きがつけばじんがい?
今回はかーなーり短め。
メモ帳10kb位にしようと思ってら倍以上になりそうなので……
特訓を開始してから一ヶ月が経過した。
ジンによる超スパルタ特訓と、各々の血のにじむような努力の結果、ルーチェもルネもAAAランクを確実にクリアするまでに成長した。
ユウナ達は主にジンから冒険者としての心構えを学びながら自らの技を磨いた。
そして、今日はその特訓の最終日であった。
「っと、まあこんなもんかね。案外惜しいとこまでは言ってたぜお前ら」
現在、闘技場の真ん中にはジンが立っていて、その周りは焦土と化していた。ジンが実戦訓練と称して、全員を相手取って模擬戦を行ったのだ。
今回、ジンは魔法も気も全て活用すると同時に、経験に基づく冷静な判断で相手を叩きのめしたのだった。
ただし、ジンの剣にはレオの攻撃による強い衝撃によってひびが入り、左腕はユウナの攻撃がかすめていて血を流していた。
戦闘が終了し、闘技場から控室に移り変わる。控室は死屍累々というありさまだった。
「……ははは、こりゃ参ったね。また手も足も出なかったよ」
小さい体をぐでっと横たえたままルネはそう呟いた。
訓練所での勝負だったため外傷は無いが、かなりの疲労感を覚えていた。
「そりゃ踏んだ場数が違うからな。伊達や酔狂で修羅とは言われてないさ。幾らSSS三人にAAA二人いるとは言え冒険初心者が高々一か月特訓したくらいの奴に負けてたまるかっての。……けど、ルネを倒すのにあんなに手間取るとは思わなかったぜ。回避と相手の死角に入ることならユウナより上手いと思うぜ? 後は攻撃力と持久力の問題だな」
ジンは肩に担いだ剣をしまうと、飲み物の入った小瓶を口にしながらそう言った。
ちなみにこうして聞くとユウナとルネの間に差が無いように聞こえるが、ユウナはそもそも並どころかSSSクラスの相手にすら攻撃をさせない上、ジンやレオクラスでもそのまま斬りかかったりすると武器が細切れになったりするのでやはり人外認定されるのであった。
「剣だけなら負けないんですけどね……」
「わざわざ相手の得意分野で戦う必要はないからな。戦いの鉄則は『相手に優っている部分で戦うべし、無ければ逃げろ』だ。ある一点をひたすらに極めたAクラス冒険者だって、自分が苦手な分野を持ちだされるとそこらのCクラス冒険者にだって負けることがある。だから、Sクラス以上になるとある一点を極めたやつよりも、そこそこ鍛えた一点と欠点を補う何かを揃えた奴の方が圧倒的に多いんだ。そういう意味では、ユウナやリサは異常とも言えるな。何しろ、それぞれ剣術や神術のみでSSSにのし上がっているわけだからな。ユウナの場合は広範囲魔法を使われるとどうしようもなくなるから、その辺りを工夫しないといけないけどな」
ユウナが体を起こしながら呟いたのに対し、ジンはそう答えた。
その横で、レオは暗い表情でため息をついた。どうやら五対一でジンに負け続けなのがよほど悔しいようだった。
「にしたって、魔法あるなしでこんなに違うのかよ……親父直伝の気合受けもあんまし役に立たねえし……」
「俺としてはレオは十分強敵なんだがな。まあ、鎧の加護にしろ気で受けるにしろ受けられる攻撃の上限はあるさ。加護は確かに魔法に対して有効だが、絶対じゃない。一点集中で攻撃されると意外と脆かったりするものさ。そこらの鎧の加護を突き破るくらいの芸当はルーチェにも出来る筈だぜ?」
「それでも、ジンみたいに相手と斬り合いながらその精度で制御するのはまだ難しいのです。それに私は三点のみですが、ジンは少なくとも八点を貫けるのですよ? そうでなくても、そもそも魔法の威力がジンとその他で違いすぎるのですよ。……一体何をしたらそんなことが出来るようになるのですか?」
深緑の双眸でじ~っと見つめてくるルーチェに対して、ジンは一言で答えた。
「練習だ」
「身も蓋もないわね」
「それと実践だ」
「……背中が煤けておるぞ」
「……ほっといてくれ……」
そう言うと、ジンはぶつぶつ何かを呟きながら部屋の隅で体育座りをした。
背中からは哀愁が漂いまくっていた。
「さて、そろそろ戦闘訓練の期間は終わりにしようじゃないか。これが最後の特訓……というか確認だな。今からお前たちには挑戦者がつく。そいつらを倒して自分が今、冒険者としてどれくらいかという自覚を持ってもらおうか」
しばらくして、ジンは立ち直るなりいきなりそんなことを言いだした。
突然の発言に、全員目を白黒させてジンを見る。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? 挑戦者ってどういうことよ!?」
「お前らが訓練している間に少しばかりそこらの連中に声をかけたんだよ。皆興味津々だったぞ、たった一か月でAAAにまでのし上がったお前たちにな」
ジンはそう言うとルネとルーチェを見た。
それに対し、ルネはライトブラウンの髪を弄りながら怪訝な顔をした。
「……ちょっと待ってくれないかい? その言い方だと、メインは僕とルーチェということになるんだけれど?」
