその言葉を聞いてジンは言いたいことを理解した。

 つまり、エレンはジンの修羅としての名声を他の貴族に対するけん制に使いたいと言うことであった。

 なお、ジンはこうなることは百も承知であるし、そもそもがジンの提案した作戦であるので気にしていない。

 むしろそれを実際に行うエレンの方が表情が硬い。

 どうもジンをけん制ないし囮に使うのが気に食わない様子である。


「さてと……せっかく全員居ることだし、他に何か話すことがある人はいないかしら……?」


 エレンがそう言った瞬間、外から轟音が響く。

 全員が何の音か気になって、窓から外を見ようとすると、何かが外から飛んできた。

 その物体は、談話室の大きな窓ガラスを破って部屋に侵入し、壁にぶつかって大穴をあけた。


「は、はわわわ……な、何事なのですか!?」

「ってぇ……冗談抜きでつえぇな、オイ……」


 ルーチェが混乱していると、壁の穴から傷だらけのレオが現れた。

 どうやら国王の攻撃でここまで飛ばされてきたようであった。

 レオは壁から出てくるなり、大きく深呼吸をした。


「さてと……こいつはちっと本気でいかねえとな……」


 レオはそう言うと着ていたシャツとズボンを脱ぎ、インナーのみの状態になった。

 レオが服を投げ捨てると、ゴトッ、ズシンと言う音が聞こえてくる。


「いっくぜぇオラァ!!!」


 レオはそう言うとクラウチングスタートの状態から一気に加速し、窓から見える闘技場に向かってダッシュで飛び込んだ。

 なお、談話室の位置は城の七階であり、そこからは闘技場の中の様子が上から見渡せる。


「……ねーねー、さっきレオにーさまの服から……」

「……皆まで言うな、フィーナ……」


 エルフィーナがレオの服から明らかにおかしい音が聞こえてきたのを指摘するが、ジンはそれを制した。


「ぐぬぬぬぬ……な、何だこの重さは!?」


 その横で、アーリアルがレオの服を何とかまとめようとするが、あまりの服の重さに驚愕していた。

 なお、レオの服は二重構造になっており、中には鉛の重りが入っているのだった。


「お手伝いしますよ、アーリアル様♪」

「帰れっ!!」


 服をまとめるのに苦戦するアーリアルに、嬉々とした表情と声色でソレイユがやってきた。

 その彼女を、その心中にある下心を知っているアーリアルは拒絶するのであった。


「ぬおおおおおおおおお!?」


 レオの服に気をとられていると、再び窓ガラスが割れる音がした。

 窓から入ってきた物体は天井にぶち当たり、更に床に落ちてバウンドして先ほどレオが開けた穴に飛び込んだ。


「くくく……レオ殿もなかなかにやりおる……これは本気で行かねば失礼にあたる!!!」


 国王は獰猛な笑みを浮かべながら壁から出てきてそう言うと、マントと上着を脱ぎ捨てる。

 ジャラリ、ドスンと言う重厚な音と共に服が床に落ちる。


「さて、行くぞ!!!」


 国王はそう言うとクラウチングスタートの状態から一気に加速し、窓から見える闘技場に向かってダッシュで飛び込んだ。

 何度も言うが、ここは城の七階である。高さにして二十メートルくらいはあるはずなのだ。


「……ねーねー、さっきおとーさまの服から……」

「……皆まで言う必要はありません、姫様……」


 エルフィーナが国王の服から明らかにおかしい音が聞こえてきたのを指摘するが、エレンはそれを制した。 


「こ、国王陛下の服、幾らなんでも重すぎませんか?」


 その横で、ユウナが国王の服を何とかまとめようとするが、あまりの服の重さに驚愕していた。

 国王のマントは鉛の鎖が編み込んであり、上着にはやはり鉛の重りが仕込んであるのだった。

 ……なお、本来行動するべきメイドは、未だに幼女な神様と服の取り合いをしている。


「いったいどうなってんだ?」


 ジンが窓から闘技場を覗き込むと、そこはとんでもないことになっていた。


「でやああああああああ!!!」

「轟おおおおおおおおお!!!」


 レオの紅の拳と国王の黄金の拳がぶつかり合うと、それにより生まれる衝撃波で床に亀裂が走る。


「うぉわあああああああああああああああああああああ!?」

「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 ついでに観戦していた兵士も衝撃で薙ぎ倒される。


「破あああああああああ!!!!」

「うおおおお!?」


 国王が拳を天につきあげると、拳圧によって巨大な竜巻が発生し、辺りを巻き込む。


「あぁあああぁああああああぁあああああああああああ!!!!」

「ぐおおおおおおぉおおおおおおおおぉおおおぉおおお!?!?」


 ついでに観戦していた兵士も宙を舞う。


「うおりゃああああああ!!!!」

「ぬうううう!?」


 レオが空中から地上に拳を叩きつけると、込められた気によって床が大爆発を引き起こし、周囲を吹き飛ばす。


「うぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!」

「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ついでに観戦していた兵士も吹き飛ぶ。


「ぜやあああああああ!!!!!」

「でえええええええい!!!!!」


 お互いの拳から発せられた気が中央でぶつかり合い、その奔流が闘技場内を暴れまわり、場内を破壊する。


