閑話 異界のスアーン苦労記録 その5
「のぉぉぉぉぉん!!なんでこうなっているんだぁぁぁぁl!!」
「知るか!!それよりも足を動かして逃げろ!!」
【同族とは言え敵対されているんやけどぉぉぉぉ!!】
‥‥‥砂漠の小国グラント。その国の街中で、スアーンたちは全速力で逃走していた。
彼らを追っているのは…‥‥アンデッドのモンスターでありつつ、全身包帯まみれの「マミー」。
ただしその数は1や2ではなく、数百体もの群れである。
しかもその上…‥‥
【ミッギャァァァァ!!】
【ブジュウルルルルル!!】
【ゼッバアアアアアア!!】
「なんか色々噴き出ているんだけど!」
【包帯の隙間から見えてはいけないものが多いやん!!】
「防腐処理半端だ!」
本来であれば、このマミーというモンスターたちはそこまで腐敗しておらず、悪臭などもアンデッド系統にしては少ない。
だがしかし、今スアーンたちを追ってきているのは全て腐敗している部分が所々露出しており、まき散らしているのだ。
「どうしてこうなった!どうしてこうなった!!」
スアーンはそう叫びながらも、この状況に陥る前の事を思い出していた‥‥‥
――――――――――――――
‥‥‥数時間前、スアーンは砂漠で襲撃を受けた後、助けてもらったゼリアスという青年と、デュラハンの女騎士ララと共に、この砂漠の小国グラントへ到着していた。
それぞれのこの国での目的は、スアーンは腐った思考などの奴隷の買い取りというお使い、ゼリアスは知り合いの買戻し、ララはこの国のオアシスでの有給休暇と違えども、この国へ訪れるとは同じであった。
そして、ララとは一旦別れ、ゼリアスと共に奴隷市場の方へ向かい、更に別れたはずであったが…‥‥
「大変だぁぁぁ!!アンデッド化した奴隷が出たぞぉぉぉ!!」
「どこのどいつだやらかしたのは!!」
市場を巡っている最中で、突如上がる叫び声。
どうやらこの奴隷市場の中で、奴隷を殺害し、アンデッド化させてしまったものがいたらしい。
この世界では死体がアンデッドになるリスクもあるので火葬する方法を取るのだが、どうもそのやらかしたところは扱いが杜撰だったらしく、同も一斉にアンデッドとなってしまったらしい。
しかも最悪というか、こういう奴隷市場の中には違法すぎるものも混じっており、多種多様な薬品なども使用した者もいたようで、それらも巻き込んで大規模な変異を起こし、さらなる混沌を招いてしまったらしい。
流石にこの状況下で買取などはできないと思い、なんとか逃れようとした矢先、スアーンはゼリアスと股再会した。
どうも彼の方は既に知り合いを買い戻し、馬車を利用して送ったらしく、用事が済んだことだしとりあえず観光もと考えて残っていたそうだ。
取りあえずアンデッドが迫って来たので、二人で逃げようとしているところでさらにララとも再会。
彼女の方では、オアシスの方にもどうやらやらかしてアンデッドが大量発生し、こちらはこちらで逃亡していたらしい。
【というかうちの場合同じアンデッド系なんやけど、デュラハンだろうと関係なく襲って来たんやけど!件で応戦しても蘇って来て意味ないんやけど!】
「文句を言っている場合か!!」
――――――――――――――――――――
‥‥‥そして現在、三人そろって逃走中となった。
市場でのやらかしや混沌などが入り混じったせいか、最初はゾンビ程度だったアンデッド系は、マミー、グール、スケルトン、キョンシー、その他砂漠のこの気候で乾燥した者から腐敗が進んだ者など多種多様となり、アンデッドパニック状態であった。
「くそう!こういう時に俺ーっちの魔法は土だから役に立ちにくい!」
【うちは物理攻撃主体なんやけどこういう蘇り系にはいま一つなんや!】
