221話
…‥‥どうしよう、シリアスな雰囲気があったはずなのに、自身のシリアスの才能の無さに涙が出てきた。
いやまぁ、シリアスは早めに切り上げるとか言っているけれども、これはひどい。
まぁ、それはそれで別方向に生かせればいいんだけどね…‥‥
人々の動きが繰り返され、不自然に思われない現状。
その歪みとやらがそれを引き起こしているのであれば、かなり不味い事態ではなかろうか。
「RPGのNPCでもあるまいし、シャレにならない事態になるのは不味いんだけど‥‥‥‥タキ、現在の状況は?」
【周辺をぐるぐる回っているようじゃの】
【ピギャァァァアス!!】
‥‥‥‥どうやら既に、ルースたちも影響を受け始めていたようだ。
先ほどから歩いても歩いても街並みが変わらないのだが、どうやら自分たちの方が同じ道を延々と歩き続けているようだ。
マロが猛ダッシュで駆け抜けてみたが‥‥‥気が付けば後ろにいた。
どうしよう、この状況。
「タキたちを送還して、一旦外に出てもらって迎えに来てもらうと言うのもあったけれども…‥‥下手すると俺が全く何もできない状況になるかもしれないな」
【召喚魔法が正しく作用しなくなる可能性もあるのじゃし、状況が好転するとも思えぬのぅ】
【ピギャァ】
一旦歩みを止め、その場に立ってルースたちは話し合う。
このまま行動しても、変わりなさそうだし…‥‥どうしたものか。
【永遠に同じところを歩み続けるのは嫌じゃなぁ。歪みの強い気配を辿ってまっすぐ行ければいいのじゃが、それもかなわぬし……】
「こんな状況で、真っ直ぐ進めるなんて光ぐらいしか‥‥‥‥待てよ?」
【ピギャス?】
ふと、ルースは己の出したある言葉に気が付いた。
この歪みの影響下ではどうなるのかはわからないが‥‥‥‥それでも、試す価値はあるかもしれない。
「目と言うのは光を受けて見ているようなものだし…‥‥周囲がきちんと見えているという事は、光そのものは影響を受けていないってことかな?」
【ん?何かも思いついたのかのぅ?】
「ああ、一応な」
スナイパーライフルなどで照準を定めるためにレーザーポインターというものがある。
人の目に当てると失明の危険性が高いのだが、あれならば真っ直ぐに光が飛んで対象を定める。
ならば、そのレーザーポインターのような物を魔法で作り出して‥‥‥‥歪みとやらへ向けてやれば、辿ってまっすぐ行けるのではなかろうか。
「『魔導書顕現』」
金色に輝く魔導書を顕現させ、用意をする。
「タキ、歪みっぽいような気配の方角ってわかるか?」
【ぬ?分かるのじゃ。えっと‥‥‥‥こっちかのぅ】
タキが指さした方角へルースは照準を合わせ、魔法を発動させる。
光を放つ物を固定させ、その方向へ道を指し示す魔法‥‥‥‥大体光と、木、あとちょっと土の複合ぐらいで良いだろうか?
「レンズ的なものとして水も複合させるか。となると、光、木、土、水の4属性複合魔法…‥‥『リードライト』」
その瞬間、地面が盛り上がり、筒状の物体が生え、ある方角へ向かって光線を放った。
薄く延ばされ、まるで光の道のような物が出来上がり、真っ直ぐ指し示す。
「よし、これに沿って行けば多分大丈夫なはずだ」
【なるほど、これならば行けるかものぅ!】
【ピギャァァ!】
作り上げた光の道を見て、タキは納得の声を上げ、マロは興味津々と言わんばかりに光の道をつつく。
とにもかくにも、これで惑わされるとかそういう事もなくなり、真っ直ぐ歪みとやらの場所へルースたちは進み始めるのであった…‥‥
…‥‥ちょうどその頃、バハーム王国の王城にて、ルースたち同様にこの繰り返す異変に気がついている者がいた。
「なんやのんこれ…‥‥さっき済ませた仕事やのに、これで30回目‥‥‥‥ぐるぐる同じものが、まっさらな状態で返ってくるんや?」
バハーム王国の国王、アーズ=バルモ=バハーム。
まだ年若き国王であるが、王位について数年が経過しており、ある程度落ち着いていた。
だがしかし、ここにきて突如起きたこの異変に不安を覚えたのである。
「陛下‥‥‥こちらなんて既に100回は同じ書類の処理を…‥‥ぐふぅ」
「モンプ!!まだ倒れられたら困るんやがな!!」
アーズ同様に、この異変に気が付いている宰相モンプが、ぐったりとその場に倒れたのを見て、慌てて気絶しないようにビンタをしまくるアーズ。
ここで仲間が倒れられたら困ると言うのもあるのだが‥‥‥‥正直な話し、国王である自身の手伝いをしてくれる人物がぶっ倒れられるとより一層この繰り返す仕事がきつくなってしまうという思いもあった。
とにもかくにも、このままではらちが明かない。
「しょうがない…‥‥モンプ!!一旦王城から出て外へ逃げるんや!!もしかすると我々と同じようなものがいるかもしれへんで!」
「し、しかし陛下!!それでは仕事を繰り返していた苦労が!!」
「終わらぬ仕事で過労死しかけるのと、自由を求め、仲間を探す方のどっちが大切なんや!!ここで倒れたら民たちも同じような目に遭っていた場合、国王として何もできないのは‥‥‥‥ひどく嫌なんや!!」
「へ、陛下、そこまで考えてくださっているとは‥‥‥‥分かりました、このモンプも共に行きましょう!!」
結束のために、硬く拳を握り合わせ、動き出す宰相と国王。
次々と仕事を運んでくる文官たちをその場に残し、彼らは逃げ出し、外へ逃れる。
これが吉となるか、それとも凶となるかはわからない…‥‥はずだった。
「さぁ!!あそこを進めば城外へ……」
バァンッ!!
「そげぶぅっ!?」
「陛下ぁぁぁぁぁぁ!?」
……どうやら凶だったらしい。
何処からか飛んできた、やけに平たく延ばされた光線のような物が直撃し、宙を舞う国王アーズ。
その姿を見て宰相モンプは悲鳴を上げるのだったが、国王の後ろにいたために、わずか数秒後に同じ運命をたどり、同様にふっ飛ばされたのであった…‥‥‥
アーズ国王とモンプ宰相が吹っ飛んだ。
光線なのに負飛んだのは‥‥‥まぁ、質量があったというべきなのだろうか?
とにもかくにも、歪みの原因って…‥‥もしかして王城内なのか?
次回に続く!!
…‥‥似非関西弁国王。若き国王だけど、この歳から苦労していると将来が心配である。
一応、良い国王って設定しているはずなんだけどね。
他の王子や王女が生きていて、そっちに王位継承権があれば、押しつけて逃げられた人でもあったんだけどな…‥‥




