219話
今回はいつもと少々異なるメンバーでお送りいたします。
休日となり、予定通りルースはバハーム王国という国を目指し、タキの背に乗って進んでいた。
魔導書が話して歪みがあるとかいうことに関して、色々と無理のない説明をして頼んだのだが、タキは快く了承してくれた。
というか、「歪み」という言葉自体、タキぐらいのモンスターになると聞くこともあるらしい。
それは災害が起きる前兆になったりなどするそうで、速めに潰しに行く方が良いということで、協力してくれたのである。
【久しぶりの全速力じゃあぁぁぁぁ!!】
嬉しそうな声を上げながら、タキは大きな狐の姿の状態で疾走していく。
普段はエルモア先生の家に居候し、たまに戦闘時に召喚するときぐらいにしか運動していないようなものなので、目的地まで駆け抜けることはいい気分転換になるのだろう。
「うわぁ、速いな。見る見るうちに景色が切り替わっていくし……それにすごいモフモフだな」
ふわっと背中の毛を撫でながら、ルースはそうつぶやく。
駆け抜けている分、背中にはすごい風が吹いているのだが、この程度であれば特に問題はない。
しっかりとしがみついていれば飛ばされる心配もないし、モフモフした背中にしがみつくのは気持ちいいからである。
「にしても、ヴィーラが召喚に応じなかったけど何かったのか?」
ふと、この場にいない召喚できるモンスターでもあるヴィーラの姿がないことに、ルースは尋ねた。
【ん?ああ、あやつならのぅ、少々用事があったのじゃ】
「用事?」
【本当は一生に主殿と向かおうと思っていたようじゃが…‥‥虫歯になりおったのじゃ】
「あー、なるほどね…‥‥」
その理由を聞き、ルースはものすごく納得した。
魔法があるこの世界において、一応治療魔法という物が存在する。
だが、そんな魔法でも治せない、本当に資格を所有しなければ治療できないものがあって……それが虫歯という病であった。
モンスターがいるこの世界、実は虫歯もモンスターの一種らしい。
普段の歯磨きできちんと対処可能であり、虫歯になる人自体はほぼ0に近いそうだ。
しかし、それでも運が悪いというか、虫歯の中でも最強クラスのものが宿主の歯に寄生し、激痛を与えるようで…‥‥
「虫歯になっちゃったのか」
【なっちゃったのじゃよ。普段歯磨きはキチンとしておったのじゃが、油断した隙にな…‥‥】
運が悪ければ、防ぎようがない恐怖の虫歯となっており、それにヴィーラは感染してしまい、現在治療中なのだとか。
【モンスターといっても、人型になれば治療へ向かえるのじゃがなぁ…‥‥あれは痛いからのぅ】
「そんなことが言えるってことは、タキもなった事があるのか?」
【100年ちょっと前になったのぅ。あれは死ぬかと思った‥‥‥‥】
国滅ぼしのモンスターですら恐れる病、それが虫歯。
もしかすると、それこそがフェイカ―よりも真っ先に倒さねばならない敵ではなかろうかとルースは思うのであった。
‥‥‥‥なお、いつもなら一緒のエルゼやレリアたちがいないのは、彼女達はこの休日の間に色々と用事があるらしい。
と言うのも、フェイカーを滅亡させてから式を挙げるのでまだ先になるのだが、その前に色々と各貴族家と整理することがあるそうなのだ。
エルゼはミストラル公爵家の3女ゆえに公爵家とのつながりを求める人たちと話し合い、レリアに至ってはモーガス帝国の第2王女でもあるのだから帝国に出向いているそうだ。
休日中で済むのかと問いかけて見れば、召喚魔法で火竜やシーサーペントを呼び出せるから、そいつらを移動手段として使うそうである。
うん、相手の家の方が大変そうなのが目に見えている。そんなものの背に乗って飛来して来たら、それこそ騒ぎになりそう…‥‥‥自重しなくなってきたような気もするな。
【ピギャァァ?】
クッション代わりということで、一緒に連れてきたコカトリスのマロが首を傾げて鳴く。
自身の親兼主であるルースがどこか遠い目をしたので、心配になったのであった。
とにもかくにも、タキの疾走がかなり速かったと言うのもあって、無事にバハーム王国の国境が見えてくるところまで来た。
ここまで来ると、勢いで突っ込むのは危険なので一旦速度を落とし、徒歩で移動することになる。
「しかし、暑いな‥‥‥」
【うむ、ギラギラと太陽が照り付けるのぅ】
日差しの強さにルースがつぶやくと、タキも同意した。
グレイモ王国ではまだ季節は春のはずなのだが、このバハーム王国は年中暑いらしく、夏日のような蒸し暑さである。
【ピギャァ……】
疾走している時は風を感じていたが、いざ止まって見ればかなりの蒸し暑さに、団子のように丸くホワホワだったマロが、潰れたメロンパンのごとく平べったくなっていた。
そういえば全身が羽毛で包まれているからね‥‥‥尻尾の蛇の部分が珍しくビンっと伸びて気持ちよさそうにしているな。あ、蛇って変温動物だからか?
「って、タキは大丈夫か?」
【この程度なら大丈夫じゃよ。服も念には念を入れて、風通しがいいものにしておるのじゃ!】
人の姿をとって、堂々とタキは胸を張って答えた。
着ているのはいつもの和服のような物ではなく、日差しを避けるために麦わら帽子をかぶり、薄いワンピースを着ていた。
色は白で、風通しが良さそうにしつつも、あまり露出の少ないものにしたようだ。
一応、尻尾が出ているので、そこは熱くないのかと聞いてみたが‥‥‥よく見れば、超細かく動いていた。
動かしまくって、放熱でもしているのだろうか。
何にせよ、今回はタキとマロだけの一人と2匹(変化して人カウント?)で、バハーム王国へルースたちは入国したのであった…‥‥。
…‥‥そしてその頃、グレイモ王国のとある病院では。
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!
【ぎゃアぁぁぁァぁぁぁァぁぁァぁァぁァぁ!!】
頭にうさ耳を生やした女性が、思いっきり泣き叫んでいたそうであった。
「うわぁ‥‥‥痛そうでアルな」
「次はそっちだがな」
そのあまりにもいたそうな悲鳴に、実は虫歯になってしまった鬼神と、付き添いで来ていた翼人は目をつむって待つしかなかったそうであった。
日帰り予定だが、バハーム王国についたルースたち。
さっさとその歪みの原因なども調べて、治して帰りたい。
だがしかし、そうは簡単に事が進むわけではないのであった。
次回に続く!!
…‥‥今回はタキとマロがお供である。エルゼ達がいないとはいえ、これでもまともに動ける……はずだったんだけどなぁ。
一つ、大きなミスを犯しているのだが、言わないほうが面白そうであろう。いやまぁ、次回に発覚するんだけどね。ヒントはタキの容姿…‥‥見慣れているとはいえね。