「そ、俺はあえてそうなるように呼び込んだ」
「な、なんでそんなことになるのですか!? それをするならむしろいきなりSSSになった三人にするべきではないのですか!?」
あっさりと言い放つジンに対して、ルーチェが長い耳を吊り上げて抗議した。
ユウナ達の方が明らかに異常なのに、自分達の方に興味が行くようにしたことが納得いかないのだ。
しかし、ジンはそれを全く意に介さず答えた。
「ああ、そっちに関しては心配ない。あいつらは自分の異常性に薄々気が付いているはずだからな」
「どうしてそう言い切れるんだい?」
「何故って……あいつら、限定条件下では俺に勝ったんだぞ? これでも他称『英雄』で『修羅』で『世界最強の魔法剣士』、それに勝ったとなれば自分がかなりの強者であると気付くはずだろ? それに比べて、お前たちはユウナにレオにリサ、そして俺の後塵を拝してきた。だが、奴らの陰には隠れているがお前らだって十分に、いや十分すぎるほどに強い。だから、お前らには他の冒険者と戦って、自分がどれほどの力を持っているかを自覚してもらう」
「自分の力?」
「そうだな、一つ例をあげよう。今から騎士団がお前たちを捕まえに来ようとする。さて、自分を捕まえるのにCランク相当の人間が何人必要だと思う?」
ジンの問いかけに二人は考え込む。
そしてしばらく経ってから自信なさげに答えた。
「……三十人、くらいかな?」
「私も、三十人くらいだと……」
「そら、その認識が甘い。俺の見立てじゃ、お前らを捕まえるのであれば少なくとも二百人は必要と見る」
その言葉に二人は絶句した。
予想していたよりもはるかに大きな数を言われ、呆然としている。
「い……幾らなんでもそれは無いだろう? 僕のどこにそんな力があるって言うんだ?」
少々呆然とした様子で、ルネはジンにそう問いかける。
それに対し、ジンは淡々とした態度で答える。
「お前は俺が出した課題を見事にクリアして見せた。つまり、お前はいつでもどんな体制でも強化指弾はおろか操気弾や無手で木を砕き、しかも極めて高い精度で打ち出せる。……それを人間に向けたらどうなるか? 大木が文字通り木っ端微塵になる一撃だ、人間が耐えられるわけがない。それに身体能力も大幅に強化されているし、回避能力は恐らく俺と同等以上になっているはずだ。……ルネ、お前が本気を出せばCランク二百人ごとき楽勝で屠れるんだぜ?」
「ううっ……」
「ルーチェ、お前だって俺が徹底的に魔法の速射と制御を叩きこんだ上に魔力量をかなり底上げした。あの闘技場を凍らすだけなら余裕で出来る筈だ。それに、あの“<ruby>水鉄砲<rt>アクアピストル</rt></ruby>”ですら殺傷能力を得られるということは……その制御を広範囲魔法で、高密度の魔力で、殺意を持って高速詠唱を行ったら……下手すれば一撃で二百人が倒れるだろうな」
「そ、そんな力が……」
自分の力の危険性を自覚して、二人の顔は一気に青ざめた。
自分達の腕の一振りで、数百人の人間が簡単に殺せてしまう。その事実は、二人が力に恐怖を覚えるには十分なものであった。
その二人に対し、ジンは少し強めの口調で話しかけた。
「力が怖いのは分かる、だが絶対に怖がるな。俺はその力が必要だと思ったからお前たちに持たせたんだ。力なんざただの道具だ、人を殺すのが怖けりゃ人に使わなきゃ良いし、殺そうと思えばそれもできる。だが、力を持たない奴は力を持つ奴に襲われたらひとたまりもないんだ。それを理解してもらうためにも、お前達には自分の力の重さをしっかりと刻みつけてもらう。良いな」
ジンはそう言うと控室を出て、空き瓶を捨てに行った。
そして訓練所の中央のフロアの隅にある柱時計を確認すると、不敵に笑った。
「さてと、そろそろ時間か。……ふふふっ、少しは骨のある奴がいれば良いがな」
ジンはそう言うと、控室に足を運んだ。
新参者、気が付いたら化け物になっていたでござるの巻。
Sランク以上のお化けになる日も近い。
ちなみに、わかりにくいかもしれませんがランク的にはこんな感じです。
F 冒険者、騎士団志望の6歳児クラス
FF
FFF
E 冒険者、騎士団9歳児クラス
EE
EEE
D 修行をしていない一般市民クラス、修行中の少年クラス
DD
DDD
C 冒険者としてギリギリ合格(ダンジョン不可)、自警団クラス
CC
CCC 研修中の騎士クラス
B このあたりでパーティが組めれば地上は安心、新米騎士団隊員クラス
BB 経験を積んだ騎士団、傭兵クラス
BBB 騎士団のベテラン隊員クラス
A 一流冒険者の最下層、騎士団の小隊長クラス
AA
AAA 一流冒険者の中でも上級、少人数でほぼすべての魔物に対応可能
S 俺は人間をやめるぞ、ジョ○ョォォォォォ!!!! クラス
SS さあ 我が腕の中で息絶えるが良い!!! クラス
SSS 今のはメラ○ーマでは無い……メ ○ だ クラス
……幼馴染ーズが人間をやめすぎてる……
けど、これから出す予定の敵たちも結構酷かったり……
まったくもう、どうしてこうなった!!!




