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45話

ちょっとだけ、嵐の前の日常っぽい感じ

「レリアさーんも参加しーたいと?」

「はい、己の鍛錬のために、どうか加えてください!」


 放課後、バルション学園長との訓練の場にて、レリアは学園長に頼み込んでいた。


 己をより強くするために、魔導書(グリモワール)に関してもよりよく扱えるためにも、このバルション学園長から直々に教えを受けたほうが良いだろうと思えたからである。


 実際には鬼畜と言いたいレベルの、どう考えても訓練というよりは地獄の拷問というべきものなのだが‥‥‥その話を言っても、彼女は引き下がらなかった。



「…‥‥なーるほど。帝国の王女様だーからって、手加減はしーないけどいーいかい?」

「はい!」


 バルション学園長は珍しくまじめな顔で確認を取り、レリアはそう返事した。


「でーは、いいかーな。そーれではルース君、エルゼさん、君たーちに新たーな仲間が加わったかーら拍手で迎え入れたーまえ」

「それじゃ、これからよろしくレリア」

「ふふふふ、一応この訓練では平等に、なおかつ厳しくいくけれども耐えきれるかしら?」


 ルースがやや好意的に話すのがイラついたのか、どす黒いオーラを漏らすエルゼ。


 そのオーラに、ルースとレリアは気が付かないふりをしたのであった。


「でーは、さっそく今日の訓練だーよ。内容としては…‥‥せっかく帝国の王女が加わーったから、この際帝国に関した方法でやーるよ」

「「「帝国に関した方法?」」」


 モーガス帝国の事に関した方法って、一体なんだろうか?


 そうルースたちが疑問に思うと、その答えは直ぐに学園長が言った。


「帝国は他国に比べーて、ガンガ-ン戦争を行って-いた国。つまり、攻めも守りもやってーいるから‥‥‥題して、『叩いて被ってボンッ!!』な訓練だー!」

「ボンって何!?」


 明らかにやばそうな予感に、ルースは思わずツッコミを入れた。


 そこは普通「じゃんけん」や「ぽん」という言葉が出そうなのに、それを抜かしたうえで不吉な擬音があるのだ。


 それはつまり、意図して絶対言っていることであろう。


「内容は簡単だーよ」


―――――――――

『叩いて被ってボンッ!!』のルール


1:互いに魔法を出し合う。ただし、出す魔法は単体を攻撃できる魔法のみで、津波を出すような魔法や、辺りを焼き払うなど広範囲にわたる魔法の使用は禁止。

2:出せる範囲は上下左右の4方向のみ。

3:その限られた範囲の中で、それぞれ上下左や、下右左など、3つ分しか出せない。

4:相殺しあえばいいのだが、加減を間違えて突き抜けてくるのであれば、それを防御しなければならない。

5:相手を殺してはいけない。ある程度の怪我(指が一本吹っ飛ぶ程度まで)しか威力を出せない。

6:勝敗は降参するか、ビビッて負けを認めるか出ないとつかない。


―――――――――


「とまぁ、こーんな簡単なルールだ!」

「明らかに5がその程度で済むと言い難いのですが!?」

「なるほど‥‥‥つまり、合法的に相手を脅せるようなものなのね」

「ふむ、帝国での剣の訓練では、たまに馬鹿が粋がっていたりするので、躾るために腕をふっ飛ばしたこともあるが、それに比べるとまだ生ぬるいな。ただまぁ‥‥‥なーんか嫌な予感がするし、これで十分なのかもしれない」



 バルション学園長の説明に対して、三者三葉の思いが飛び出たのであった。


‥‥‥というかレリア、さらっとなにか物騒な事を言っていませんかね?エルゼは平常運転だとしてもだ。



「そーれじゃぁ、本来は1対1でやーるのだーが…‥‥まーずは3人同時にやってーみろ!!」


 三角形の角に立つように並び合い、まるで三すくみのような状態にルースたちはその位置に置かれた。



「それじゃやるけど‥‥‥って待てよ?これって一人が二人に同時に攻撃しなければいけないのか?」

「そのとーり!!相手一人に対して一度に3つーの魔法、つまーり二人に当てーるならば合計6つで、指定されーた方向へ行くもーのを出すには、よ-り精密なコントロールがい-るのだ!」


