閑話 異界のスアーン苦労記録 Final
SIDEスアーン
‥‥‥砂漠の小国グラントでのアンデッド騒動から、スアーンは何とか逃げおおせた。
小国でありながらも、あの尋常ではないアンデッドの量を考えると、後々の対応などはどうなるのか気になる処ではあるが…‥‥
「それよりも‥‥‥生憎乍ら、犯罪奴隷の購入には失敗しました」
「‥‥‥そうか」
神聖国ゲルマニア、そこにある神殿内部にてスアーンは報告をしていた。
目の前に入る預言者という人物…‥‥本日の義体とやらは、今までの物に比べると人間味が増している姿をしており、その表情はやや落胆している感じで有ろう。
「はぁ、せっかく救いようはないほどのダメダメ人間の魂とか味わえるかと思っていたのに‥‥‥何でアンデッド騒動が起きるのやら」
「それを言われても‥‥‥」
不可抗力というか、運が悪かったというべきしかない。
お使いに行かされた身ではあるが、こういう事態が起きるとは流石に予想しておらず、対応できなかったのだ。
「まぁ、何にしてもお咎めは無いよ。今回の件は流石にどうしようもないし、むしろ‥‥‥その騒動を起こした奴らの方を狙いたくなったからね」
「‥‥‥」
ニヤァっと預言者が浮かべる黒い笑みに、スアーンは思わず後ずさりをする。
自分を攫ったりしてきた相手とは言え、ここで過ごしていると預言者はそう悪い人物‥‥‥いや、人では無さそうな相手だが、心的には悪くない人であろう。
だがしかし、寒気がするような笑みとかは本気でやめて欲しい。
元の世界のエルゼがスアーンをこき使おうとするときの笑み以上の悪寒がするというか、畏怖を覚えさせられるのだ。
「とはいえ、一応この件で得られたであろう分で、君を元の世界に還せたのだが…‥‥」
「うっ」
その言葉に、スアーンは思わず言葉が詰まるような声を上げた。
攫われ、働かされ、ようやくか得れそうなところで、この騒動によって延期されたのだと考えると悔しさもある。
攫ってきた張本人でもある預言者へ色々と苦情を言いたいが、かなう相手でもなさそうなのを分かっているので言えない憤りは有るのだ。
「‥‥‥とまぁ、本当ならもうちょっといてもらうつもりだったんだけどね」
っと、ここでふと預言者からの空気の重みが変わった。
「何かあるのでしょうか?」
「うん、君の不在中にちょっと予定外というか、贈り物が届いてね、そのおかげで実はもう帰還可能な状態だったりするんだよね」
「‥‥‥はい?」
説明によれば、この預言者には各所とのつながりがあるが、その中でとあるところからある贈り物が届いたらしい。
その内容を考えたくはないが、その贈り物によって何とスアーンを帰還させられるだけのエネルギーが貯まったというのだ。
「そ、それはつまり、俺ーっちは待っているだけで」
「うん、今回実は行かなくてもちょっと待てば大丈夫だったんだよね」
「マジかーーーー!?」
砂漠の小国へ向かう道中で盗賊やモンヌターなどの襲撃を受けたり、小国内でアンデッドの大群に襲われたりしたが、ここにいるだけでよかったかもしれないという話に、スアーンは思わず驚愕の声を上げる。
「つまり、無駄骨だったんだよね」
「うううっ!!」
がっくりと膝を落とし、うなだれるスアーン。
散々苦労させられたオチが、こうもひどいと嘆きたくもなった。
「まぁ、それでもう帰還できるけど…‥‥どうする?もう帰る?」
「そ、それはもちろん!!」
そう問いかけられ、慌ててスアーンは答えた。
元の世界に帰還できるのであれば、早く帰りたい。
正直言ってこの世界でも彼女は持てなかったし、元の世界へ帰っても独身の可能性は有れども、そっちの方がまだ良いのだ。
極悪非道幼馴染やスアーンよりも恵まれ過ぎている友人がいる世界の方がまだ安心ができる。
「それじゃ、帰還準備のための義体交換などで30分ほどかかるからちょっと待っていてね」
そう言って、預言者は退出し、スアーンはその部屋で待たされることになった。
「ああ、ようやく帰れるのか…‥‥」
思い返せば、元の世界では裏世界からの帰還早々に、触手によってここへ攫われた。
時間の流れなどを考えるとどの程度違うのかは不明だが、それでもやはり元の世界へ帰りたい。
帰れる希望がやってきたことに、心からの感動の涙を流していた…‥‥その時であった。
『-----‥‥‥あー、あー、マイクテス、マイクテス』
「ん?」
ふと、スアーンはある声が聞こえたような気がした。
頭の中に響くというか、その声の主に物凄く聞き覚えがあるというか。
だがしかし、この世界にいるはずの無い者でもあり、空耳かと首をかしげたが…‥‥続けて聞こえてくる。
『一応これで良いのかはわからないけど‥‥‥一方通行ゆえに確認はとれない。だけど、この声が友であるスアーンに届いている事を願う』
「‥‥‥ルース!?」
その声を聞き取り、スアーンは理解した。
この声は、元の世界の彼の友人でもあるルースの声。
どうやって届けているのかは不明だが、久しぶりに聞く友人声にスアーンは驚愕する。
だが、その驚愕はすぐに上回る物へ代えられた。
『スアーン、お前の留年期限が迫っているぞ。あと‥‥‥えっと、今の時間からして2日後?ぐらいまでに学園へ戻って姿を見せないと、留年決定だそうだ』
「なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
‥‥‥どうやら内容によれば、スアーンが攫われてから元の世界でもそれなりに時間が経っており、スアーンの欠席期間が長くなり、もう間もなく留年の危機を迎えているらしい。
成績もそこまでいいわけもなく、何とか卒業できそうであったのだが…‥‥ここにきて、どうも欠席の長さゆえに取り返しのつかないところへ行きそうなのだ。
『だからこそ、早く帰ってきてほしいとは思う。同じ村出身だし、卒業するなら全員そろっての方が良いからな』
「帰れるならもっと早く帰りたいんだが!?」
とはいえ、一方的な連絡らしく、その叫びに答える様子はない。
そうしているうちに声が途絶え、何も聞こえなくなった。
「りゅ、留年は嫌だぁぁぁぁ!!」
もう間もなく帰れるとは言え、この話を聞くと一分一秒でも元の世界への一刻も早い帰還を、スアーンはものすごく切望するのであった‥‥‥
ようやく帰還できるタイミングでの知らせ。
つまり、帰って休む間もなく学園へ向かわねばいけない危機だという事。
果たしてスアーンは、間に合うのか!?
閑話も終わって、本編へ続く!!
‥‥‥スアーンが学園まで駆け抜けるBGMは結構いいのがありそうだと思ってしまった。案外そういう系統の音楽って多いなぁ。小説ゆえに流せないのが残念である。