「効果的なのは火や聖、光なんだが、この混乱の中でやれば巻き添えも多くなるだろうし、使えるけど数が多すぎる!!」
何にしても、この騒動から逃げ出すほかないと三人そろって駆け抜けるが、アンデッドたちも案外足が速い。
「というかララさんは襲われないんじゃ!?デュラハンもアンデッド系統だよな!?」
【そのはずなんやけど、なんか襲ってくるんや!!仲間と思われていないか、あるいはどこかの馬鹿が操っている可能性もありうるんやけど!】
「考えられるとすれば、あの中に理性のあるリッチなどがいる可能性があるが‥‥‥‥確認しようにも数が多いから無理だな!」
数の暴力というのはこういう事であろうか。
ひとまずはそれぞれ脚力には自信があるようで、現状追いつかれてはいない。
「とはいえ、体力そろそろ限界なんだが!」
「あー、人間の体力ならそりゃこの辺でダメか」
スアーンの言葉に対して、そうつぶやくゼリアス。
言われてみれば、全速力での逃走なはずなのに、スアーンは汗だくなのにゼリアスは汗ひとつもかいていない。
この言い方からすると、彼は人間ではないかもしれないが、そんな事よりも今は後ろからきているアンデッドたちが問題である。
【ああもう!しつこいんやけど!!】
「とりあえず、何処かで何とかしない事には意味がないし‥‥‥あ、そうだ!」
ぽんっと手を打ち、ゼリアスが何かを閃く。
「なぁスアーンとやら。お前土魔法が使えるって言ったよな?ある程度時間稼ぎできるような土壁とか作れないか?」
「ああ!?一応作れるとは思うが、そう長くは持たないと思うぞ?」
「それでいい。ほんのわずかでも立ち止まって構えられるならばどうこうする手段はあるからな」
【ならばうちも何とか時間稼ぎしようか?】
その手段がどの様なものかは分からないが、今はそれに賭けたほうがいい。
そう思い、スアーンは茶色の魔導書を顕現させ、魔法を発動させる。
「とりあえず即席のでかいやつ!『ビッグアースウォール』!!」
発動と同時に、大きな土壁が形成され、アンデッドたちを留める。
だが、勢いもあるせいかどかどかとぶつかる音がし、ひびがすぐに入ってくる。
「だめだ!!やっぱりそこまで言い足止めにはならねぇ!!」
【だったらこれでどうや!!】
そう言うと、ララが跳躍し、土壁を越える高さに飛びあがる。
【『斬撃乱舞』!】
そのまま腰に刺していた剣を構え、空中で滅茶苦茶に振りかぶると、何やら剣の軌跡が形となり、土壁の向こうへ…‥‥
ドドドドドドドドドド!!
「なんかすげぇ!?」
飛ぶ斬撃のようで、見えないが土壁の向こうで当たりまくっているらしい。
だが、それでもアンデッドたちの勢いは衰えず、稼げたのは数十秒程度。
「でも、それで十分だ」
そのつぶやきが聞こえ、スアーンはその声の方を向いた。
その声の主はゼリアスであり、彼の手には何やら大量の小さな光が集まり、大きな剣を作っていた。
「構築に時間かかるし、苦手な物でもあり、一回ぐらいが限度だが‥‥‥‥アンデッドにはコイツで十分だ」
土壁が崩壊し、アンデッドたちが迫りくる。
だが、ゼリアスは剣を構え、真っ直ぐその大群へ目を向ける。
「再現率もいまいちだし、持っているだけで手も痛いがこれでも喰らえ!!」
そう言うが早いが、剣が急速に輝き出し、大きな光を吹き出し始める。
「『偽物の聖剣』!!」
その光ごと剣が振り下ろされ、一気に膨大な光がアンデッドたちへ向かう。
光そのものに質量があるのか、地面が砕け、蒸発していく。
‥‥‥そして数十秒後、光が収まると同時に、その場にいたアンデッドたちも消滅していた。
チリ一つ残さず、地面も滅茶苦茶に砕けており、その衝撃のすさまじさがうかがえる。
バキィン!!
