22話
あ、スアーンの情報を前回の設定に入れ忘れた。
‥‥‥まぁ、次回の設定まとめに回します。
なぜか、作者の作品で主人公の友人の設定が後回しになりやすいんですよね。
‥‥‥都市を突如として襲った謎の液体事件から、1週間が経過した。
この事件の背後にあるとされるのは、反魔導書組織『フェイカー』というものらしいが、まだ詳しくはわかっていない。
20年ほど前に起きた事件をきっかけに消滅した組織なので、まだ完全に復活したなどという情報がないからである。
ただ、事件の犯人が使用していたマジックアイテムはその組織が使っていた物と類似しており、背後に組織の残党か、もしくはただの残ったマジックアイテムなのかという可能性があるそうだ。
何にせよ、危険なマジックアイテムを持って犯罪を企む人がいる可能性というのは消えていないし、万が一にでも、その組織が復活して、この事件を早期段階で解決したルースたちを邪魔者と判断して消しに来る可能性がないわけではない。
その為、その万が一にも備えてという大義名分を持たされて‥‥‥‥
「さてー!!次は鬼ごっこでの脚力増加訓練だよ―!!鬼は魔法で作った『触れられるととりあえず物凄く痛い塊』だーい!!」
「説明が雑過ぎない!?」
「というか、もうその言い方の時点でろくなものではないわね‥‥‥」
ルースとエルゼは毎日の放課後、バルション学園長からの訓練を受けさせられることになった。
しかも、召喚魔法の授業以来から受けていたものから3,4割ほど増した厳しい奴を。
‥‥‥組織とか何とか言う前に、先に学園長によって息の根を止められそうなんですけど。
「さてさーて!!魔法でも知恵でも協力でも何でーもいいから、とーにかく1時間は逃げきってー!!」
「いやこれ無理なんですがぁぁぁ!!」
「ひやぁぁぁぁ!!」
ズドドドドドドド!!っと追いかけてくる光の塊から逃げつつ、ルースとエルゼはそう叫ぶ。
「待てよ、何でも良いのなら…‥‥『召喚タキ』!!」
何でもいいと言っているのであれば、召喚魔法でタキを呼び寄せるのもありなはずだ。
あの液体事件から呼びだすのを忘れていたのだが、久し振りに呼びだしてモフモフを堪能しつつ、逃亡の手段に使えるだろう。
そう考え、ルースは召喚魔法を使った…‥‥が。
ポンッ!
‥‥‥出てきたのは、あの大きな九尾の狐のようなモンスターの彼女ではなく、たった一枚の紙きれであった。
「・・・・あれ?」
逃げながら、ルースはなんとかその紙切れを拾ってみると、なにか書かれていた。
――――
召喚主殿へ
我はもうそろそろ引っ越しの予定があるので、今日は召喚拒否をさせてもらうのじゃ。
――――
「‥‥‥召喚拒否!?」
まさかの召喚拒否であった。
そして、本日の召喚魔法に関しての授業であった内容をルースは思い出した。
召喚魔法でモンスターを呼びだすことはできる。
だがしかし、その呼びだされるモンスターは何処かで生活をしているものが多く、場合によってはモンスター側の方の都合が悪いと、召喚を拒否されて呼べないときがあるそうなのだ。
それがまさに、今このタイミングでルースは実体験をする羽目になった。
「あの女狐が引っ越し…‥‥得な予感はしないわね」
横で、一緒に逃げながらその手紙を読んだエルゼが、なにやらものすごく不機嫌な顔でそうつぶやく。
タキがどこに住んでいるのかと言われれば、おそらく彼女がかつて滅ぼした国があったらしい東方の地であろうが、そこから引っ越すとなると…‥‥どこなのだろうか?
モンスターにはモンスターなりの生活があるだろうけど、ちょっとルースは気になった。
ジュワッツ!!