 どうやらコントロールというか、精密性を高めるための訓練になるようである。


 そういうところは、一応考えられているのだろう。


「ちなーみに、指定方向以外へやったーら…‥‥今なら『光の鞭しばき』プレゼ-ント」

「それ生徒虐待になりませんか!?」

「明らかにいけないやつよね!?」

「‥‥‥ああそうだ、その通り確かにやられちゃまずいだろう!!」


‥‥‥あれ?今一瞬レリアの反応が遅れたような。


 ふとルースはそう思ったが、今はそのしばきが来ないように魔法のコントロールを正確にするために、集中するのであった。



「それじゃ…‥撃てぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 バルション学園長が合図を出すと同時に、ルースたちは魔法を発動させた。


「『マッドアイスアロー』!!

「『水鉄砲』!」

「『ファイヤーボール』!!」


 ルースは土と氷を複合させた魔法の矢を、エルゼは水魔法、レリアは炎の魔法をそれぞれ打ち出した。



‥‥‥ルースが土と氷の魔法を複合させたのには理由がある。


 この二種類、土であれば火を消し、氷部分でも溶けて水となれば消火可能なはず。


 また、水魔法に対しても泥水にして動きを遅く出来るし、氷の部分で凍らせて固めることもできる。


 エルゼとレリアの二人が放った魔法に対してはちょうどいい相手となるだろう。


 そう考え、その魔法をルースは放ったわけだが‥‥‥‥効果は抜群であった。


 考えていた通りに、エルゼの魔法は泥で動きが鈍って凍りつき、レリアの魔法はすべて消火できた。


 そして、二人の方は…‥‥



「くっ、ルース君の魔法だけ通してしまったわね!!」

「これは手ごわいというか、相性最悪だな!」


 ルースの魔法を防げず、見事に素通りさせてその防御に追われていた。


 

「ふーむ、この場合ルース君が一枚上手だったーようね。ならば、次はルース君、君の複合魔法で今の2つを使わないでちょーだいね」


 その様子を見て、バルション学園長はそう告げた。


「ええ?」

「だってーさ、それじゃ訓練になーらないよ。相性はあーるけど、君の場合複合できーきるから、どこかで慢心がみーえるのさ」

「慢心か‥‥‥」


 バルション学園長の指摘の通りである。


 どことなく、自身で何か慢心があったかのようにルースは思えた。


「ついでーにエルゼさんは水魔法をより一点集中さーせるように、レリアさんは火の魔法に回転をかけーたほうがいいよ」


 指摘もいれていくバルション学園長。


 それぞれの改善点などをこの訓練で見て、きちんとうまくなるようにアドバイスをしてくれるようである。


 こういうまともなところがあるから、意外という言葉をよく実感させられるような気分にルースたちはなるのであった。


「そーだ、最後の方で私もまーざるね!」

「なんか確実に大変になりそうなんだけど!?」

「光の魔法で絶対力技でぶち通してきますよね!?」

「なるほど、これがこの学園のやり方か‥‥‥勉強になるな」


 学園長のその言葉にルースとエルゼはツッコミをいれ、どこか感心したかのようにレリアはそうつぶやくのであった。



‥‥‥ちなみにこの後、問答無用のごり押しで攻めてきた光線に対して、ルースたちはなすすべもなくふっ飛ばされたのであった。


「し、死にそう…‥‥」

「綺麗にやられたわね‥‥‥」

「こ、これが学園長の実力…‥‥まだまだ私は甘いというわけか」





ポジティブっぽいレリアだけど・・・・・・なーんかそうじゃない気がするんだよなぁ。

そもそも、ルースの周囲にまともな人がいたためしがあるだろうか?

言っていたら少々悲しくなったような気もするが‥‥‥

次回に続く!!

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