62話
愚かなものほど扱いやすいというけど、ほどよい賢さがある奴ほど扱いやすいような気がする。
‥‥‥グレイモ王国からはるか北方。
ここには、万年大雪の大地に包まれた白銀の国『ルンブル王国』があった。
人々は防寒具を纏い、赤色の魔導書を手にした者たちは熱源として重宝され、青色の魔導書を持った者たちはできるだけ雪が脅威にならないように、国全体を滑りやすい氷の膜で覆い、積もっていくのを防いでいた。
また、魔族の中でも毛皮を持つ獣人族や羽毛を持つ鳥人族などはそのモフモフふわふわな暖かさを活かし、己を使っての商売を行っても板。
そんな国では、真冬の時期は最も厳しい時になる。
その為、その真冬の時期の備えての最終的な会議が行われていた。
「‥‥‥そうか、やはりもうその手段しかないのか」
「ええ、すでに国の財源は限界であり、いい加減どうにかしないとだめです」
太陽光をせめて集めて暖かくしようと真っ黒に装飾された城の会議室にて、臣下たちと共に会議をしていたこの国の国王、ウィードルン=ルンブルは厳しい顔をして、蓄えられた長いひげをさわった。
今まではこの国はいくら寒かろうとも、魔法やマジックアイテムなどによって寒さをたえしのぎ、むしろそれを活かしての商売などを行い、国は栄えてきてた。
だがここ数年、歳出が歳入を大きく上回り、赤字続きとなって苦しくなってきたのである。
「やはり、こうなれば資源を求めて他国へ戦争を仕掛けるのが良いのではないだろうか?」
「待て待て、今のこの状況で行おうにも、兵士たちに当てるだけの食糧が足りぬぞ!!」
「しかも今から真冬の時期、重要なこの時期に開戦しようものならば、死の冬として飢餓による死者が大勢出てしまうぞ!!」
「だが!!ここで言いあっているだけではどうにもならないだろうが!!」
言い争う会議室の臣下たちを見て、国王ウィードルンは溜息を吐いた。
この苦しい国政を覆すには、戦争を起こし、他国から資源を強奪すべきだという「開戦派」。
ここはこらえて、他国へ頭を下げてでも援助を求める「穏健派」。
そして、どっちつかずの「中立派」と見事に分かれていることが、国王の目にも見て取れた。
国王の立場としては、出来れば穏便に済ませたいので「穏健派」の方にはいるのだが、いかんせん、この国では王族の立場が弱い。
会議室の長として出席しており、王国の名の通り、確かに国王が治める国。
だがしかし、この国では王族はそれだけの、ただの飾りのようなものでしかないのだ。
原因としては、20年ほど前に王族がやらかした事件があるのだが…‥‥まぁ、それは置いておくとしよう。
今はこの派閥争いがあるだけではなく、王位争いも激化しているというのも、国王の悩みの種であった。
この国には王子が3人おり、誰か一人でもせめて愚者というか、天を突き抜けるような馬鹿であれば、まだ飾りに過ぎない王族の者としては良かったのかもしれない。
だがしかし、喜ばしいというべきか、それとも厄介すぎるというべきか…‥‥その王子たちは誰もが能力が高く、魔導書を所持し、その優位性を譲り合わないのである。
しかも、この派閥争いのそれぞれのトップとしても君臨し、今やカオスじみた状況で収拾が付かないのであった。
そして、この日も誰もが有効的な対策をとれぬまま、会議は平行線で終わり、国王はその終わりなき争いと、自身の明確な言葉を発せなかった事に情けなさを覚え、王妃や側妃たちに慰めてもらうために後宮へ向かうのであった…‥‥
その日の夜中、それぞれの派閥のトップたちである王子たちはそれぞれの拠点にて、派閥の者たちと話していた。
…‥‥その中でも、開戦派である第2王子のゲンドール=ルンブルは怒り心頭な様子であった。
「くそったれがぁ!!いい加減他国との開戦にしやがれやぁぁぁあぁぁ!!」
雷を落とし、魔法でさらに憂さ晴らしで電撃を落として黄色の魔導書の力を見せつけ、派閥の者たちを抑えるゲンドール。
力こそすべてであり、完全な実力主義を信条にしている彼にとっては、あの終わりが見えない会議は腹正しいことこの上なかったようである。
とはいえ、力で押さえつけてもすぐさま反乱がおきることなどはきちんと理解しており、適度に与えるほうが良いともわかってはいた。