「あっつぅぅぅぅ!?」
「ほらほーら、ルース君。後ろをきちんと気にしないとだーめですよ」
「考え事をし始めた時ぐらい緩めてくださいよ!!」
考え事をしていたら、鬼役の光の塊がルースに触れてきて、熱い風呂の中に入ったかのような感覚をルースは感じ取った。
火傷はしないようだが、どうやら熱による痛みを主軸にした魔法らしい。
鬼ごっこでの訓練中だとルースは思い出して気を引き締め、何とかタキ抜きでの対抗策を考え出す。
「光魔法で作られた塊のようなものだし…‥‥日光を虫眼鏡で集中させたものに近いのなら‥‥‥」
光を反射するなら鏡が一般的そうだが、あのバルション学園長の事なのでそう簡単には通用しない物の可能性の方が高い。
というか、鏡だとしてもそれなら水魔法で似たようなものを創り出せるのでエルゼが先に作っていそう物なのだが、彼女の方を見ると、どうやら同じように学園長の魔法だから一筋縄ではいかない可能性を考慮しているようだ。
「ならば、これだ!!『シャドーアースウォール』!!」
闇魔法と土魔法を複合した魔法で、壁をルースは創り出した。
土を盛り上げてそれを軸として、その周囲を闇の魔法で覆うことによって光を通さないようにした真っ黒な壁である。
学園長が創り上げた光の魔法だが、おそらくは実体のあるような熱源に近い光。
わかりやすい物で例えるのであれば、燃え盛るボールと言ったところであろうか。要は火の玉である。
実体があるのならば、物理的な防壁を築き上げることによって防ぐことが可能だろうし、闇魔法で光を通さないことによって実体がなくてもある程度の防御手段となるだろう。
黄金の魔導書で扱える複合魔法を活かして、すばやく判断したルースはその土と闇の二つを複合し、壁に出来る魔法を選択した。
その効果は‥‥‥‥
ドッツ!!‥‥‥バキィッツ!!
「威力高いな!?」
まったく効果なし。
どうやら問答無用、力ずくで突破されてしまったようであった。
まだまだバルション学園長との間には、天と地ほどの実力の差があるようで、この程度の魔法では抑えきることは不可能だったようである。
「エルゼは何かいい案無いか?」
逃げながら、ルースは同じく逃げているエルゼに尋ねた。
「えっと、えっと‥‥‥そうだ!!魔法で逃亡速度を上げればいいのよ!!『サーフィングムーブ』!!」
どうやら防ぐ選択肢よりも、逃げ切る選択肢を彼女は選んだらしい。
魔法を唱えて、すばやく彼女の足元に水があふれだして、まるで大きな波のようになって、いつの間にか形成されていた水の板に乗って、そのまま波に乗ってエルゼは逃げた。
‥‥‥陸上に波を起こし、その波に乗って移動する魔法らしい。
陸上サーフィンとも言うべき魔法で、確かに普通に走って移動するよりもかなり速いようである。
「こっちだと複合魔法で‥‥‥『ボムサーフィング』!!」
エルゼの逃げ方を見て、ルースも類似した魔法を発動させる。
ただし、こちらは水と火の複合魔法。
水のサーフィンボードのような物を創り出すのは先ほどのエルゼと同じだが、進むための原理は全くの別物。
後方で爆発を起こし、その爆風に乗って進む魔法で、その速度はエルゼよりも速い‥‥‥はずであった。
だがしかし、身体能力の差というか、やり方が荒っぽかったのがいけなかったのだろうか。
ドッカァァァァン!!