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!」

「わあああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ついでに観戦していた兵士も空を飛ぶ。

 観客席では逃げ惑う観客が恐慌を起こしており、出口に殺到する人々が折り重なって怪我人が続出している。

 そこにお構い無しに二人の怪物の攻撃が飛んできては、まるで打ち上げ花火のように人の塊が打ち上げられているのだ。


 ……要するに、闘技場では阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた。


「見ろ、人がゴミの様だ!!」

「ジ、ジン? 貴方どうかしたの!?」

「い、いや、あまりに大人数が吹き飛んでいるもんだからつい……」


 突如狂ったように叫び出したジンにエレンが驚いてそう問いかけ、ジンはそれに対してハッと正気を取り戻して弁明をした。 

 自分の仲間と国王の周囲を巻き込んでの大喧嘩に、もはやどうすればいいのか分からなくなっていたのであった。


「ああ、レオ様……あの国王陛下を相手にここまで……素敵……」


 良い感じに意識がかっ飛んでいるメイドは全員無視することにした。

 しばらくして闘技場から轟音が聞こえなくなり、打って変わって不気味なほどの静寂があたりを支配する。


「……終わったのでしょうか?」


 突然の静寂に耐えられず、ルーチェが周囲にそう声を掛ける。

 それと共に、廊下から誰かが歩いて来る気配が。


「はっはっは!! 貴殿もなかなかの猛者よのう!!」

「何言ってんだ、陛下もあんなつええとは思わなかったぜ!!」

「ふむ……どうかね、いっそ二人で世界中の闘技場を制覇してやろうではないか!」

「良いねえ、行けるんなら行こうぜ!!」


 談話室のドアが開くと、傷だらけのレオと国王が入ってきた。

 互いの拳で思う存分に語り合った二人は豪快に笑いながら肩を組み、随分と打ち解けた様子であった。


「はぁ~い、お二人さん♪ 喧嘩は楽しかったかしらぁ♪」


 そんな二人の前に、羅刹鬼が立ちふさがった。

 羅刹鬼は人を殺す笑みを浮かべていて、その両手には『強制学習マシーン・天罰2号』と書かれた大金鎚と、『臣下の叱責・こんぺいとう1号』と書かれた黄金のいがぐりハンマーの二本がそれぞれ握られていた。

 二人はその様子を見て、自分が地獄の四丁目にやってきてしまったことを悟り一気に表情が固まった。


「さぁて、レオ? アンタこの前私がなんて言ったか覚えてる?」

「え、え~、あー、その、何だぁ?」


 笑顔のリサに質問をされ、レオは眼を宙に泳がす。

 レオが答えあぐねている間に、瑠璃色の視線は国王へ。


「陛下も、怪我をした兵士の面倒を見る人間がどれだけ大変か、分からない訳じゃありませんよね♪ ここ最近の救急班の過労と診断された人の人数、ご存知ですよね♪」

「ぬ……た、確かにそれは……」


 国王は冷や汗をかきながら、小さな声で返答しながら後ずさる。

 それを見て、リサは浮かべた笑みを深くした。

 羅刹鬼の笑顔は周囲の気温を絶対零度にまで落としながら、彼女の内がマグマのように煮えたぎっていることを示していた。


「で、以上のことを踏まえて、何か弁明はあるかしら♪」

「リ、リサ、これはいわゆる不可抗力という奴でだな……」

「と、時にはこういうこともあり得るだろう?」


 しどろもどろになりながら答える二人に対して、リサは最高の笑みを浮かべた。

 それは、眠っていた火山を爆発させる合図であった。


「はい、執行♪」

「「ぐおおおおおおおおおお!?」」


 そして、一切の予備動作を見せずに一息で二人の頭に大金鎚を振り下ろした。

 それを受けた二人は、轟音と共に大理石の床を突き破って金鎚ごと下の階に落ちていった。


「全く、あの怪我人の面倒をみるのも楽じゃないってのに、どいつもこいつもホイホイ量産しおってからに!! どうなってるのよ!?」


 怒り心頭と言った表情で、リサは目の前に空いた大穴を睨みつけた。

 国王陛下であろうと全く容赦しないその様子から、彼女がよっぽど頭に来ているであろうことが感じられた。


「エレン様! あとは任せました!」

「あ、ちょっとソレイユ!? 貴女、姫様の護衛じゃなかったの!?」


 その直後、一切の躊躇もなく王女の御付であるはずのメイドがスタイリッシュ命令違反をする。

 エレンは止めようとするが、茶髪のメイドは既に目の前の大穴に飛び込んだ後だった。


「な、なあリサ? お前国王陛下に……」

「あら、暴走する当主を諌めるのも臣下の仕事でしょ? アタシはそれを実行しただけよ。それともなあに? アンタもまた殴ってほしいのかしら?」

「……滅相もございません」


 突然目の前で行われた常識はずれの暴挙に引きつった表情のジンに、リサはさらりと笑顔でそう言って答えた。

 そして完全沈黙したジンを見て、その場にいた全員が思った。


 ――――――真に逆らってはいけないのは、リサである。と。



 妖怪大戦争勃発。

 真の最強は死刑執行人でした。

 なんかハンマーの一撃が様式美になってきた気がする。

 ……と言うか、ホントに国王はどーしてこうなった……


 それでは、ご意見ご感想お待ちしております。

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