表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/339

83話

少々トラブル発生?

 てくてくと宛もなく、適当にルースたちは都市内を歩いていた。


 あちこちの店を覗き見し、試してみたり、気に入ったらあとで購入してみようかと思ったり、占いの館とかいうふざけた店にも入ってみたりと、なにかと楽しんでいた。


「こういう適当な散策も面白いものだな」

「何かと人が行きかうし、それなりに移り変わってくんだろう」


 


 時間的にはそろそろ昼頃であり、小腹が空いてくる頃合いである。


 飲食店とかが立ち並ぶ通りに差し掛かると、同様にお腹が減っている人が多いようで、あちこちの飲食店では行列ができていた。



「こういう所で、たまには寮の食堂以外で昼食をとりたいけど・・・・多いなぁ」


 できれば行列に並びたくはない。


 けれども、余り並んでいない店とかは評判がよろしくないようで、味に期待できない。


 


 とはいえ、空腹は最高のスパイスというし、順番待ちで腹を空かせて損はないだろう。



 なので、ほどほどの行列で、評判もいい店を探そうとしたその時であった。



「きゃぁぁぁぁ!!」


 突然、人ごみの中で何やら悲鳴が上がった。


「お、お嬢さまぁぁぁぁあ!!」

「ひ、ひったくりよぉぉぉぉ!!」



 どうもひったくりが出たようで、なにやら身なりの良い人が襲われたらしい。


 声の方向を見てみれば、全速力で駆け抜ける冴えないおっさんが走っていた。


 その手には、見た目には合わないような物凄く高級そうなカバンを持っており、明らかにひったくり犯ですと自ら名乗っているようなものである。


「どけどけどけぇぇぇ!!」


 そう乱暴に言い、駆け抜ける冴えないおっさん。


 ルースたちのいる方向に走ってきており、意外にも結構早い。




「ちっ、こういう事って本当にあるんだな」

「放っては置けないだろ!『魔導書(グリモワール)顕現』!」


 舌打ちするルースの横で、スアーンが素早く彼の魔導書(グリモワール)を顕現させた。


 とっさの判断力というか、こういう面では見習うところがあるよな・・・・・影薄いけど。



「『アースウォール』!!」


 すばやく土の魔法をスアーンは発動させ、大きな土の壁をひったくりの眼前に素早く創り出した。


 あとはこのまま激突して終わりかと思ったが・・・・・・世の中、うまいこと行かないものである。


「効くかこんな土くれわぁぁ!!」


 そのままひったくりのおっさんはタックルをかけ、土壁を破壊してしまった。


 冴えないおっさんにはそれなりの重量があったようで、即席でとっさに作った程度の土の壁じゃ効果が薄かったようである。



「まぁ、動きが遅いけどな」


 タックルから体制を戻し、走り抜けて逃げようとしたおっさんの横に素早くルースは動いた。


 普段、学園長からの地獄の訓練を受けている分、こんなおっさん程度の動きは止まって見える。


 というか、ただの平民だったはずなのに、あの特訓のせいでこうも自分でも驚くほど動けてしまうのは複雑な気持ちである。



 何にせよ、このひったくりのおっさんを止めるために、素早くルースはローキックを放った。


 それも、全力でひったくりの右足の脛・・・・いわゆる弁慶の泣き所である。


 金的もありかもしれないが、あれで狙うにはちょっと小さい。


 でかい標的があったほうが当てやすいから、結果としては良いんだけどね。




メゴゥ!!

「ぎゃぁぁぁあ!?」


 ルースの全力のローキックを弁慶の泣き所に強打され、そのままひったくりのおっさんはゴロゴロと転がって止まった。


 足を抑えて悶えているが、おそらく骨にちょっとヒビが入ったかも。感触的に、贅肉を超えて人体から聞こえてはいけないような音が聞こえたからな・・・・




 何にせよ、自業自得という事で苦しむひったくりには誰も手を差し伸べない。


 そうこうしているうちに、ひったくり被害にあったらしい人と、衛兵たちが駆けつけてきた。



「ぜえぇ・・・・・はぁあ・・・・・・ぜぇえ・・・・・よ、よく、何とか、あの下劣な輩をと、捕らえてくれましたな」


 ひったくり被害に遭ったらしいのは・・・・齢80ちょっと前ぐらいの燕尾服を着た爺さん?


 しかも、息も絶え絶えで、今にもぽっくり逝きそうな・・・・大丈夫なのか?





 少し落ち着いてもらい、何とか息を整えてもらった。


「えっと、大丈夫ですか?」

「い、いや大丈夫だ・・・・。あのひったくりに、私が世話しているお嬢さまのカバンを奪われて、追いかけたのだが寄る年波には勝てず、そこに手を出してくれてありがとうございます。おっと、名を名乗っていませんでしたな。わたしめは、エーズデバランド侯爵家の執事長をしておりますゼバスジャンでございます」


 何だろう、この惜しい感じの名前の人は。


 


 どうやらこのゼバスジャンさんは、今日この通りで使えている侯爵家のお嬢さまと一緒に買い物に来ていたらしい。


 貴族のお嬢さまらしく、そんな人がこんな場所に来ていていいのかといいたくなったが・・・・・よくよく考えれば、エルゼもレリアも貴族でもあるのでそうおかしなことではないかとルースは思った。


・・・・・いや、そうおかしなことではないと思えるのもどうかと。そのツッコミも考え付いたが、あえて言わないのであった。





「なんにせよ、これでお嬢さまのカバンも戻ってきましたし、万事解決です」

「・・・・・あれ?そういえばゼバスジャンさん、そのお嬢さんとやらは?」

「え?あ、しまったぁぁぁぁぁぁぁあ!!その場に置いてきてしまいました!!ではここで、お礼をゆっくりといえないのは何ですが、お嬢さまにこのカバンを渡さねばならないのでわたしめはここで!!」


 ルースの言葉に、ゼバスジャンはどうやらそのお嬢さまとやらをどこかで待たせていたことを思い出したようである。


 急いで迎えに行こうと、彼がくるりと向きを変えた瞬間・・・・・




ぐぎっつ!!

「げぶふぁっつ!?」

「ぜ、ゼバスジャンさぁぁぁん!?」

「今明らかに腰をやった音がしたぞ!?」


 寄る年波というか、それを今まさに目の前で見せてもらった。



 ゼバスジャン、腰をひねった勢いでそのまま逝ってしまったようである。


 あまりの出来事に、思わずルースとスアーンは慌てて彼の身体を起こしに行くのであった。


くるっと回って、綺麗に腰がずれたゼバスジャン。

彼はその場に倒れ伏し、それでいながらなんとかお嬢さまのカバンが汚れないように守っていたようだ。

なんとかしようというその執事魂は、本物であった・・・・・・・

次回に続く!


‥‥‥間が悪いというか、疲れていた老体にトドメが刺されたというべきか。

ちなみに、ゼバスジャン、本当は「ジ」じゃなくて「ヂ」の予定だった。少々面白みというか、打つ手間で考えてこうなったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