「っと、やっぱり一回ぐらいしかないか」
砕ける音がしたかと思えば、ゼリアスの持っていた剣が砕け、風化した。
威力の大きさにスアーンは唖然とする中、ふと気が付けばララがゼリアスの方を見ていた。
その目はここまでの道中で見せていたような明るいものではない。
【‥‥‥なんやねん、今の剣。いや、魔法か?】
「まぁ、魔法の類と言えば類だ。かつてこの世界に存在した剣を再現するだけのものだが…‥‥何か問題でも?」
【おおありや!!アンデッド系に効果は抜群すぎるんや!!ちょっとみてみいこれ!!】
ララはそう叫ぶと、着ている鎧から手の部分を外し、その皮膚を見せた。
【ちょっとかすったんやけど!!危うくうちが消滅しかけたやんけぇぇぇぇぇ!!】
見れば、その皮膚が物凄く透けており、ゴーストかと言いたくなるレベルになっていた。
‥‥‥どうやら先ほどの攻撃時に、ララは当たらないようにしていたようだが、威力が大きかったのか少々かすったらしい。
鎧の方は普通に存在するもので問題は無かったが、どうも鎧を貫通して中身の方に影響が出たらしい。
【使うなら使うで、もうちょっと危険性とか言えやぁぁぁぁ!!】
「あー…‥‥すまん」
アンデッドたちを消滅させたのは良いが、巻き添えに消滅させられかけたことが彼女にとって嫌だったらしい。
ひとまずは怒りを収め、一同は休憩を取った。
「って、まだ小国内にあふれていたと思うけど…‥‥放置できないよねこれ?」
「今は逃げるに越したことがないだろう。救いに行くような真似をするにはリスクが大きいからな」
【騎士道をたしなむうちとしては、救援に向かいたいんやけど…‥‥いかんせん、相性最悪やからなぁ】
‥‥‥ひとまずは、一旦それぞれ帰ったほうが良さそうである。
ララの方は騎士王国の方へ連絡し、装備を整え救援活動へ。
スアーンは神聖国へ戻り、こちらはこちらで指示の待機。
ゼリアスの方は、先ほどの大技はそう連発できる物でもないし…‥‥
「個人的にはここがどうなろうと関わりたくは無いな。知り合いを買い戻したはいいが、ちょっと奴隷市場の状態が酷いし、一度滅んでもらうべきだと思う」
【うわぁ、過激な発言やなぁ…‥‥救いに向かう気はないんか?】
「無い。まぁ人間でもない立場からすれば、どうでもいいからな」
(…‥‥じゃあなんだと聞きたいが、聞けないな)
空気を読んで質問を抑え、少々心残りになりそうだが一旦彼らは小国グラントから離れ、それぞれの帰る場所へ戻ることにした。
まだまだ居そうなアンデッドたちを考えつつも、自分にできることはないだろうとスアーンは思うのであった…‥‥
なんとか逃走し終え、戻るスアーン。
だが、元の世界ではもう間もなく留年の危機が迫っている。
果たして、彼は無事に元の世界へ帰還できるのか?
次回に続く!!
‥‥‥ララ、危く消滅しかけた模様。デュラハンもアンデッドの類だし、消滅してこれはこれで良いのかもしれないが‥‥‥うーん、彼女の元々の作品的にはまだいて欲しいんだよね。
ゼリアスに関してはまぁどこかの人と同じような感じかもしれない。(人に甘いはずだけど、奴隷市場とかで気分が悪くなっているようだしね。まぁ、アルファポリスにて掲載している作品の人ゆえに、小説家になろうには出てないが…‥‥こちらにも載せるべきか?)