「しかし、このままではなかなか終わりが見えませぬ。ここは手近な‥‥‥そうですな、最も兵力が弱そうなところを狙い、開戦し、その成果を見せつけたほうが良いのだと思われます」
「いや、そんな兵力が弱いなどいう国を攻めてもたいしたことにはならない。それはただ、弱い者をいじめるしかできない弱者の塊だと言っているようなものだろうが!!」
弱い者を攻めるのは確かに楽だが、それではあまりいい結果は見込めない。
やるとすれば、強すぎもせず、かと言って弱すぎもしない適度な国が一番良いのだ。
「‥‥‥でしたら、グレイモ王国などはいかがでしょうか?」
「うん?」
ふと出された意見に気が付き、王子が目をやると、そこにはいつのまにか何色か言い現わせないような色のフードを深くかぶった人物がいた。
「何者だお前は?」
明らかに見たことが無い輩であり、警戒心をあらわに魔導書を顕現させ、構えをとるゲンドール。
「いやはや、怪しい者ではございありやせん。ただ単に、この国の開戦派の方々が困っていると聞きつけ、駆けつけた武器商人でございやす」
両手を上げ、抵抗の意思が無いと示すようにするフードの人物に、王子は耳を傾けることにした。
物凄く怪しすぎるのだが、それでも聞くだけの価値があるかもしれないと思ったからである。
「…‥ふむ、ならばなぜグレイモ王国だと?」
グレイモ王国の事は王子も知っていた。
確かに、兵力を考えてみれば強すぎることもなく、かと言って弱すぎもない条件に当てはまる国である。
だがしかし、あの国では間諜が優れているのか、潜り込ませた者たちが帰ってこないことも多く、また帝国とも友好関係を持っているために、万が一にでも参戦されてしまえば危ない国でもあったのである。
「あの国をお勧めする理由?そりゃもちろん、私どもにとってあの国が攻め入られ、混乱に貶められれば都合がよく、また、あなた方に武器を売りつけられるために都合がいい。あなた方にとっては、適度な国を攻められ、手柄を立てられれば発言権も強まり、そして資源も手に入れられる。互いにとって不利益がない国だからですよねぇ」
にやりと、フードをかぶっていながらも笑みを浮かべているのが分かり、その不気味さに思わず後ずさりする王子。
だがしかし、負ける可能性もあるとはいえ、この提案は中々魅力的でもあった。
「…‥ならば、その武器とやらも見せてみろ。我々だけで行動を起こしても充分大丈夫な奴があれば、その案に乗ってやろうではないか!!」
「ほうほう、商談成立しそうですなぁ。では、その武器の数々をお見せしやす‥‥‥」
この時、王子は知らなかった。
この商人のような者が他の派閥の王子たちの前に現れ、内容は違えど似たような利益を与えることを提案していたことを。
そして、その色を見て彼らは気が付くべきであった。
その彼らが来ていた服の色は、ある組織の衣服でもあり、自分たちの争いを利用しようと企んでいたことにも‥‥‥
‥‥‥武器を見せてもらい、気に入った王子はそれを購入することを決意。
商談は成立し、その場で引き渡される。
「確かに、これがあれば我々だけで事を進められるだろう。‥‥‥しかし、出来ればもっと欲しいな」
「いえいえ、今はこれだけしか生産できないのが現状でやす。何しろこれを一体創るだけでも相当な負担が‥‥‥だけど、戦争をうまいこと起こし、そしてあなた方が利益を得て、継続的な購入を契約してくだされば、こちらも喜んで増産させていただきやす」
「よかろう!!その商談乗った!!」
話に乗り、満面の笑みを浮かべ自信満々になる王子。
だがしかし、彼は一つ重要な事を忘れていた。
何事も、取り扱いというものには注意が必要であったという事を‥‥‥‥‥
さてと、どう考えても実験台というべきか、利用されているというか。
相手の利益にもこちらの利益にもなり、うまいこと誘導しているような気がする。
果たして、この先どうなることやら‥‥‥
次回に続く!!
―――――ッテ、私ノ出番マダデスカ!?
―――――黙レ新参者。話シ方ガ被ルカラ、次回出演予定ノオ前ノ羽化後ノ口調ヲ、調整中ダカラダ!!