「‥‥‥あっ!?」
背後の爆風に吹き飛ばされたのは良かったのだが、バランスが取れずそのままボードから足が離れ、そのままルースは宙を舞う。
空中で人体が何をしようが、すぐに体の自由が利くはずもなく、そして、下の方で待ち受けるバルション学園長の作り上げた光の塊を見て、ルースは走馬燈を垣間見た気がした。
ジュワァァァァァァァァァァ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「る、ルース君ーーーーーーーー!!」
「あーりゃりゃ、まだまだ鍛錬が足りないなー」
ルースのその悲鳴は、学園中に響き渡り、補習などで学園内に残っていた生徒たちは、その悲鳴から察して、冥福を祈ったのであった。
学園長に目を付けられたのはルースで、生贄のように自分たちから目をそらせる役目を持たせた彼に、一応の罪悪感はあったからである‥‥‥
ルースが悲鳴を上げていたその頃、タキは引っ越しの準備に取り掛かっていた。
【ぬぅ?今、召喚主に何やら悲劇が起きたようじゃが…‥‥ま、生きておるようじゃな】
何となくルースの悲劇を感じつつも、先日のような危険自体は起きていないであろうとタキは思った。
「‥‥‥お、だいぶ片付いたな」
と、ふと彼女が気が付くと、友人でもあり、先日の事件に関しての情報を求めて話を聞きに行ったエルモアがそこにいた。
【おや?お主がわざわざ来るとは珍しいのぅ】
「ま、ここから引っ越す準備が整った頃だと思ってきたんだよね」
タキの言葉に、エルモアはそう言った。
【ふむ、この地から我が引っ越すからそのお別れにでも来たのかのぅ?】
そうタキは言ったが、内心エルモアがわざわざ出向いてくるようなことでもないと思っていた。
エルモアは本来群れで暮らす種族の魔族らしいのだが、彼女は変わり者のようで、鳥の羽があるけど基本的に一匹狼というか、他人とそこまで積極的に関わることはしない。
知恵を貸してくれたりもするのだが、人が引っ越す程度でわざわざお別れの挨拶に来るほどの気持ちはないはずである。‥‥‥一応、また会える可能性があるからということで、お別れの挨拶をする意味もないという考えを持っていると以前、話で聞いたが。
「いや、そうじゃないな。ある目的があって来たんだよな」
【その目的とは何じゃ?我が引っ越すから、この住処を譲ってほしいとかかのぅ?】
タキの住みかであったこの地は、そこそこ居心地はいい方である。
エルモアは現在洞窟暮らしだが、この地の方が食料なども考えると条件が良いはずだ。
「いやいやいや、別にそうはしないよ。私は魔族だし、お前さんとは違って職業に就けるように、一応それなりの資格やら何やらを得ているから、いざとなれば人里に住みかを移せるからな」
【初耳じゃな‥‥‥】
この世界は、人間以外は基本的に、モンスターか、魔族とされている
モンスターと魔族の違いは色々あるそうだが、タキは人の姿になれるとは言え、モンスターの枠組みの中にあり、魔族とは異なる存在で、基本的に自然の中で生活をする。
一方、エルモアのような魔族の場合、自然の中に生きる者もいるのだが、中には社会に出て、魔族ならではの特徴を生かした仕事に就くものがいたりする。
なので、一応エルモアが職業に就く可能性を考えればゼロではないのだが、群れる種族なのに単独行動を好むエルモアが働くと考えると、どうしてもそのイメージがタキには湧かなかったのである。
【ならばなんじゃ?】
「単刀直入に言うならば‥‥‥そうだね、お前さんの引っ越し先に私も引っ越そうと考えているかな。で、移動が面倒だからお前さんの背に乗せてもらおうかとお願いしに来たんだよ」
【‥‥‥はぁ!?】
まさかのエルモアの言葉に、タキは驚いた。
【いや、お主、その背中の漆黒の翼は飾りか!?いざとなればかなりの長距離を素早く移動できるであろう!】
「体力を消費したくないからかな。…‥‥というか、ツッコミを入れるのはそこなのかな?」
引っ越し先についてくるところにツッコミを入れられなかったのかが不満なのか、エルモアはそう答えたのであった‥‥‥
「ぬ!?」
「どうしたエルゼ?」
「いや、今何かものすごく邪魔者の嫌な気配がしたような…‥‥」
‥‥‥エルゼのストーカー専用乙女の直感は、何かを捉えたようである。
だがしかし、それが何なのかは、この時は誰も知る由は無かったのであった。
主人公、やはりチートや無双があるよりも、それなりの苦労がある方は良いような気がする。
ただし、その苦労にも限度はあるけどね。
成長前に、三途の川を渡りかねないっているのは…‥‥今度から匙加減をもう少し考えよう。
次回に続く!!
‥‥‥番外編みたいな感じで、タキとエルモアの引っ越し珍道中を考えていたりする。
九尾の狐のようなモンスターと、その背に乗って移動する黒い翼を背に持つ魔族。いっそのこと、スピンオフも計画してみようかな?




